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異世界の英雄はもういない  作者: 天山竜


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15. 『仲間』に頼る

 

 黒い靄から吐き出された大量の『核』。

 多分……化ける。

 『核』は人で言うところの心臓……あれが魔物の活動源であり、絶対的な急所でもある。

 常時は魔物の体内に埋まっている筈のそれが……まさか単体で出て来るなんて思ってなかった。

 相手は……相当ヤバい。

 そう思った時には身体が行動を開始していた。

 帯袋から取り出した四角い箱上の物の蓋を開け、靄に向かい投げ付ける。


 「離れろ」

 「「え?」」


 勝手知ったる家族の想い━━シロは隣に居たリリーナを引っ張り、俺はティアを小脇に抱えて全力で後退。目の前が光で覆われ、俺が投げ付けた箱が起こしたのは……大爆発。



 ドオオオオオオオオオォォォン!



 凄まじい音と衝撃が辺りを支配した。

 ……あ、あれ?こ、こんな威力出す物だっけ?


 「ちちちちょっと!ななななんなのよアレ!」


 抱えられたまま、黒い靄が発生した時より動揺して、同じ事を言ってるティア。


 「火薬の量を間違えた……か?」


 俺の内心は、ティアと同じくらい動揺していた。


 「爆弾使うなら一言言いなさいよ!」


 身動ぎして俺から離れたティアからの説教……ホントすいません。

 『炸裂弾(エクスプロード・ボム)』と呼ばれる、主に坑道や発掘で使われる爆弾を俺が改良したのが先程の物なのだが……どうやら火薬の量を少し多めに盛ってしまったらしい。ば、爆発の規模から、かかかなりの威力を出した筈だけど、効果、あった?……あって欲しいな。

 靄から出て来た『核』は大体20前後の数があった筈。

 全部吹き飛んでいてくれればありがたい。

 ……が、流石にそれは虫が良すぎるか。


 「なんか……いる」

 「何、この気配……様子、おかしくない?」


 あぁ。伝わって来る気配が黒オーガのものと酷似している。

 森に異物が現れた際にユグさんから渡された力が、思いっ切り反応している。

 数が減ってるとは言え、気配は全部で……五つ。


 「来るぞ」


 爆発の煙の先をじっと見据える。

 あの黒オーガの様な巨体ではなさそうだが……何が出て来る?黒オーガみたいな奴が五体とか本気で勘弁してほしいけど。


 「【アタシの呼び声に応えろ精霊━━強く、速く、何者をも超える力を寄越せ】!」


 この詠唱、身体強化の魔法か。

 ティアは最初から全開で行くみたいだな。


 「【降雷王】!!」


 閃光と共にティアの体内から放電現象が起きた。

 この【降雷王】と言う魔法を使ったティアは身体に雷を宿し……恐ろしく速く、恐ろしく強い。

 【最恐】エルシエル=フリソスの娘の看板に偽りが全くない程、怖い。

 初見でこの魔法を使ったコイツに俺はボッコボコにされた苦い経験があるが、こうして共闘する味方の時は頼もしい事この上ない。出て来る相手にも寄るけど、男としてはティアを頼るのも心苦しいが此処は当てにさせて貰おう。


 「何が来るか分からない。ティア・シロで一匹ずつ、リリーナは状況を見て二人を援護してくれ。後の三匹は俺が相手をする」

 「何、アタシより自分の方が強いって言いたい訳」

 「……ふまん」


 声には出さないがリリーナも心配そうに俺を見て来る。

 違う、そうじゃねーよ。


 「男の負担が大きいのは当たり前だってじいちゃんも言っていただろ。余裕が出来たら手伝ってくれ」


 むしろそれを期待してるから!なるべく早目で宜しくね!?


 「……ふん、ソッコーで片付けて合流してやるわよ」

 「私も頑張ります!」


 何故か少し頬を赤らめたティアが頼もしく、何故か張り合う様に声を大にして言ったリリーナがいじらしく。


 「……くろが……しぬまえに……いく」


 何とも不吉な事を宣ったシロがマジでムカつく!

 俺達のやり取りを待っていたのではない事は分かっているがそのタイミングで煙が……晴れた。

 出て来たのは、『クロコダイル・ソルジャー』。あれもやはりこの近辺では見ない魔物だな。

 身の丈は人間より少し大きい、デカい奴でもニM。目の前に居る奴らも例外ではなく、それ位の身長なんだけど……。『魔物図鑑』で見たのとは、やはり色が違う。

 もっと青がくすんだ様な鱗で、あそこまでどす黒くはなかった筈だ。

 靄から『核』が飛び出し、こいつらが出て来たって事は……アレはこの『クロコダイル・ソルジャー』の物だったって事なのか?

