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38話 アイトさん、その先はダメです!

 翌日、穏やかだった空模様は一転して雷鳴轟く嵐となった。


 豪雨の中、飛行船は飛び立った。


「百年王はどこでしょう?」

「まだ姿が見えないな」


 僕とイルヴァーナは車のボンネットの上に立っている。ミミが施してくれた風の魔術のお陰で暴風雨からその身を守ることができている。


 車内の運転席ではナナさんがハンドルを操作している。さすがにこの嵐だと自動運転はできないらしい。


 ナナさんが笑顔で手を振ってきた。

 僕も手を振り返す。助手席のシシーは呆れたように首を振っている。


「アイトくん、あれを!」


 イルヴァーナが斜め上空を指し示す。

 稲光に照らされて翼を広げた黒いシルエットが浮かび上がる。


「百年王だ!」


 僕はナナさんに合図した。

 すると飛行船は急上昇し、百年王の所に突撃する。


 ボックス・ディメンションからハンドガンを取り出し、魔力を送り込む。


 百年王はドラゴンよりも大きな鷲だった。鋭い眼光で僕らを睨み据えている。


 その巨体に向かって僕はハンドガンの弾丸を放った。青色の閃光が巨鳥に向かって走る。

 さらに隣のイルヴァーナも紫色の斬撃を放った。


 百年王は一声鳴くとさらに上昇して攻撃を避けた。


「素早いな」

「ですね」


 巨体にも関わらず百年王は上下左右にと僕らを翻弄するように飛び動く。


「ナナさん!」

「了解です! これをただの飛行船だなんて思わないでくださいね!」


 ナナさんは運転席にある赤いレバーを押し下げた。

 すると爆音と共に飛行船が急加速する。


「ナナジェットターボでーす!」


 ミミの風の魔術のお陰で加速影響を受けずに済む。


 飛行船は百年王と平行して飛んでいる。

 巨鳥は急転換し、上から飛行船に襲いかかってきた。その足の鋭い爪で気嚢を切り裂こうとしている。


「ナナさんっ!」


 飛行船は速度を落とした。

 百年王の攻撃は空を切るのみで終わる。その隙をイルヴァーナは逃さなかった。

 魔剣で百年王の片足を切り落とした。


 鋭い鳴き声を上げて巨鳥は上昇して行く。足から流れ出た血が風に乗って飛び散って行く。


「やりましたねイルヴァーナさん!」

「あぁ。だが、完全に怒らせてしまったようだ」


 百年王は飛行船の正面から残った爪を構えて突撃して来る。


「私が気を引く。タイミングを測って攻撃を!」

「わかりました!」


 イルヴァーナは手を構えて何発も火球を放つ。

 そちらに気を取られる百年王。

 最も近づいたタイミングでボックス・ディメンションから取り出した魔剣ダーインスレイヴを巨鳥の胸の辺りに突き刺した。


 魔剣が突き刺さったまま百年王は距離を取る。

 だけど逃すつもりはない。


 僕は遠隔で魔剣に魔力を送り込み、百年王ごと引き寄せようとする。

 しかし、思いの外パワーがあるので完全に引き寄せることができない。

 だったらこちらから行こう。


 僕はボンネットから飛び降りた。


「アイトくん!?」


 イルヴァーナの驚きの声が聞こえた。


 魔剣を引き寄せようとすることで、体が小さい僕の方が逆に引き寄せられて行く。


 そして百年王の体に飛びつくと、ゼロ距離でハンドガンを放つ。


 悲鳴を上げる百年王はさらに上昇して行く。

 嵐を超えて上昇する。


 その間にも僕はハンドガンを放つ。


「アイトさん! その先はダメです!!」


 後ろからナナさんの叫びが聞こえた。


「飛び降りてください!! 早く!!」


 僕は彼女を信じ、魔剣を引き抜くと百年王の体から飛び降りた。


 瞬間。


 空一面に眩い光の網が現れた。


 百年王はその光の網に激突し、バラバラに切り裂かれてしまった。



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