4章 by優
やる気のあるうちに投稿しておかないと...!
朝、僕はいつもよりも早く起きてしまった。いつもは五時半だが、今の時計は五時を指している。
「なんだ。いつもより30分も早いじゃないか。」
そう思って寝なおそうとしたけれど眠れなかった。それでようやく気づく。
「ああ、なるほどな。よほど楽しみだったんだったな。」
今のうちに余計な仕事を済ませておこう。そう思い立った僕は机にむかい、書類を整理し始める。整理しながら思っていた。『皆が死んだらどうしたらいいのか。』丁度ひと仕事終わらせたときに
「主様。と、起きていらっしゃいましたか。」
「ああ。いつもよりも早く起きてしまってな。先に仕事を一つ終わらせたところだ。」
「そうでしたか。ご友人という存在はとても大きいものなのですね。」
「どうやらそのようだ。朝食ができたのか。」
「はい。ですからお早く支度を整えていらっしゃるようにと旦那様が。」
何?父様が?
「父様は帰ってきているのか?!」
「はい。昨晩遅くにお帰りになられました。」
「分かった、すぐ行く。下がれ。」
「失礼致します。」
羊が帰った直後に三十秒で着替えを済ませてリビングへと急ぐ。
急いで扉を開け、
「父様!もう体の調子が治ったのですか?!」
「ああ。心配をかけたな。優、今日は友達と遊びに行くのだろう?」
良かった。顔色もいいみたいだ。
「はい!とても楽しみで三十分早起きしてしまいました。」
「ははっ!それは良かったな、そこまで大切な人を見つけられたのは。」
「はい。でも父様、何故そのことを知っているのです?僕は一言も言っていないはずですが。」
「羊に聞いたんだ。お前が友達と遊びに行くってとても楽しそうに話してくれたってな。」
あのやろう、とおもいながらも夏葵達との外出が楽しみ過ぎてついつい笑顔になってしまう。
「今日は私も仕事を手伝おうと思ってね。なに、あまり無理はしないさ。もし心配なら羊に見張ってもらうかい?」
父様...。たぶん大変な仕事をされるとまた体調が悪くなる。
「そうですね。羊、分かっているな。」
そう言って羊の方を向く。
「はい。心得ております。」
「よし。」
また父様の方へ向き直り、
「では父様、手伝ってください。今日は書類整理だけですので。」
「ああ、もちろんだ。」
父様が笑顔でそう答えてくれたのが嬉しくて、父様も手伝ってくれて、いつもよりも早く片付いた。
「すごいじゃないか優!こんなに早く片付けてしまうなんてびっくりだよ。」
「いえ、父様が手伝ってくださったおかげですよ。」
「ん、もうこんな時間ですね。旦那様、本日のこの時間は道路が混雑しているようですし、
早めに出発したほうが良いのではないでしょうか?」
ん?羊?何かあったのか?
「ああそうか。それじゃあ優、楽しんできなさい。」
「はい!」
そう言って羊と一緒に走っていった。
ただひとつ気になったのは羊のあの態度だ、普段は父様にあそこまで警戒することは無かったのに。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅一時半┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
「あら、早いわね。夏葵たちはまだ来てないわよ。」
「そうか。佳奈も早く来るようにしているのか?」
その質問に佳奈は優しい笑顔を見せながら
「うん。実は私、小学校の頃いじめられててさ、友達の大切さは嫌ってほど知ってるのよ。だからほんの少し早く来ることにしてるの。」
と、恥ずかしそうに言った。
「なるほど。佳奈様はつらい過去をお持ちのようですね。」
突如、佳奈の背後から声が掛かる。佳奈は振り返り戦闘態勢を取る。
「おっと、驚かせてしまいましたか。申し訳ありません、佳奈様。」
「なんだ。羊だったの、急に背後に立たないで。それだと私は敵だって勘違いして間違って殺すかもしれないから。」
お、おい、佳奈、どういうことだ?殺すかもしれないって...?
「あ、ごめんね。私、夏葵達に会うまで他人を信じてなかったの。それなりの理由が有るんだけど、今日それを話すと空気重くなっちゃうからしばらくはお預け。」
と悪戯っぽく笑った。
「えっ、おいこら!余計に気になるだろうが!」
「ふふふ、随分仲良くなられたのですね。」
と言う羊に対して
「は?これの何処が仲良く見えるのよ。」
「は?これの何処が仲良く見えるんだ。」
と、ハモった。羊はまだ笑っている。
「おっ、優も来てたか。お前も早いんだな。」
「佳奈ちゃんは約束の時間よりも早く来るのが習慣なんだよ。」
ああ、それならさっき聞いたが。
「佳奈は寂しがりだから───────ってうわっ!」
ドガシャン!
