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13話 アイトさん、魔術を使えるようになりたいですか?

 僕はゴーストタウンと化している岸辺の街でクロスボウの練習を行った。


 適当な壁に印を付けて、そこに狙いを定めて放つ。

 最初は変なところに飛んでしまったりしていたけど、今はなんとなくコツを掴めた気がする。


 さて、もう昼頃になるだろう。

 そろそろ戻らないとナナさんを待たせてしまっているかも。


 僕は街からキャンピングカーの所まで走って戻った。

 ちょうどナナさんが車から降りてくるところで、僕に気づいた彼女は笑顔で手を振ってきた。


「アイトさん、お昼にしましょう!」


 僕はキャンピングカーの中に入り、そして驚いた。


「部屋が広くなってる!」


 キッチンとテーブル席でほぼ埋まっていたスペースが明らかに広くなっている。さらに絨毯が敷かれ、大きなソファが追加されている。


 変わっているのはそこだけではない。扉がもう1つ増えていた。


「これはなんの扉?」

「開けてみてくださいっ」


 僕は彼女の言うとおり新しくできた扉を開いてみた。

 その先の空間には池が広がっている。部屋の中に池があるっ!


「ナナさん、部屋の中に池がっ!」

「正確に言えば屋内プールですね。水妖精の財宝が手に入ったのである程度お金に余裕ができたんです」


 屋内プール?


「まぁ、手軽に泳いだり水遊びする為の人口の池と思っていただければ良いです。本当は別の所をもっと改造したかったのですが……」


 誰もいないと思っていたプールから突然半透明な女性たちが飛び出してきた。ウンディーネたちだった。

 変わった環境にはしゃいでいるようだ。


「こいつらも一緒に連れて行く必要がありますからね。ちゃんと宣伝してもらう為にも不本意ですが、良い環境を整える必要があったのです」


 ただし、とナナさんはウンディーネたちを睨み付ける。


「街に着くまでの間この屋内プールから一歩でも出たらモンスターのエサにしてやりますがね」


 ◆


 キャンピングカーは既に街に向けて発進している。


 僕らはテーブル席に腰かけて昼食をとった。

 今回の料理は魚のフライをパンで挟んだモノだった。


「さっきnanazonで見た古代魚とやらを使ってみましたっ」


 食べてみると結構肉厚で歯応えがある。


「うん、とても美味しいよ」

「それは良かったです!」


 僕は改めて室内を見回した。


「あのさ、この部屋の広さといい、さっきの屋内プールといい、外から見たキャンピングカーの大きさとは明らかに違うと思うんだけど」


 それも僕がクロスボウの練習をしている間に終わっているのもすごいと思う。


「あぁ、それはですね、簡単に言うとこのキャンピングカーの中は別空間になっているのです」


 別空間?


「だから広くしようと思えばどこまででも広くできますよ。ここを大豪邸にだってできるんです……お金さえあれば」


 うっ、最後の一言はかなり切実だったぞ。

 しかし、逆に言えばある程度のお金があればどんな風にでも改造できるんだ。


「すごいね、これは魔術なの?」

「そうです」

「いいなぁ、魔術」


 僕も魔術を使いこなしてみたいけど、才能がないからな。

 ふとナナさんが僕のことをジッと見ていることに気づいた。


「どうしたのナナさん?」

「アイトさんは魔術を使いこなせるようになりたいですか?」

「そりゃもちろん」


 なんでそんなことを聞くのだろう?

 さすがに才能がない者を魔術師することはナナさんとはいえできないはず。

 そもそもこの世界で魔術を使える人間はそう多くない。希少な才能なのだから。ところが、


「アイトさんも魔術師になることはできますよ」

「えぇホントに!?」

「ホントですっ」


 ナナさんは僕の体を指し示す。


「人の体には誰しも魔力の回路のようなモノを持っているんです。ただ、それを開くのが難しいだけで、それさえ開ければ魔術を使えるようになるんです」


 魔力の回路なんて聞いたこともない。

 それさえ開ければ誰でも魔術師なれるだなんて、信じられない。


「でも、その回路を開くのがとても難しいんだよね?」


 きっとそのハードルはすごく高いのだろう。

 ナナさんもそうだと頷いている。


「ですが、アイトさんは既に魔力回路の導通に一歩踏み込んでいるんですよ?」

「え、そうなの?」


 彼女は再び頷いた。


「ナナビタン7は回路導通を促す作用があるんです」


 あの栄養ドリンクにそんな効能があったなんて!?

 確かに普通の飲み物とは違っていたけど。


「さらに言うと、わらわがお風呂場でしてあげたマッサージも回路の活性化に効果的なんですよ」


 えぇ、あの卑猥なマッサージがっ!?


「アイトさんならきっと魔術に興味を持つだろうと思っていたんです!」


 それは嬉しいけど、あれ?

 なぜか僕はナナさんによっていつの間にかソファに座らされていた。


「さぁアイトさん、魔術を身につける為に今からマッサージしましょうね」


 え、あのマッサージを今!?


「い、いや今はいいかな?」

「いいえ、善は急げです!」


 結局街の着くまでの間、ナナさんに好き放題マッサージされた。







 

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