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32話 アイトさん、魔神の使命なんてクソです

「第一の魔神イース?」

「どういうことだ!?」


 僕とイルヴァーナの疑問が重なる。

 どうやら彼女もイースのことは初耳だったらしい。


「イシュー王子は確かに人間だったはず……」

「肉体は確かに人間のモノよ」


 混乱している僕らにシシーが説明する。


「だけど、精神は魔神イースなのよ」

「要するに、この野郎は他者の肉体を奪い取っているんですよ」


 ナナさんが吐き捨てるように言う。


「奪い取っているとは人聞きが悪いな。私は正当な儀式によって献上された肉体を使っているだけだよ」


 イシュー王子、いや魔神イースが気分を害した様子もなく言う。


「献上? 国王陛下はこの事を了承しているのか?」


 イルヴァーナが問いただす。

 彼女もイースに対して警戒心を抱いているらしい。


「当然だよ。王族はみな私のことを知っている。このイシューも自分の役割を理解していたさ」


 王子の肉体の献上。

 それがイースが解放される為に必要なこと?

 どうやら、魔神ごとに解放条件は違うらしい。


「私のことはいいさ。それよりもナナ。君には困ったよ。全ての魔神が解放される前に王狩りを始めてしまうなんてね」


 イースの言葉にナナさんは鼻を鳴らす。


「お前の都合なんて知ったことじゃない。わらわはただ、このアイトさんと共に自由を満喫したいだけ」

「果たして今のこの国で自由を満喫できるかな?」


 一体2人は何の話をしているのだろう?

 ついていけない。


「すみません。王狩りって何のことですか?」


 僕の問いかけに答えてくれたのはイースだ。


「百年王を倒すことさ。四体の内、三体は既に君たちが倒してしまったけどね」


 後一体百年王がいるんだ。


「ナナの開放者くん、そもそもなんで百年王なんてモノたちがこの国にいると思う?」

「えと、彼らは……妖精を封印するためとか」


 僕の答えにイースは頷く。


「その通りだ。妖精の発する魔力を封じる為なんだよ。では、誰が百年王に妖精たちを封印させたと思う?」


 え? 誰が封印させたか?

 僕は考えたが、さっぱりわからない。


「すいません。検討もつかないです」

「それが普通さ。魔神だけが知っている。この国の自由を縛り付けている存在。彼らは天上に住まう者」


 イースは指を上に差し上げる。

 それは遥か彼方の上空を指し示しているようだ。


「私は彼らのことを天使と呼んでいる」

「天使?」


 天に住まう者。

 空には鳥人が住んでいると聞いたことがあるけれど、それとはまた別の存在らしい。


「私たち魔神は千年前から天使たちと戦い続けてきた。しかし、勝てたことはない。奴らが創り出した千年王のせいでね」


 また新しい者が登場してきた。百年どころか千年だって?

 それも魔神たちがソイツに負けるだなんて、想像できない。


「千年王こそがこの国の呪縛の元凶だ。ヤツは四体の百年王が倒された時、いや、正確に言えば、この国の総魔力量がある一定のラインを超えた時に目覚めるようになっている」


 イースは淡々と話を続ける。


「私達は何度も王狩りで百年王たちを倒し、千年王を滅ぼそうとした。だがヤツには勝てず、その度に封印され、そして新たな百年王が配置されるってわけさ」


 ちょっと僕には想像できない話だ。

 千年王との戦いを彼ら魔神はこれまで何回も繰り返して来たってことだろ?


「千年王を倒してこの国を呪縛から解放すること。それが私たち魔神の使命なんだよ」


 イースはため息を吐く。


「今回で11回目だ。万全な状態で挑むため、7人の魔神全てが解放されてから百年王たちを倒して回るつもりだった。それを君たちがさっさと倒してしまったってわけさ」



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