佳奈の見事なまでの足払いが夏葵を転ばせる。
「ある一言が余計。」
「だからって転ばせるな!いつも言ってんだろ、すぐ暴力的になるのはやめろ!」
はは、佳奈も夏葵もいつもどおりだ。
「けど何で羊が来ているんだ?」
「おや、お邪魔でしたか?私は主様の執事兼護衛ですから。」
「ふうん。」
夏葵、気を悪くしたか?
「ま、優が大切なのはわかるけどよ、もう少しは信じてくれてもいいんじゃないか?」
「態度に出さないだけで、皆様のことはかなり信じているのですが。」
どうやら本音らしい。珍しいな、羊がここまで他人を信用するなんて。
「へえ、じゃあ一緒についてくるか?」
「ちょっ、夏葵?!」
「夏葵ちゃん?!」
ったく、しょうがないな。
「はあ。もし皆が許可してくれるならこいつも連れて行く。」
それでいいんだろう?
「有難うございます。主様。」
「ったく、しょうがないわね。」
「いいと思うな。」
「問題ないぜ。」
夏葵、佳奈、撫子...。
「ありがとう。」
「うん?ああ、羊がいたほうがストレス解消に使えると思って。」
...ブラックジョークか?と軽く思う。
「佳奈様は私をなんだと思われているのでしょうか。」
「ん?サンドバックかしらね。ほら優、羊はほっといて行くわよ。」
「あ、ああ。」
普通に...受け入れてくれるのか?佳奈の羊への対応は無視できないにしても佳奈は簡単に他人を傷つけたりしないだろう。
「優、早くしろ!おいてっちまうぞ!」
全く、あいつらはどこまで優しいんだ。
「ああ、今行く。」
その後隣町にいって色々やった。洋服を選んだり、ハンバーガーショップで食事してみたり。
「ここが、ハンバーガーショップか。」
「あれ、優君ひょっとして此処初めて?」
撫子、僕は
「ああ、初めてだな。普段の食事はフレンチや中華や和食が多い。ステーキも食べた事がないから食べてみたいが、そんなにたくさんは食べられないからな。また一緒に遊んだ時に連れて行ってくれ。」
そう言うと三人は
「えっ!ほんとに?!」
「普段が豪華すぎんだろ!さすがは良家の当主......。」
「ええ、構わないわよ。ただし仕事にも専念しなさいよ。」
と各々の返事をしてくれた。隣で羊がくすくす笑っていたから何かあったのかとみてみると、
「すみません。私が仕えてから一度も此処まで感情を表情に出されたことがなかったので。」
そういえばたしかにそうだ。
「ですので少々嬉しくなってしまいまして。このご友人達とならきっと。」
大丈夫だ。そう言いたいのだろう。
「ああ、そうだな。」
とても楽しくて気がついたら六時半を過ぎていた。だが、皆違和感に気づいたらしい。
「ちょっと、これ、どういう事なの?」
佳奈が恐る恐る口を開ける。
「何で誰もいないの?」
今は夏だ。まだ七時を過ぎていないからひとでごった返していてもおかしくない。
「此処までやりますか......。」
羊が苦々しげに呟く。
「ちょっと待て。優、羊、なんか知ってるのか?」
夏葵...
「主様、潮時です。話すべきですよ。」
「羊...」
羊の瞳にはとても強い光が宿っている。
「はあ、おまえは言い出したら聞かないからな。」
「ありがとう御座います。」
「僕達は『ある組織』から追われている。原因はコイツだが。」
そう言って羊を指差す。
「羊が原因?何でだよ。」
「いいから聞け、夏葵。羊はその組織に所属していた。」
撫子、夏葵、佳奈の殺気が膨れ上がり、羊に注がれる。
「最後まで聞けと言っただろう。あくまで脅されて所属していただけだ。」
「『妹は預かっている。従わなければ妹の命は無い』と脅されまして。」
「羊さんには妹がいるんですか?」
そう撫子が言う。羊はさびしげに言う。
「はい。もしまだ何処かで生きているのならまた会いたいのですがね。」
三人の顔に不安の表情が広がる。
「ま、結果的に妹は捕まっていないと分かったので、こうして逃げている、というわけです。」
「なるほど。で、その組織が羊を捕まえるために街に私達ごと閉じ込めた、ってことで間違いない、羊?」
「はい。佳奈様のご想像どおりです、私のせいで皆様まで巻き込んでしまい、申し訳ありません。」
僕も胸が傷んだ。
「いや、羊のせいでも、優のせいでもない。悪いのはお前らを狙ってる奴らだ。」
「夏葵ちゃんの言う通りだよ。だってその人達は羊さんを嘘で脅し、利用して、真実を知ったら狙って来る。そんな奴なら私も手伝うよ。」
「私も手伝うわ。そんな奴許せないわよ。」
三人の言葉に安堵しながらも不安が隠せない。
「不安か?」
夏葵?
