3章 by撫子
今日も三人で坂を登っていた。佳奈ちゃんは強い日差しが苦手だから日に日に『暑い』とこぼす事が多くなった。逆に夏葵ちゃんは日に日に元気になっていっていた。
「なあ、あれから優の態度が軟化してないか?」
んーまあそうだね。
「まあそうね。少しは上から目線じゃなくなったから、そこは進歩したと思うわ。」
「うん。佳奈ちゃんは相変わらず毒舌だね。」
「あはは。本心ではそう思ってねえくせに。」
ドゴッ!
「ごふっ」
あーあーまたやってる。全く、止めるのは私なんだからね!
「はいはい。ほら、起きて、夏葵ちゃん。私じゃ運べないよ。」
「う、うん...。」
「大丈夫?」
「あ、ああ。ありがとな、撫子。...おい佳奈。」
「ん?」
「『ん?』じゃねえ!!いっつも言ってんじゃねえか!バイオレンスは止めろ!」
「しょうがないじゃない。」
「どこがだよ!」
あれ、この音は。
「あ」
「うん。来たわね。」
私達は立ち止まり、リムジンが止まるのを待つ。
「おはよう。佳奈、夏葵、撫子。今日も暑いな。何故人はこんな日に外出するのか理解できないな。」
うん。まあ暑いけどね。
「やっぱり大げさだよな。」
「煩い。」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅放課後┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
四人での帰り道。正直、上りよりも下りの方が危ないんだよね。私も一ヶ月で2、3回は転んでるから気をつけないと。
「そういえば、最近一緒に遊んでないわよね。」
と佳奈ちゃんが口を開く。まあ確かに最近は大変だったからね。
「ああ。色々と中学と違うからな。授業ごとにクラス移動しなくちゃいけないし、
うちの学校立体迷路だからな。」
夏葵ちゃん...
「それって関係あるの?」
「そりゃあ有るんじゃない?迷うとなかなか出られないわよ、あそこ。」
あ、そっか、佳奈ちゃん方向音痴だから迷いやすいんだよね。
「だからたまには一緒に遊ばない?優も一緒に遊ぶ?」
「なっ!...ま、まあそんなに僕と遊びたいなら遊んでやらないこともないが!」
「うん。やっぱツンデレか。」
「違う!!!」
「はいはい。それで?三条家の当主であるあなたの予定が空いてる日はいつ?」
「1番近い日だと今週の土曜日から火曜日までは休みの予定だ。」
ん?んん?当主...?
「ええええええええええ?!」
あっ夏葵ちゃんとハモっちゃった!!でも
「ちょっと待って!当主ってことは偉いんだよね?!」
「おいおい、確か三条って代替わりした途端に勢力拡大したんだよな?だとすると優がそいつなのか?」
「ああ。僕の代になってから一気に収入が増えた。」
『何だそんなことか』って言いたげな顔で言う優君
「えっ、じゃあお前すごいんじゃん!!」
確かにすごい!
「ふうん。じゃ、今週の土曜日一時半に鷹々山中央駅の南口に集合でいい、優?」
「ああ、開けておく。と言うか、それなら『明日、一時半に鷹々山中央駅南口に集合』で良いんじゃないか?」
「あ、確かに。でもそんなに無理しなくていいのよ。」
うそ!佳奈ちゃんがこんなに素直だなんて。
「仕事が入れば次の日にすればいい。仕事よりも友達との時間の方が大切だ。違うか?」
優君と話してた佳奈ちゃんは一瞬黙って、
「うん、そうね。私、大切な順番は友達、家族、自分の順番だと思ってるの。仕事なんか3の次よ。私、優の事誤解してたわ。ごめんなさい。」
「構わない。もともとあまり口をきく方じゃないからな。初めは誰でもそうなるんだ。治そうとは思うんだが、どう直せばいいか分からないんだ。」
そうか。やっぱり優君、佳奈ちゃんと同じだ。そう思って夏葵ちゃん、佳奈ちゃんと顔を合わせる。
「ふっ、あはははは!」
と三人で笑ってしまった。だって
「お、おい笑うな!僕は極めて真面目に話しているんだぞ!」
「ごめんごめん。だって。」
「悪い悪いだって。」
「ごめんなさい。だって。」
みんな一息置いて、
「佳奈ちゃんがそうだったからさ。」
「佳奈がそうだったからさ。」
「私がそうだったからさ。」
と同じようなことを口にする。優君は一瞬ポカンとして、
「ははははは!そっくりだなお前たち。なるほど、佳奈がそうで今楽しく過ごせているから きっと大丈夫だ、と。いいだろう、お前らを信じる。」
そう言ってくれたので、
「おう!今週が早く終わってくれねえかな。」
「いやいや夏葵、今週が終わったら一緒に遊ぶのもできないでしょ。」
「そうだった。」
「あはは。もう、夏葵ちゃんったら。」
「じゃあ僕はこっちからだから。」
と。優君家こっちなんだ。
「また明日な、優。」
夏葵ちゃんが言ったら優君は嬉しそうに言った。
「...ああ。また明日。」
私は家に帰っても明日が楽しみで楽しみで仕方がなかったのでした。