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17話 アイトさん、気にせず登りきりましょう!

 翌日。

 僕らは古代樹を登り始めた。

 山脈の尾根のような大樹の根をキャンピングカーが走り抜ける。


「す、すごいね。こんなところまで走ることができるなんて」

「特別性ですからね。こんなところもへっちゃらですよ!」


 ナナさんは胸を張って言った。


「まぁ、あの幹からは流石に無理ですけどね」


 彼女は前方を指差して言った。

 その先には、巨大な壁のように広く大きい古代樹の幹が鎮座していた。

 幹は遥か上空まで伸びており、厚く暗い雲を突き抜けている。


 いよいよ古代樹に登れるんだ!


 ◆


 幹の側に到着した。

 幹には螺旋状に階段が設置してある。これで樹の頂上まで登ることができるらしい。


「さて、ここからは……徒歩ですか?」


 ナナさんは恐る恐るといった様子で尋ねてきた。


「うん、じっくりと見て回りたくてさ。ダメかな?」


 確かに、この樹を登っていくのはもはや登山だろう。

 だけど、僕はこの樹を歩いて登ってみたかった。


「いえ、そんなことはないですよ。必要な道具はボックスディメンションで取り出せますからね」


 そう言うとナナさんは頭上の幹を見上げた。


「それにしても、頭にくるぐらい大きいですねー。いっそ蹴り倒したくなりますわ……あ、あは、もちらん冗談ですけど!」


 慌ててそう言うナナさんだけど、彼女ならホントにやりかねないなと思う。


 ◆


 僕らは階段を登り出した。

 そこまで急じゃないので序盤は平気だった。

 しかし、上に上に行くにつれてキツくなってきた。


「アイトさーん、ちょっとあそこで休憩しませんかぁ?」


 ナナさんが少し登った先にある広場のような場所を指して言う。


「う、うん。そうだね」


 僕も彼女の提案に賛成した。

 階段を登り切った僕らは、広場のようなところに着いた。

 外側には手摺りが付いていて、展望台のような所だとに思える。

 僕は疲れも忘れて手摺りに駆け寄った。


「うわ、すごいやナナさん。まだ半分くらいなのにこんなに高い!」


 眼下には昨日立ち寄った廃墟の街が広がっている。

 それがまるで小さなオモチャに見えてしまうのだから、自分たちがどれだけ登ったのか良くわかる。

 ナナさんが昨日吹き飛ばしてしまったエリアも良く見えた。それは僕が想像していたよりもかなりエグい惨状だった。取り敢えず、気にしないことにする。


「すごいね、ナナさん――」


 そう話かけてみると、彼女はジッと廃墟の街を見下ろしていた。


「ど、どうしたのナナさん?」

「うーん、どうやら面倒な連中が来たみたいですね」

「え!?」


 僕は街に目を凝らしたが、誰も見つけることができなかった。


「どんな人たちかわかる?」


 そう問いかけると、ナナさんはコクリと頷いた。


「小賢しいことに気配を消そうとしていますからね。おそらく、魔術師たちでしょう」


 魔術師……


「この樹にも、きっと来るよね?」

「でしょうね。けど、わらわたちは気にせず登りましょう」

「え、いいの?」


 ナナさんのことだから、面倒を避ける為にさっさと降りてしまうモノと思っていたのに。


「あんな連中のことなんて気にせず登り切りましょう」


 ナナさんはニッコリと笑ってそう言った。

 彼女がそう言ってくれるのなら、僕としてもこの樹を登り切りたい。

 謎の魔術師たちのことは気になるけれどね。


「ただ、どうにも……」


 ナナさんは何かを言いかけたが、途中でやめてしまった。


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