「大丈夫よ、もし変な奴が来たらすぐに風で粉微塵にしてあげるから。」
「佳奈、気持ちは嬉しいが、粉微塵にしたらグロテスクな物体に変わってしまうぞ。」
「うんやっぱやめとこう!!」
どっちなんだ?!
「まあ、此処に閉じ込めたって決めつけるのはよくねえな。とりあえず、街ざかいまで行ってみようぜ。」
「夏葵が『街ざかい』って言葉を知ってた事がありえないと思う。」
「やかましいわ!!!」
「まあまあ、取り敢えず、町外れまで行って、現状確認をする。ということで構わない?皆」
撫子の質問に全員が頷く。
町外れに行ってみたものの、
「ありゃりゃ。こりゃあ出られねえな。」
夏葵がつぶやく。街境で僕らは見えない壁に阻まれ、外に出られないようになっていた。
「この街で遊んでることが何でバレてるのか考える必要が有るわね。」
佳奈のアホ毛がピン!と立っているのを見て、僕の頭の中の警報が鳴った。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅一週間前┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
「優、佳奈のアホ毛がピン!って感じで立ってたら近づかないほうがいいぜ。その時は佳奈がメチャクチャ怒ってる時だからな。」
僕は確か『そんなにわかりやすいとは思えない』と言ったような気がする。そんな僕に撫子は笑って、
「ホントだよ。佳奈ちゃんは分かりにくそうで案外わかりやすいから。」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅現在┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
だが...
「何故この場所があちらには分かるのでしょうか?」
羊の疑問に皆が悩む。撫子は何か思いついたのか、一気に顔が青ざめる。
「おい、撫子、大丈夫か?」
「えっと、これは私の勝手な推測だけど...もしかしてこの中の誰かに発信機か何かでも付いてるんじゃないかなって。」
お、おい、まさかな...
「調べる価値、有るんじゃない?」
と、佳奈がニヤッと笑って、全員一瞬背筋が凍ったが、調べると僕の上着のポケットから出てきた。
「なるほど。こんな物があれば、バカでも我々の動向を知ることができますね。」
羊も本心を押し殺しているが、かなり怒っているように見える。そして佳奈は
「もうじきソイツらが来るかも。それ貸して。」
といって、アホ毛をピンと立てたままそれを持っていた夏葵からふんだくった。
「あ、おい!!」
と夏葵が静止したが、佳奈がその程度でやめるわけもなく。
「ふうん。......あ、良かった。これ盗聴器兼ねてる。」
佳奈の一言で皆の表情が凍る。佳奈はかなり嬉しそうで、正直怖い。
「よーし、これで...」
何をする気だ。全員がそう考えた。佳奈は迷わず盗聴器に話し出す。
「あーあー、聞こえてますかあ?標的者じゃない声でびっくりされているかもしれませんが」
そこまで言って、少し間を開けて佳奈は氷の様な声色で言った。
「もし本気で私達を殺すつもりなら本気で殺しに来なさい。もし来ない場合は私はあなた達を意気地なしだと判断して今後から馬鹿にするから頑張ってね、あははっ。」
そう言って発振器兼盗聴器をへし折った。
「おやおや。随分と面倒なことになりそうですが、そうなる事は予期されていたのですか?」
ん?羊?そういえば、やたらと佳奈にかまっているようにみえるが、なにかあるのか...?
「うん。なんとなく予想してたけど、あんな風に言ったから、多分来ると思うけど。」
「ああ。そうなったら俺たちの腕の見せどころだな!」
「うん!全員捕まえて、やめさせよう!」
「皆様、感謝いたします。私でも数で押されてはどうにもならない事が有るので、有難いです。」
「撫子、夏葵、佳奈、本当にいいのか?僕達はこの事をお前たちに隠していたんぞ。」
僕がそう言うと三人は笑って、
「巻き込みたくないのは分かるから。」
と言って笑顔を見せてくれた。
「でもこんな壁初めてだわ。大抵は『風』でどうにかなるんだけど。」
ん?佳奈?
