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魔女の棲む家  作者: 狸奴
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少年と魔女 1

以前投稿した、風守りの魔女という作品の続編?的なものになっています。

オフェリアの町から東側の沿岸に浮かぶ小さな島、その島は不思議な形をしており、まるで歪な一本足のテーブルのような形をしている。


その島には、テーブルに置かれたドールハウスの様な少し古びた家がある。


横に突き出た柱から吊り下げられた巨大なカンテラのある家。

ここは風守りの魔女と呼ばれる魔女の棲む家。


苔むしたレンガと、紫の花が房のように咲く木を足掛かりに、癖の強い赤毛の少年がそっと窓から家の中を覗く。


そこには大きな釜をゆっくりとかき回す人物が見える。


手入れのされていないボサボサの長い黒髪と、こめかみの辺りに一房の白い髪のある長身痩躯の魔女。

顔は長い前髪に隠れ、すっと通った鼻筋と大きくへの字に曲がった口しか窺えないが、皺の無い白い手を見る限り、20代半ばと言ったところだろうか。


「そこな小童よ、隠れておらんで出ておいで」

こっそりと家の中をうかがっていた少年は、心臓が飛び出る程に驚いた。

まさか、自分に気が付いているとは思いもよらなかったのだ。

「この島に近づく者はすぐにわかる。しかし、あのような小舟でよくまぁ来たもんだ。」


慌てて降りようとする少年の頭に、更に声が降ってくる。

「降りる時はゆっくりと降りておくれ、小童がよじ登った木は年寄りなのだよ、あまり傷をつけないでおくれ」


少年は諦めたように、恐る恐る家の中に入ってきた。

いや、入ろうとしたが入れなかった。


玄関の扉を開くと、目の前には少年の背丈よりも高く木箱と本が積まれていたのだ。積まれた本が崩れないよう、そっと扉を閉じた。


「あ…あの…玄関、入れないんですが…」

少年は仕方なく先ほどの老木に謝ったのち、先ほど覗き込んでいた窓から魔女に声をかける。


「ん…あぁ…そうか…ここ数十年あの扉から出入りしておらんかったからな…」


魔女は釜をかき混ぜる手を止め、何か小さくジェスチャーをした。

すると、釜をかき混ぜていた棒がひとりでに動き出した。

目を凝らすと、うっすらと何か小さなものが棒の周りを漂っている。精霊か何かだろうか。


「小童、いま入れるようにする、しばし待っておれ」

そういうと魔女は玄関の方へと歩いて行く。その姿を見送ってから少年も窓から降り、玄関の方へ向かった。


「あああっ」

ドスンッ

ドサドサッ


扉の前で待っている少年はビクリと肩をすくめる

「だ…大丈夫ですか?」


「う…うむ、大事無い。もう…少し待っておれ…」

少し上ずった魔女の声に、本当に大丈夫なのだろうかと心配になったが、こちらから入ることが出来ないのでどうしようも無い。


少年は分かりましたと答え、おとなしく待っているしかなかった。


四半刻ほど経つと、ぎぃぃと蝶番の錆びた音と共に、数十年使われていなかった玄関扉が開いた。

「こちらから入ってこいと言っておきながら、待たせてしまってすまんな小童、入っておいで」


やることも無く、膝を抱えながらレンガの目地を目で追っていた少年は声のする方へ顔を向けた。

そこには、優美な曲線を描く美しい唇と鼻筋が見事に台無しになっているボサボサ頭の魔女が立っていた。

「…はい、お邪魔します」


自分は来るべき場所を間違えたのかもしれないと思う少年であった。


勇気を出して家の中へ入ると直ぐに右手には、先ほど少年を阻んだ本たちがとりあえず積んだ状態で奥の部屋へ続くであろう扉の前に鎮座していた。その反対側、左手に目を向けると小さなかまどがあり、やかんがかけられている。先ほどの本たちとは違い、こちら側はこまめに掃除されている形跡がある。


(火を使う所だし、片付いてて当たり前か…)


さらに天井に目を向けると、大きな梁には沢山の根菜やドライハーブが吊るされていてほんのりと良い香り降りてくる。


「こちらじゃ」

「あ、はい」

辺りを見回す事に持っていかれていた意識が、声のする方へと引っ張り戻された。


声の方を見やると、魔導書らしき本や魔術の媒介に使うのであろう何かの角などを抱えた魔女が立っていた。

「いま茶を入れてやるから座って待っておれ」

抱えていた物を、横の棚に置きながら魔女が言う。

「ありがとうございます」

少年はそういうと、少し高めの椅子に腰を掛けた。


かまどの方へ歩く魔女を、そっと目で追いかける。

手慣れた様子で二人分の茶器に茶を注ぐ動作は一見気怠そうだが、一つ一つの動作に意識が注がれておりだらしなさは無い。

(やっぱり綺麗な人だなぁ…色々と勿体無いけど…)


「さて、小童よお主はここに何の用があって来たのだ」

少年の前に茶碗を置き、正面の椅子へ腰を下ろした魔女がそう問いかけた。


「ぼく…いや、俺を弟子にしてください!!」

少年は意を決して、大声で叫んだ。


「ならぬ」

「えっ」


簡単に許可が貰えるとは思っていなかったが、自分の言葉にかぶせるように言われ思わず聞き返してしまった。


「ならぬと言ったのだ。あのような小舟でここまで来たのは褒めてやろう。しかし、わしは弟子はとらん。そろそろ凪の時間も終わる、波が静かなうちに家に帰れ」


「嫌ですっ」


少年は魔女を真っすぐ見据えて言った。

どこまで続くか分かりませんし、遅筆なので投稿頻度もとても遅いです。

気長に待っていていただけると幸いです。

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