2-4.『三者』面談
今度は何だ!?
増援?伏兵?このタイミングで?大男の味方か!?
「ん?バルバドスか?邪魔をするな、此奴等はオレ様の得も──」
「【いやね?アロケスさんの食事を盗ったのって……ボクなんっすワ~!】」
………………は?
「なんだと?」
「【いや~、辺りを探索してお腹空いちゃっテ】」
「……おい」
「【アロケスさんは腹減ったとか言って手伝ってくれないシ】」
「貴様が……」
「【ボクだって腹減ってるっつーノ。で、良い所に、良い具合に焼けた肉があったら──】」
「貴様が俺の飯を──」
「【そりゃ食べちゃいますよネ?】」
「貴様が犯人かーーー!!」
ちょっと待って。
じゃあ、俺達はこいつ等の下らないメシ争いに巻き込まれたのか?
「王の為に臣下が働くのは当然だ!それを……あまつ事か王の食事を盗むなど──」
「【いやいや、そもそもボク等は同格っすヨ?勝手に格下にしないでくれませン?】」
「黙れ!!今どこに居る!?お前が食った肉の代わりに……俺様がお前を食ってやる!!」
アロケスと呼ばれた大男から怒りに呼応し、膨大な魔力が立ち上る。
ぐっ!?なんて熱風だ!コイツ……怒りで力が上がって行くタイプか!?
「【そんな事言われて、ハイここです!なんて教える馬鹿は居ないと思うんすよネ~】」
「そこを動くな!見つけ次第、食事を開始する!!」
ゴゥ!……そんな音を纏わせて大男──アケロスと呼ばれた男が走り去った。
…………え、何これ。
アイツは仲間を食うのか?
って言うか……もう帰って良い?
「【いや~すんません。ウチの王気取りバカが迷惑を掛けましテ!】」
俺達に向けて、先程の声が語り掛けて来る。相変わらず姿は見えないが、何となく声がした様な気がする方へ目を向ければ──。
そこには木に留まっていた一羽の小鳥。……鳥?
「【お?中々良い勘してますね~。って言ってもボクはこの子の身体を借りてるだけなんで捕まえるのとかは勘弁してあげて下さいネ?】」
「別に良い。それよりお前達は何なんだ」
そのまま小鳥に話し掛けて良いものかは分からないが、現状それしか方法はないよな?
「【ボクとさっきのアケロスっておっさんは此処に人探しに来てるんス】」
「……人?」
「【ここら辺に、綺麗な女の人って来ませんでしタ?】」
「…………女の、人?」
嫌な予感。
「【えェ!髪は星が流れる夜空を彷彿させ、その瞳は見る者全てを虜にする極上の宝石!声を掛けられればどんな願いでも叶えてあげたくなる程の心に響く魅惑の調べ!そんな高貴で最綺な女性がこの森に来ませんでしたカ!?】」
何かキャラが崩れ出してないか?
ともかく……バルバドスと呼ばれた鳥が並べる容姿の特徴に1人……心当たりはある。
だけど厄介事の匂いがプンプンする!?……から惚けよう。
本当にこんな時、『偽りの感情』の力が偉大だと感じます。
「俺は見てないな。二人は?」
「……しら……ない」
「私も、森の中でもヘルバでも見てませんね」
しれっと答え、水を向けられたシロにリリーナも回答を口にした。
この2人は本当に知らないのだから俺たちの答えに真実味が増す。事実……この辺りの子供に話し掛けたとしか思っていないバルバドスからは消沈した空気が窺える。
「【そうですカ……】」
「森の中を探すより、この近くの村を探した方が見つかり易いんじゃないのか?」
「【ンー。ちょっと特殊な人なので……村とかではないと思うんですよネ……】」
綺麗な女性で、特殊。村には居ない。
通常の神経の持ち主なら、どんな危険があるかも分からない森の中より、人が集まる所を求めるだろう。それをしないって事は目的があるって事だ。……その目的は大体分かってるけど。……そう、思い当たる人物が、1人。
「【ありがとうございまス!もう少し探してみますので、もし会ったらバルバドスが探してたとお伝え下さイ!でハ!!】」
最後にそう残し、バルバドスと名乗った鳥(男?)は去って行った。
何か……ドッと疲れが押し寄せて来た。
考えなければいけない事はあるが、先ずは飯食って、風呂入って、頭をスッキリさせてからこの二人……引いてはユグさんやエルさんにも事情を説明しなければならないだろう。後に成ればなるほど面倒な事になりそうだし。
「……俺達も帰ろうか」
「そ、そうですね!」
「……はら……へり」
とりあえず分からない事は後回しにして、帰ろう。
ドッと押し寄せる疲労を引き摺る様に、俺たちは帰路に着いた。
◆◆◆◆◆◆
……筈、だったんだけど。
何が……どうして……どんな事が起きてこうなった。
此処は俺達の家だ。それは間違いない。
しかし、普段見せている風景とは明らかに違う……違い過ぎる。
俺の正面に座ってるのは手酌で酒を飲む幼女。
《神霊》ユグドラシル。酒を飲むペースが速い。
ユグさんの隣で静かに微笑みながら茶を飲む夫人。
【最恐】エルシエル=フリソス。笑みの後ろに黒いオーラが幻視出来る。
そして……
俺の隣で、細い煙管で薄紫の煙を吐く麗人。
《魔王》アスミィ=オルタンシア。またの名を五百神亜澄。
人の家な筈なのに、自分の家かの様な振る舞いは、此処が自分の弟(?)の家だと分かっているからか?
って言うか何この状況!?
何で自分の家で、こんな空気の中に俺が居るのかがさっぱり分からん!?
俺は目線で、後ろのソファで身を隠しながら此方の様子を伺っている三人娘、シロ・ティア・リリーナに助けを求める。
(むり)(出来るわけないでしょ?)(ごめんなさい!?)
俺の助けを、三人は首を横に振って無情にも切り捨てた。
俺だってそっち側だと思うんだけど何で此処に座らされてんだよ!?……待て、一度心を落ち着けて状況を整理しなければ!そもそも何でこんな事になったんだっけ。
先ず、俺達はアロケスとバルバドスって二人組の騒動に巻き込まれて帰って来た。
本来、暗闇に紛れてる筈の我が家に灯りが燈り、出迎えてくれたのがエルさんとティア。エルさん曰く、俺が何か隠し事をしてる空気があったから確かめに来たと。
察してくれたのは有難いが俺、自分の本心を隠す仮面を付けて話してたんだけど、……な。
で、途中俺達に追い付くはずだったけど先にこの家に到着してしまい、気配から俺達が戦闘をしている事がバレ、その話も聞く為に待っていた、との事だった。
『先ずはご飯にしましょうか~』
と、後に尋問される恐怖に怯えつつ、気を遣って準備してくれていた食事で腹を満たし、風呂に入り……さぁ、これから地獄が始まるぞと言った所でユグさんが訪ねて来た。
『妙な気配がしての。クロ坊から事情を聞こうと思ってやって来たと言う訳じゃ』
異国の服を身に纏う神霊はそう宣い、師匠と同じ理由を俺に問い詰めに来たと言う。
リリーナとシロを含め、事情を話した方が良いと思われる人達が一堂に会してる今なら、話す場面としては最良ではなかろうか。長くなりそうと思った師匠がお茶を淹れ、ユグさんが持参した酒を自分の杯に満たした所で……突拍子もなく家の扉がノックされたんだ。
既視感。
そして……あの出来事が起こった。
もう事件と呼んでも差支えのない、出会いが。
「あなた達はここを出たらダメよ~?」