「佳奈のいう『風』とは何だ?能力に関係あるのか?」
「優君って勘いいんだね、そうだよ。佳奈ちゃんの能力はね、」
「私の能力は『風神』。名前のまま、風を操る能力なの。」
「佳奈のは怖すぎるんだよ。キレた時に風使って切りかかって来るんだぞ。もうやめろって言ってんのに全然治そうとしないんだからな。」
「そういえば、今まで皆様の能力についてお伺いした事がございませんでしたね。もし宜しければ、夏葵様と撫子様の能力に関しても伺ってよろしいでしょうか?」
「ああ、いいぜ。俺の能力は『糸の海』って言うんだ。糸を媒体にして、色んな物や、人を操る能力だぜ。人の秘密を本人に暴露させることもできるんだ。結構すごいだろ。」
「ある意味地獄だな...。」
「私の能力は『鏡絵巻』って言うの。鏡の反射面を使って移動したりできるの。」
「へえ、便利だな。」
僕が感心していると、
「撫子、大事な事言い忘れてるだろ。俺たちの中でも1番エグい使いみちがあるんだけど、鏡の中の自分にソイツの黒歴史を暴露させるっていうやつが有るんだよ。なあ、撫子?」
「もう、夏葵ちゃん言わないでって言ったよね?!それによっぽどのことがない限り使う気起きないからね?!」
うん。なるほど...
「それは、なんともまあ、相手の精神が可愛そうになってくるな。」
僕がそう言うと撫子は慌てて
「ち、違うからね?!そもそもあったって使う気ないから安心して?!」
と話し始めた。
曰く、
撫子は小さい頃、誘拐された事があって、その時に『逃げたい、でもあの人達を傷つけたくない。』と考えた。そこで考えついたのは『相手に嫌なものを見せて、その隙を狙って逃げ出す』と言う考えに至ったらしい。だが自分はまだ五歳、相手は大人の男二人。どう考えても逃げられない。私に能力があればこの人達も私も怪我しないで終わるのに。力が欲しい、皆を傷つけない能力が、皆を守れるような能力が。
そう強く思った。その時、撫子の持っていた鏡が光り始める。光は言った。
『貴方に力をあげましょう。その代わり、大切なもののために力を使うと約束してください。』
と。声に応えて撫子は能力を手にいれたんだそうだ。
「なるほどな。撫子、変な疑いをかけてしまって済まなかった。」
撫子は笑顔で
「いいよ、気にしてないから。それよりも此処から出る方法と佳奈ちゃんが挑発した人たちへの対処も考えないと。」
と言ってくれた。夏葵も、佳奈も、羊も、僕に優しく笑顔を向ける。おかげで考える勇気が湧いてきた。
「俺も撫子も作戦って苦手なんだ。宜しくな。」
と、夏葵は言うが、
「さっきは作戦立案をしてなかったか?」
「ああ、皆の意見をまとめる事はできるんだけど、一から考えることが俺には難しいんだよ。」
へえ、そうなのか。
「分かった、任せてくれ。これでも暇な時に軍術書をかじる程度に読んだ事がある。」
「あはは、流石は優。こういう時も頼りになるわね。」
佳奈の何気ない一言がとても嬉しくて、頑張ろうと決心した。
「そういえば、この街には水や食料は有るのでしょうか?急がなくてはいけないのですが、場合によっては更に急がなくてはなりませんから。」
羊がそう言ったから探してみると、十人でも軽く一年暮らせるくらいあった。
「この黒幕はかなりの間俺らを閉じ込める気だろうな。」
と夏葵が苦々しげに呟く。僕のせいなのか?
「優、平気よ。あんたのせいじゃないわ。」
佳奈が少し焦ったような表情で言う。まさか...