 だとしたら、この「化物」を創り出すにはその種が身体の中に持つ『核』が必要だと言う事になる。

 それに気になる点がもう一つ──兵士(ソルジャー)と言うだけあって武器を装備しているのは知っているが、手にしているのは雑に作られた剣だけと書いてあった、が……。

 目の前の五体が持っているのはそれぞれ剣、双剣、大剣、槍、斧。体には硬質な体皮の上から鈍色の綺麗な鎧を纏ってる。明らかに装備が整い過ぎてないか?

 人から奪った?

 仮に人間を殺し、その装備を奪ったとしても……武器はまぁ分かるが、防具は無理じゃないか?

 あの体型に合う防具を装備してる奴なんてそうそう居ないだろうし、居たとしてもあんなにデザインが統一されてる物なのか?それに、綺麗すぎる。戦利品として強奪した物ならもっと、泥や血等で薄汚れて居るんじゃないのか?

 疑問が沸いては新たな疑問が降り積もりキリがない。

 くそ……情報が足りない。

 全て推測、憶測の域を出ない。

 だが此奴らの装備を整えるだけの財があり、高位の死霊術を操る者と考えると、候補はかなり絞られるんじゃないか?

 ……俺が知らない有名人なんて五万と居るだろうけどね!

 まずは目の前の危機から排除して行こう、情報の整理はそれからだ。


 「剣と槍の奴は任せた」


 後ろの三人に告げ、一つ『種』を口に放り入れ、駆ける。

 黒オーガはリリーナに標的を絞っていた。

 今回の此奴らは?

 俺を無視して横を通り過ぎ、彼女に迫るなら……


 もちろんそのまま叩っ切る!


 背中の『月詠』を引き抜き、目の前に迫った大剣を持った鰐面を全力で横薙ぐ。

 すると今回の奴は防衛本能が働くのか、それとも目的が違うのか、手に持った剣で俺の攻撃を防ぎ、周りの鰐面に向かって一吠え。


 「SYAAAA!」


 俺を敵として認め、戦端を切った。

 今回は標的に俺もしっかり入ってる。

 目の前で俺の剣を受けている奴の横から斧を持った鰐面が振り被り、俺の左側面から槍を構えた鰐面が狙いを引き絞り刺し貫こうとしてくる。


 が、左の鰐面は無視!

 任せたもんな!?

 視線を、大剣・斧、それにその少し後ろで今にも切り掛かって来そうな双剣を持った奴らに合わせ、口に放って置いた『力の種(パワー・シード)』を噛み砕く。


 「おぉぉぉ!」


 りゃああああ!


 鍔迫り合いをしていた大剣の鰐面もろとも、斧・双剣の鰐面を力任せに弾き飛ばし距離を取らせる。俺達の戦場は『砂場』の中程に決めた!

 ちらっと横を見やれば、先程引き絞られていた槍を、ティアが片手で軽々と止め━━


 「アンタの相手はアタシ」


 そんな頼もしい事を言って槍の鰐を蹴り飛ばす。

 もう一匹の剣を持った鰐面は、既にリリーナの魔法で吹き飛ばされ、シロがそれを追っていた。

 他の皆も俺と一緒にスタートを切っていたか……ホント、頼りになる仲間だな。


 「瀕死になるとパワーアップする可能性があるから気を付けろ」


 ティアにそう言い残すと、弾き飛ばした三匹の方へと距離を詰めた。




 俺に吹き飛ばされた『クロコダイル・ソルジャー』三匹がのそりと起き上がり、俺に敵意を向けて来る。

 『魔物図鑑』に寄れば此奴等の脅威度はオーガのそれより下回る。が、それは単体での話らしく、徒党を組んだ『クロコダイル・ソルジャー』の脅威度はオーガを上回り、理由としては連携にあるとの事。

 ティアとシロに一匹ずつ受け持ってもらったのは正解だと良いな。

 五匹で来られるよりは三匹の方が幾分かマシだろう。

 スピードに難がある今の俺でも対処出来るってことは、『速度の種』を使わなくても対処は難しくないだろう。後は、力で押し切る!

