50話 アイトさん、千年王のエネルギー源を発見しました!
僕らはさらに奥に進んだ。
進むほどに行き交う天使たちの数が増えてくる。
遮蔽の魔術を使っているとはいえ、バレないように気をつけないと。
進み切った先にとりわけ広い部屋があった。高い天井の先は薄暗くてよく見えない。
その部屋の前面を目にして、僕は声を上げそうになった。
特大の画面のようなモノがあり、そこには地上での四族同盟軍と千年王との戦いが映し出されている。
驚いたことにもう既にシシーたちが戦いに参加していた。それ程までに千年王は強くなっているのだろう。
ちょうど今、シシーの魔剣によって千年王の首が跳ね飛ばされた。
「千年王、蘇生段階に入ります」
画面を見ていた天使の一人が言う。
「戦闘データ更新完了。千年王プログラム再起動します、センター長」
センター長と呼ばれた中年男の天使が頷く。
「よし、PSEを照射せよ!」
部屋の中央にある水槽が赤く輝きだす。その中には1匹の白猿が浮かんでいた。その胸の部分には頭程の大きさの賢者の石モドキが埋め込まれている。
僕はナナさんとイースを見た。二人とも頷いている。
これが千年王のエネルギー源だろう。
これさえ破壊すれば千年王は復活しなくなる。
と、一際眩い赤の光が発せられた。
「え?」
目を開けると、近くにいた天使が僕らのことをマジマジと見ている。
「だれ?」
間の抜けた声で呟く。
僕らのことが見えている。遮蔽の魔術がさっきの赤い光で解けてしまったらしい。
僕らの存在に他の天使たちも気づき始める。
そして、
「し、侵入者!!」
その叫びと共に赤いサイレンが鳴り響く。
辺りが騒然となる中、ナナさんはショットガンなるモノを取り出して水槽に向かって放った。
青い閃光が激突するが、水槽はびくともしていない。
「かなり頑丈なようですね」
ナナさんはさらに攻撃しようとするが、上から閃光が降り注ぐ。
僕らはそれを飛び退いて避けた。
上を見ると、光の翼を生やした天使たちが数人浮遊している。
その光の翼が羽ばたく度に閃光が飛んでくる。あのレーザー・ネットと同じ性質のモノだとしたら厄介だ。
「パワー・ウィングを見るのは初めてか!?」
天使の一人が閃光を飛ばしてくる。
僕はそれを避けてハンドガンを取り出し、銃口を天使に向ける。
「ハッ! そんな旧世代の武器でーー」
魔力を込めた弾丸を放つ。
天使は翼を閉じて弾丸を防ぐ。衝撃で後方に吹き飛ぶ。
「何だこの威力は!?」
「油断するなクサカベ! ヤツらは魔術を使ってくるぞ!」
天使たちは警戒するように僕の周りを飛ぶ。
あのパワー・ウィングという翼、飛行だけじゃなく攻撃と防御も兼ね備えているらしい。だけど、魔術の耐性は無さそうだ。
だったら。
僕はハンドガンをボックスディメンションに戻し、魔剣ダーインスレイヴを取り出した。
こっちの方が効果的に戦えそうだ。




