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31話 アイトさん、コイツこそが第一の魔神です

 僕たちはしばらくウーゼンでのんびり過ごした。

 色んな効能の温泉があるらしく、飽きることがない。


 それと魔術の練習も行っていた。

 この数日で僕はボックス・ディメンションを使えるようになっていた。


 そんなある日。

 僕らの前に魔導技士イルヴァーナと魔神シシーが現れた。


「人がせっかく寛いでいるって言うのに、ホント間の悪い連中ですね」


 ナナさんがうんざりした様子で言う。


「まぁ、そう言うな。私たちは君たちと戦うつもりはないよ」


 イルヴァーナは苦笑いを浮かべている。

 彼女とシシー以外は誰もいない。他の魔導技士は来ていないようだ。


「ただ君たちに王都に来てもらいたいだけなんだ。晩餐会の招待客として」

「え、僕らが晩餐会に?」

「そうだ。イシュー王子が君たちにお会いしたいらしい」


 なんで王子が僕らに会いたがるのだろう?


 ナナさんの方を見ると彼女も困惑している。


「ナナ、ミミから聞いたと思いますがこれはイースの意思ですわ」


 シシーがナナさんに向かって囁くように言った。


 イース。

 ミミと初めて会った時にもその名前を聞いた。


 ナナさんはやれやれと頭を振る。


「アイトさん、すみませんがここは従った方が面倒なことにならなくて済みそうなんです」

「うん、僕は構わないよ」


 ナナさんが素直に従うことが意外だった。

 イースというのは何者なのだろう?


「感謝するよ。私はてっきり拒絶されるものと思っていた」


 イルヴァーナもナナさんの態度が意外だったようだ。


「早速、出発と行きたいところだが……」


 イルヴァーナはシシーの方を見やる。


「もちろん、温泉に入りますわ」

「ということなんだ。すまないがもう少しここでゆっくりさせてくれないか?」


 どうやらイルヴァーナたちも温泉の魅力には逆らえないようだった。


 ◆


 王都は国の中心部にある。

 南にはオーロラ平原が広がっている。そこは立ち入りが制限されているらしく、一部の者たちしか入れないらしい。


 その平原を横目に見遣りながら僕らは王都へと入っていく。


 さすがに王都の中でキャンピングカーは目立つので、街中は用意されていた馬で向かう。


 王都はこれまで訪れたどんな街よりも広く栄えていた。僕が見たこともないような食べ物や道具がたくさんあった。


 僕はワクワクしながら見回していたが、ナナさんは興味がなさそうだった。ミミは馬に跨ったまま眠っている。器用なモノだ。


 しばらく街中を進むと、目の前に大きな宮殿が現れた。ウンディーネの水の宮殿よりも荘厳で立派な造りだった。


 ここに王族たちが住んでいるんだ。まさか自分がこの宮殿に招待される日が来るなんて思わなかった。


 僕らは宮殿の門を通って中に入った。

 馬から降り、宮殿内の通路を進む。門番や他の兵士たちとすれ違ったが、みんな僕らのことを奇異な目で見てきた。

 その度に「勝手に見るな」とナナさんが怒るので僕は内心ハラハラしていた。


「ここだ」


 イルヴァーナが豪華な造りの扉の前に立つ。


 開け放たれた扉から中に入ると、美しい調度品に囲まれた部屋の中央に一人の青年が立っていた。

 立派な衣服を身に纏っている。間違いない。彼がイシュー・アナフィリア王子だ。眼を引くのは、雪のように真っ白な髪だ。


「王子、彼らが魔神とその解放者です」


 イルヴァーナに紹介された僕は王子の前に膝を突く。しかし、ナナさんは立ったまま王子を睨みつけている。


「久しぶりだね、ナナ」


 微笑を浮かべて王子は言った。

 僕は思わずナナさんを見上げた。


「え、ナナさん、王子と知り合いだったの?」

「知り合いも何もアイトさん……」


 ナナさんは王子に指を突きつける。


「コイツこそが第一の魔神イースですよ」




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