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タイトル未定  作者: 氷佐藤
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窓の外。

白くて灰色の空からは周りの光を散乱させながら水滴が落ちてくる。

都会、そこは人がいつもあわただしく何かにとりつかれたかのようにスーツを着てセッセと歩く群れの町。

その中にぽつり。その女の人はそこにいた。

交差点の真ん中ここの信号は長い。それを知ってか知らずかその女の人は薄着で傘を差し傘越しに空を見ている。

傘をさしているはずなのにその人の髪は明らかに濡れてきれいな黒髪が潤っているのがわかる。

思わず手に持っていた流行りのスマートフォンのカメラ機能でその風景をデジタルのデータとしてストレージに残した。


あれから数日。

未だにあの女の人のことが頭から離れない。ふと何か考えようとするとあの情景が頭に蘇ってまるで私に何かを訴えかけてきているようだ。

そんな変な予兆めいたものを感じながら私は喫茶店のバイトをこなしている。

バイトの休憩時間。

午前から入ると大体店長が2時くらいには一旦休憩していいよと言って紅茶とケーキを出してくれる。

一つ年上の先輩と一緒におしゃべりしながらゆっくりするその時間は不思議と幸せなのだ。

ただいつも最初に決まった会話があるのは想像に難しくないだろう。

「3日に一回はケーキ食べてグダグダしてるよね。最近の私たち。ふとっちゃわないか心配だわ。」

「まさか、そんなにスタイルよくて最早嫌みの域ですよ先輩」

言葉の通りで本当にスラっと背が高く日本人にありがちな胴長短足はどこへ行ってしまったのかと思うくらい足も長い。

しかも顔も性格もいいもんだときたら私は何も言えないのである。まったくもってずるい。


バイト終わり。

またあの日のように雨が降り出した。

けれども今日はあの日と違って灰色の雲から所々光がさしている。

雨自体もそこまで強いものではなく疲れた体には少し心地いいくらいだった。

あの日の交差点。

バイト先から家までに必ず通る交差点。人通りが多いためにここの信号は長い。

交差点の前までやってきたとき信号はまだ赤だった。

人が通るときの時間も長いがそれに比例して車の時も長い信号。

まだ赤、赤。

私の目には赤に見えるけれどもふと横を見るとあの日のあの女の人が横をすり抜けるようにして道路に飛び出した。

右側からは所謂三トントラックのようなものが車側の信号は青なので平然と向かってきている。

咄嗟だった。何を思ったかもわからない。

その女の人の手を取り引っ張ると同時に反動で私の体は道路側へ・・・・


耳に最後に入ってきたのは誰か女の人の悲鳴だった。



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