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41話 アイトさん、嬉しいことを言ってくれますね!

 イシュー王子の伝令が僕たちのところにやって来た。

 僕たちもオーロラ平原に行く時がきたのだ。


 僕らは街の外に向かった。王都内の様子は、最初に来た時よりもさらに活気に満ちている。

 特に防具屋や武器屋では冒険者たちがこぞって買い漁っている。

 みんなこれからの千年王との戦いに備えているのだろう。


「あんな連中が戦いの役に立つのかねぇ」


 ナナさんが呆れた様子で冒険者たちを眺めている。


「人手は多い方が良いだろう」


 とイルヴァーナが答える。


「どうせ、イースは手駒としか考えてないぞ」


 ナナさんの言葉をイルヴァーナは否定しなかった。


 ◆


 王都の南側に広がるオーロラ平原にたどり着いた。


 平原の上空にはオーロラが現れている。

 シシーが言うには、これは魔力の蓄積によって起きている現象らしい。

 これがもっとハッキリと、そして広範囲になる程に千年王の目覚めが近くなるのだとか。


 そしてオーロラの下に広がる平原は、普段であれば立ち入りが制限されている。しかし、今は何十万という人々が集まっていた。所々に天幕が張られ、拠点が出来上がっている。


 小高い丘の頂上に王家の天幕があった。

 僕らがそこにたどり着くと魔神イースが将軍や魔導技士団長たちを引き連れて出迎えてくれた。


「やぁみんな、ご苦労だったね」


 イースが笑みを浮かべて僕らを労う。


「君らがシルフたちを解放してくれたおかげで迅速に準備が進んでいるよ」


 物資が空を飛んで拠点に運ばれる様子が見える。確かにこれまでだったらそんなことはできなかっただろう。シルフの風の魔術のお陰で人と物の移動が容易かつ迅速になったのだ。


 一人の兵士が丘を駆け上がってきた。


「中央偵察隊からの報告です!」


 兵士は王子の前に跪く。 


「オーロラ平原中心部のクレーター内に謎の発光現象を確認したとのことです」


 兵士の報告に魔導技士団長が深刻に頷く。


「殿下、明日には千年王が目覚めると思われます」

「そうだね」


 イースは将軍に向き直る。


「戦力はどのくらい集まっている?」

「現状で七割くらいかと。これまでに比べたら驚異的な速さです」


 将軍の言葉にイースは満足げに頷く。


「ナナ、妖精たちもやってくるのだね?」

「まぁ、もうすぐ来るでしょ」

「よろしい。妖精たちのバックアップは不可欠だ」


 ナナさんは舌打ちした。イースの偉そうな感じが気に食わないのだろう。

 将軍たちはそんな彼女の態度に顔を顰めるが、何も言ってこなかった。


「西側偵察隊からの報告です!」


 別の兵士が報告にやって来た。


「西の平野部に次々とモンスターが集まっているとのことです」


 将軍たちの間に動揺が走る。しかし、イースは平然としている。


「想定内さ。ニニ!」


 イースは天幕に向かって声を掛ける。

 すると赤髪の女の子がオズオズと頭を覗かせる。


「きゃ! ひ、人が一杯!」

「大丈夫。誰も君を食べたりしないよ」


 プルプルと震えるニニにイースは優しく声を掛ける。


「西の方にモンスターたちが集まっている。いつも通りモンスターキングを倒して来てくれ」


 するとニニはニヤリと歪な笑みを浮かべる。


「ひゃはっ! 待ってたぜ!」


 勢い良く天幕から飛び出し、西の方へと飛んでいってしまった。おそらくあの口調から察するに人格がアリアに切り替わったのだろう。


「モンスターの方は魔神ニニアリアが対処する。うまく行けば戦力が増えるだろう」


 僕はこっそりとナナさんに問いかけた。


「ねぇ、ニニアリアの解放者ってどこにいるんだろう? まだ一回も会ってないよね」

「あー、どうですかね。まだアイツらの中かもしれないし、もう外かもしれません……」

「え?」

「そういうことです」


 それってつまり……食われたってこと?

 う、訊かなければよかった。


「僕、ナナさんの解放者でホント良かったよ」

「やだぁアイトさんったら、嬉しいこと言ってくれますね!」


 などと話をしていると、またもや兵士が丘を駆け上がってくる。


「今度は東部偵察隊だね」


 オーロラ平原の東端から先は深い森になっていた。イースはそこにも偵察隊を向かわせていたらしい。


「殿下、東の森に亜人の軍勢が集結しているとのことです!」


 この兵士の言葉に周りの者たちは騒然とした。イースでさえ驚いている様子だ。


「これは予想外だね」

「殿下、偵察隊によりますと、亜人の王を名乗る者が殿下と魔神の解放者たちを交えて話をしたいと申しているそうです」


 その場にいる者たちが僕とイルヴァーナに視線を向けてくる。


 何よりも僕が驚いている。

 亜人の王が一体僕らに何の用があるのだろう?



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