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61話 VSイース

 僕らは天使軍と戦いを繰り広げているイースの元に向かった。


 同時に飛び立ったにも関わらず僕とイルヴァーナの距離はどんどん離れていく。それだけPSEウィングの出力が桁違いなんだ。


 天使軍の戦況はあまり良くない。

 シャトルや小型戦闘機が次々と落とされていく。

 

 上昇していると、再びセンター長から連絡が入った。


『アイトくん、そのPSEウィングは君の思考によって形状を変化させる。どういう攻撃を放ちたいのかイメージするんだ』

「了解!」


 イースは次のシャトルに狙いを定めると黄金の剣を放った。

 僕は槍のイメージを思い浮かべる。するとPSEウィングの内側から赤い槍が飛び出していった。


 剣と槍が激突し、相殺する。


 イースは真紅の眼を見開き驚きの表情をこちらに向ける。


「へぇ、君は次から次へと色々なモノを持ち出してくるね。それはあの紛い物の賢者の石かな?」

「だとしたら?」

「いや、羽虫たちの道具の使い方には少し関心するよ。私もその紛い物の石を試しに各地の村に送り込んでみたが、さして効果はなかったからね」


 村に送り込んだ?

 もしかして、最初の頃に寄った村もその一つだったのか? 

 あの時、ゴブリン退治を行ったお礼にあの疑似賢者の石をもらった。ナナさんは何者かの企みによるものだと言っていたけれど、それはイースの仕業だったのだ。


「場合によっては村人たちが危険な目に遭うかもしれないのに……」

「今更そんなことを言うのかい? 私が人間のことをいちいち気にするとでも?」


 そんなことは聞かなくてもわかる。

 イースにとってこの国の全ては道具でしかないのだ。


 僕はPSEウィングから幾本もの矢をイースに向けて発射した。


「そんなモノで私に傷を負わせることができるとでもーー」


 迫りくる矢をイースは黄金の剣で薙ぎ払った。

 瞬間、矢が次々と爆発する。


 僕は矢にNanazonで取り出したダイナマイトを装着させていた。

 矢を防がれても爆発でダメージを与えることができると考えたからだ。


 爆炎の中、イースが上昇してくる。


「まったく、いやらしい攻撃方法を考えつくね」


 イースは数本の黄金の剣を放とうとするが、その背後からイルヴァーナが魔剣を振るう。


「また、君か!」


 亜空の斬撃が白銀の軌跡として残る。

 イースは辛うじて避けていた。そんな彼に向かって今度は僕が魔剣を振るう。

 剣で受け止めるイース。

 僕はさらにPSEウィングを剣状にして両側から彼の首に突き刺した。


「ぐえぇ!」


 イースはうめき声を上げ、ギロリと僕を睨みつけてくる。その口が大きく開かれる。金色の光が彼の口の中から溢れてくる。


 ヤバい!


 僕はイースから距離を取って身を伏せる。

 瞬間、頭上を金色の光線が走る。


 その光線によって近くのシャトルが撃墜されてしまう。


 イースを見ると、彼の首の傷は既に修復していた。


「アイトさん、物量で攻めましょう!」


 ミニナナさんの指示に、僕はPSEウィングを大きく広げる。

 両翼からナナさんがよく使っていたロケットランチャーを複数作り出す。


 そしてその全てを魔神王に向けて発射した。


 イースはそれがどのような性質の武器なのか理解していた。だから、彼は飛び退ける。しかし、ロケットランチャーは意思を持っているように彼の後を追う。

 僕は追尾するよう魔術とイメージで強化していた。


 イースは縦横無尽に飛び回りながら金色の光線で弾を撃ち落としていく。


 イースの機動性は厄介だ。

 僕の攻撃も、そしてイルヴァーナの魔剣も簡単に避けられてしまう。


 動きを封じる。もしくは完全に不意を突く。

 僕はイルヴァーナに目配せした。彼女は頷きつつ白銀の斬撃を飛ばす。


 高速移動するイースに並走するように僕も飛ぶ。

 そしてNanazonで、あるモノを取り出す。


「ナナさん、これを設置して!」


 僕はミニナナさんにそのあるモノを手渡した。

 彼女はビシッと親指を立てて僕の懐から飛び出していった。


 イルヴァーナと僕はイースの注意を引きつけつつ下降する。

 狙い通り僕らに苛立っているイースも後を追って攻撃してくる。


 そして天使の軍勢よりもある程度高度を下げた所でイースを見上げる。

 彼は多くの黄金の剣を展開して僕らに迫ってくる。


「もう君たちは消えて良いよ」


 イースは黄金の剣を放とうとする。

 イルヴァーナは僕らの側に亜空の斬撃を放つ。


「はん! どこを斬っている?」


 イースは黄金の剣を放った。


「今だ!」


 僕の合図にイルヴァーナが魔剣を掲げる。剣がより一層輝きを増し、先程彼女が作った亜空間に続く軌跡に僕らの体は吸い込まれていった。



 そして次の瞬間には、僕らは天使の軍勢たちがいる高度に戻ってきていた。


 そこは少し前にイルヴァーナが亜空の斬撃を残していたところだった。


 これが魔剣アーデインのもう一つの能力。

 剣が残した斬撃の軌跡同士を繋げることができる。

 要は2つの斬撃の軌跡がありさえすれば、その間を瞬間移動する事ができるのだった。


 そうと知らないイースは僕らが突然消えたことに驚き、上にいる僕ら見つけた時は怒りに顔を歪ませた。


 彼は僕らに気を取られ、一気に上昇してくる。

 だけどそれが僕の狙いだった。


 彼がある高度に差し掛かった時、空一面に光の網が現れた。


「なっ!」


 イースは止まることができずその網に激突する。


 レーザー・ネット。


 天使の防衛兵器をNanazonで取り出し、ミニナナさんに設置してもらっていた。


 イースの体は光の網に焼かれている。

 しかし、これだけではまたすぐに傷を修復してしまうだろう。


 だから僕は、レーザー・ネットに囚われているイースに両翼を向ける。

 送られてくる擬似賢者の石のエネルギーをすべて両翼の間で一点に集中させる。


 《PSE砲》!!


 放った赤い閃光がイースを貫いた。




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