 致命傷で何らかの術が発動し力が増すならその前に片付ければ良い。前回は茫然と見送ってしまったが、変身が終わるまで待つ道理も、ましてや義理など何処にもない。


 「SYUUU」


 目の前の鰐達がそれぞれの得物を構えて俺との距離を測り、飛び掛かる機会を狙ってる。

 これは訓練じゃなく、実践だ。命が掛かってるんだ。

 なのに、何でこんなに落ち着いてるんだろう……まぁ答えは簡単か。

 確かに怖い。

 目の前の魔物、仮称「黒鰐」が放つ殺気もそうだし、黒オーガが向けてきた敵意も怖かった。

 身体が竦み、心が震える。

 ……だから……何だ。

 心が怖がっても身体を動かせ。身体が動けば心も動く。

 それが【最強】と【最恐】、二人から教わった事だ!

 じいちゃんが怒った時に比べたら。

 エルさんの凍てつく笑顔に比べたら。

 お前らなんて、怖いけど━━怖くない!!

 戦わなければリリーナも誰も守れないし、負けて村に逃げ帰った場合のエルさんが本気で恐ろしい。

 我が身可愛ければ戦って勝って生き残るしか道はないんだ。


 「行くぞ」


 言葉と呼吸を短く吐き出し、右に広がりつつある双剣を持つ黒鰐に斬り掛かる。


 「しっ!」

 「SYAAAA!」


 俺が放つ右からの斬り上げを、片方の手で持つ剣で受けてもう片方で迎撃するつもりか?

 それは……悪手!

 俺の斬撃を防ごうとした黒鰐の剣ごとその体躯を持ち上げ重心を崩し、自分の剣を引き戻して、その反動で左からの斬り下ろし!

 先ずは一匹!──と、勢い込んで剣を振り被る俺に、覆う様に人外の影が躍った。


 「ちっ」


 頭上から強襲を狙うのは大剣を振り上げるもう一匹の黒鰐。

 加えて俺の下で蠢くのは黒鰐のもう片方の剣。

 マジで連携ウゼーーー!

 上の大剣、下の剣。

 四面楚歌……だと思ったら大間違いだ!


 「【月詠】──【双月(ソウゲツ)】」


 両手で握っていた『月詠』を二本の刃に換える。

 『月輪』が遠距離なら、この『双月』は超近距離の攻撃手段。いや、その真価を発揮するのは防御だ。「カタナ」とじいちゃんが呼んでいた形状の武器よりも更に短く、俺のは刀身が厚い。

 ただ防御する事も出来るがこの局面、利用させて貰う!


 「ふっ!」


 上下から迫る二本の凶刃を、『双月』と身体の回転をもって往なしその勢いを殺さず、重力に導かれて下りて来た大剣の黒鰐の防具が覆えない顔に連斬を浴びせ掛けた。


 「GYAAA!?」


 甲高い奇声を上げて落ちる黒鰐の背を蹴り双剣の黒鰐にぶつけて、反動で……此方に向かって来ている斧を構えた黒鰐の元へと跳んだ。

 忘れてないから安心しろ!

 順手で持っていた二本の『双月』を逆手に持ち替え、攻撃!


 「せぁぁぁ!」


 腰を捻って回転も入れた都合……六連撃。

 起点は黒鰐が構える武器を持っている右側。

 勢いの付いた俺の斬り付けは全てを防げるものじゃない。

 一撃目で無防備な右目を潰し、二撃目を防がれるものの三・四・五・六撃目で鎧の繋ぎ目に滑り込ませ傷を付け、両肘・両膝を斬り動きを制限させた。


 「SYUUUUUUUUUUUUUUU?!」


 苦しそうに呻く黒鰐を尻目に着地。

 確かな手応え。致命傷にはならないまでも動きは止めた。このまま一気に……!

 『双月』の柄を強く握り直し止めと勢い込んで振り返った俺の視界を━━埋め尽くしていたのは黒鰐の尻尾!?


 「くっ」


 そ?!

 『種』で底上げされた力で慌てて両手の刀を交差させ、当たる寸前で後ろに跳び勢いを逃がすが、吹き飛ばされた!?


 「ぐぅ!」


 空中で後方に一回転し、勢いを殺してもまだ飛ばされてる!こんにゃろ!!

 二本の刃を地面に突き立て、ようやくその場に留まれた。

 いやいや……あの黒鰐の尻尾なんて、飾りで付いてるんじゃないの?って位短かったろ!個体差があった?いや、それも最初に確認した。急に伸びたのか?思考もそこそこに俺を吹き飛ばしてくれた斧の黒鰐を見やる……って。



 黒鰐の身体に、真紅の紋様が浮かび上がって身体に、鎧に纏わりつきその様相を変えて行く。



 ……は?

 瀕死でも、致命傷でもなかった筈だ!

 何で変化が始まってるんだ!?

 それに……それだけじゃない……変化してるのは……一体だけじゃない?!

 


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