チョコレートは心を落ち着かせて私達の距離を縮めてくれる魔法のお菓子
今日も可愛い制服を着て、
メイクも完璧。
そして笑顔も完璧。
それでも私には足りないものがあった。
それが何かを私は知っている。
どんなに着飾っても私は彼の目にはうつらない。
そう私には勇気が足りなかった。
彼に見てほしくて毎日、完璧にしてもそれは彼じゃない人の目に、私はうつる。
今日もまた、変な人に絡まれる。
いつものことのように無視をする。
今日の変な人は諦めなかった。
「何で無視すんの?」
私は無視をして歩く。
「自分が可愛いと思うなよ」
そして変な人は私の腕を掴む。
痛い!
「離せよ」
そう誰かが言って私の腕から変な人の手を払った。
「何なんだよ」
そう変な人は言って逃げるように消えて行った。
「ありがとうございます」
私はお礼を言って助けてくれた人の顔を見る。
そこには彼がいた。
「君は何でいつもそんな完璧にしてるわけ?」
「えっ」
「そんな濃い化粧して、スカート短くしてあんなやつが寄ってくるの分からないわけ?」
「えっ」
私、彼に嫌われてる?
彼に見てもらえるようにしてたのに。
逆効果だったの?
「えっ!」
彼は私を見て驚いている。
何?
「ごめん。言い過ぎた。泣くほど怖かったんだよな?」
泣く?
私は視界が涙のせいで歪んでいることに気付く。
嘘。
彼の前で泣いてる?
迷惑かけちゃう。
すると彼は私を抱き締める。
「こうすれば泣いてるの見えないから」
「でも、化粧があなたの制服についちゃう」
「そんなことはいい。俺は君の泣いている顔を誰にも見せたくないんだ」
「えっ?」
「君の泣き顔は他の男が寄ってくる」
「えっ?」
「もうこれ以上、ライバルを増やしたくないんだ」
「えっ?」
「ごめんね。怖くて泣いているのにこんな話をして」
「怖いから泣いてるんじゃないよ」
「じゃあ何で?」
「あなたに嫌われたから」
「俺、嫌いって言った?」
「言ってないけど私の化粧のこととか……」
「それは君があまりにも男を引き寄せるような化粧をしてるから……いや、違うな。自分にイライラして君にあんなことを言ってしまったんだ」
「どうしてイライラしてたの?」
「君はいつも男に声を掛けられてた。俺にはできないことをあいつらは普通にしてた。そんな自分が情けなくてイライラしてたんだ」
私は彼の言葉を聞いてバッグからピンク色のハートの形をした物を出す。
「はい、これ」
「何これ?」
「私の好きなチョコレートなの」
「チョコレート?」
「私は何か上手くいかないときはこの可愛いハートのチョコレートを食べるの。心が落ち着くから」
「何で俺に?」
「あなたも心を落ち着かせてみたらイライラなんてなくなるよ。」
「ありがとう。いただきます」
「美味しい?」
「甘い」
「甘いの苦手なの?」
「得意ではないけど君が好きなら俺も好きになるよ」
「どうして?」
「君が好きだから」
「えっ」
私が好き?
聞き間違いだよね?
「あれ? 聞こえなかったかな?」
「あっ、いや、その」
「君もチョコレート食べたら? 落ち着くよ」
「うん」
そして私もチョコレートを食べる。
甘くて美味しい。
「落ち着いたみたいだね。可愛い顔してる」
「かっ可愛い?」
「本当にチョコレートが好きなんだね」
「はい」
「返事を聞かせてくれる?」
「私はずっとあなたの為に完璧にして家を出てたんだよ。やっと気付いてくれた」
私は勇気がなくて言えなかった言葉を彼にそっと言った。
彼は驚いていたけど嬉しいと言って私を抱き締めた。
読んで頂きありがとうございます。
チョコレートを食べるとみんな笑顔になりますよね。
そんな魔法のお菓子で甘くてキュンキュンする話を書いてみました。
私は今、キュンキュンする話を連載中です。
乙女ゲームには当てはまらない~私には誰も選べないから~ こちらも読んでみて下さい。