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27話 アイトさん、照れてしまいます!

「まったく、アイトさんを襲おうなんて、とんだ愚兎ですね!」


 ナナさんが腰に両手を当てて言う。

 百年王が吹き飛ばされた先は、雪が煙のように舞っている。


「怪我がないのは何よりですがアイトさん、どうしてこんなところにいたんですか?」

「あぁ、それはーーってあれ?」


 そういえば、女吸血鬼の姿が見えない。

 ナナさんたちが来た隙に洞窟まで避難したのだろうか?


 僕はナナさんたちにこれまでの経緯を話した。


「……なるほど、つまりその亜人たちを全員ぶっ殺せばいいわけですね!」

「いや、ダメだよ!」


 話したらこうなる事を予想してたけどね。


「え、ダメなのー?」


 なぜかミミまで皆殺し案に賛成だったらしい。

 この2人、全然タイプが違うと思っていたけれど、意外と似ているのかも……


「彼ら、僕のことはできるだけ傷つけたくないって言ってたんだ。そりゃ、ナナさんたちを封印だなんてとんでもないことだけど。でも、悪人ではないと思う」


 もっと彼らが持っている情報が知りたかった。百年王とは一体何なのか?


「……とか言ってアイトさん、その女吸血鬼が美女だったから庇っているんじゃありませんかぁ!?」

「えっ!?」


 ナナさんがジト目で僕のことを見ている。


「わらわ、浮気は絶対に許しませんわよ!」

「えぇ!? 違うって! 僕はナナさん一筋で……あ」


 一体何を言っているんだ僕は!


「きゃー! アイトさんったら、そんなハッキリ言われたらさすがのわらわも照れてしまいますぅ!」

「アイトーは意外と積極的なのねー」


 モジモジしているナナさんと、何を納得しているのか、しきりに頷いているミミ。


 僕は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっているのを感じた。


「うおおおおおぉぉぉぉ!!!!」


 突然、山の上の方から雄叫びが聞こえた。

 百年王が、半分潰れた顔を抑えながらこちらを睨みつけている。


「あのウサギ、無駄にしぶといですね!」


 百年王は肩に突き刺さった魔剣を引き抜くと、僕らの方に投げつけてきた。


 物凄い速さで迫る魔剣をナナさんは容易くキャッチする。


「わざわざ返してくれるなんてね。礼は言わないけど!」


 それを見た百年王は地団駄を踏むようにその場で何度も跳躍しだした。


「駄々こねてるんですかね?」

「どうなんだろう?」


 その行為を不思議がっていると、雪山全体が再び大きく揺れ出した。

 上の方から大きな雪の塊が転げ落ちてくる。


「げっ! あの畜生、雪崩を起こしやがりました!」


 ナナさんの言う通り、雪崩が僕らの方に迫って来る。


「うわぁ、めんどくさー」


 ナナさんがうんざりした様子で首を振る。

 えーと、緊迫感があるのは僕だけっぽい?


「じゃあ、ここはミミにお任せー」


 ちびっ子魔神がふわふわと浮かび上がる。


「え、ミミさん大丈夫なの?」

「うん、お友達にお願いするー」


 ミミはそう言うと空に手を翳す。

 光の輪が大きく広がり、そこからなんと巨大なドラゴンが姿を現した!


「これがお友達!?」

「そだよー? やっちゃえ!」


 ミミが雪崩と、その向こう側にいる百年王を指差す。


 ドラゴンは大きく吠えると、雪崩に向かって炎を吐き出した。

 途端に辺り一面が蒸気に覆われる。


「ぎゃああああ!!」


 蒸気の向こう側から百年王の断末魔の叫びが聴こえた。


「おー、丸焼きー」


 ミミが無邪気に言う。

 僕はミミを怒らせないことを心に決めた。


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