「まさか佳奈も何か掴んでるのか?」
そう聞いたら目を丸くした。
「まさか優も?」
と、聞き返された。
「まあ、連中には散々追いかけられているからな。嫌でも情報が集まって来る。」
「じゃあその話を夏葵や撫子に話してもいい?」
「いや、やめておいてくれ。そのかわり、夏葵には、羊と組んで何処か泊まれるところを探してもらいたいんだ。まあ無いと思うが、佳奈にはこの結界もどきに穴が無いか確認してきてくれ。僕と撫子は此処で状況を整理する。」
「OK!三人に伝えてくるわ。状況整理宜しく。」
そう言って佳奈、夏葵、羊はそれぞれここから離れていった。
「私たちは現状の確認、で、良いんだよね?」
「ああ、今はこの街に幽閉されている状態だ。」
「うん。食料はある。空気も通ってる、でも出られない。ってことは...?」
「僕と羊を追ってきている連中がやっているとしか考えられないだろうな。」
「うん。何もしてこないのはおかしいと思うよ。なんだか不気味...。」
「撫子、本当に済まない。僕のせいだ。」
そう頭を下げる。
「もう良いって。それより先にこれからその人たちが何を仕掛けてくるかを考えたかったんだよね?」
撫子はやはりすごいな。
「ああ。撫子、もし、撫子が敵の立場ならどう動く?」
「ううん...そうだなあ、じぶんたちが傷つかないように代わりを放つ...かな。」
「ああ、確かに来そうだな。」
と、言った矢先だった。
ギェェェェェェ!!
突如、黒いバケモノが現れる。骨があるのか無いのかよくわからない。
「あーうん。えっと、なんか、グロテスク、だね。」
は?!撫子?!!!!
「おい、しっかりしろ!撫子、逃げるぞ、あいつらは絶対にヤバイ奴らだろう!!」
とかしているうちに化物はすぐそこまで迫ってきている。
「優、結局穴は無かったわよ。あ、ちなみにって、え???」
とか言って目を丸くする。早くこいつらを切ってくれ!!
「おい、佳奈!こいつらを早く切れ!僕じゃ切る前に気絶する!」
「あーはいはい。その代わり、あとで今夜の見張り決めるけど私最後に一人でやるから。」
「分かったから早く切れ!!」
「はいはい。『風神:死神の鎌』!」
佳奈がそう言うとあたりで緑色の風が僕達を取り巻く。そして風が収まったときには、
ーーーーーーーーー辺りに化物だった肉片たちが散らばっていた。ーーーーーーーーー
「これ、は...。」
やりすぎなんじゃ...。
「佳奈ちゃん、これは流石に」
「やりすぎだって言いたいんでしょ?でもこいつら、私のとこにも来たの。どうにか傷つけないようにって思ったんだけどできなくて。」
そうだったのか。
「悪かったな、佳奈、こんなやり方しか無いことも知らないで非難して。」
「別にいいわよ。私もこれを初めて見てたら同じこと考えてただろうしね。」
そう言って佳奈は笑う。何故そんなふうに笑えるんだ?何故佳奈はあんなにも優しく笑える?
「佳奈ちゃんいつもそうだよね。何を言われても、誰に傷つけられても、いつもそうして笑ってる。佳奈ちゃん、どうしてそんな風に優しく笑えるの?」
佳奈は不意をつかれた、みたいな顔になって、
「ふっ、アハハハハ!!」
と、爆笑した。
「なんで爆笑するんだ。僕も撫子も真剣なんだぞ。」
「ごめんごめん。あまりにも真剣だとつい笑っちゃうのよねあっはは!」
「佳奈ちゃん、これだけは応えて。どうしてそんなに優しく笑えるの?」
佳奈の表情が消える。
「笑ってなんかいないわ。」
そう、なのか?
「って、嘘だよね?何年一緒にいると思ってるの?」
ん?嘘だと?
「あーあ、流石撫子。お見通しか。」
「佳奈ー?」
「あ、やっぱり優は引っかかったわね。」
「何だと?!」
と、他愛もない話をして、夏葵と羊が見つけた館に行き、見張りを決めた。
「まずは僕と羊で二時間見張る。夏葵と撫子も二時間見張ってくれ。佳奈は三時間になるが、良いか?」
そう言うと佳奈が口を開いた。何だ?
「ええ、かまわないわ。でも、無理はしないで。敵と対峙した時には大丈夫そうなら倒して、無理そうなら足止めしつつ皆を起こす。良いわね?」
「ああ。」
そう言って羊と屋根の上に登る。
「ああ、上に行くんだ。」
と、言われたが
「早くご就寝なされたほうがよろしいかと。皆様もこれから見張りを交代していただくのですから。あまり無理は禁物ですよ。」
と羊が優しく笑って言った。
「ああ、じゃ、見張りは頼んだぜ。」
「よろしくね、優君、羊さん。」
「気をつけてね。」
といって、三人は部屋へ入っていく。
その後、僕達が見張りのときには何も無かった。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄街、中心部にて┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「月、大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫だ。それよりも早く此処から出るぞ。」
二人の人影がそう、静かに話していた。