厨二病による創世記
―ゲンソウ―
夏が来た。暑かったので服を脱ぎ、はだかになって街に出た。
すると、紺色の服に身をつつんだ男が私を見て言った。
「何をしているんだ君は」
「街を歩いているのだ」
「君は、はだかではないか」
なに。
「私がはだかであることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から取って食べたのか」
「は?」
紺色の服の男はいやそうな顔をして、変な目で私を見つめた。
そうか、思い出した。
「ああ、そういえば。そうだ、ここはエデンではなかったのだった。人々は我々のように善悪を知る者となったのであった」
やがて、5時を示す鐘が鳴り響いた。
「こんな所にいてはいけない、神の国に帰らねば」
走り出そうとした私の手を紺色の服の男はつかんだ。
「な、何をする!」
「ちょっとついてきてもらえるかな」
紺色の服の男は白い小屋に私を入れると服を着せた。
やがて、小屋に入ってきた四十才くらいのねずみ色の服をきた男は私をしかりとばした。
―ゲンジツ―
俺は警察官。今はこの街の交番勤務だが、いずれ事件を捜査するような刑事になりたいと思っている。
ある日、若い男の人が交番に走ってきた。
「大変です」
「どうしましたか」
「女の子が裸で歩いているんです」
おいおい、昼間から露出狂かよ。面倒くさいが、止めなければならない。俺は自転車を走らせて現場へと向かった。
そして、歩道の中央をづかづかと進む少女を見つけた。
「あいつか、本当にすっぱだかだな」
自転車を止めて、少女の所に走った。
「何をしているんだ君は」
「街を歩いているのだ」
「君は裸じゃないか」
その時少女の目が光った。まるで、この時を待っていたかのようだった
「私がはだかであることを誰が告げたのか。取って……」
少女は真面目な顔で変なことを言い出した。
「は?」
少女は少し間をおくと、また話し始めた。
「ああ、そういえば。そうだ、ここはエデンでは……」
エデン?善悪?なんだこいつ。あれか?厨二病なのか?困った奴もいたものだな。
やがて、五時の鐘が鳴った。
「こんな所にいてはいけない。神の国に帰らねば」
おっとそうはさせるか。そいつの腕をおさえてやる。
「な、何をする!」
「ちょっとついてきてもらえるかな」
少女を交番に入れると服を着せた。
しばらくすると、彼女を知っているおばさんが現れた。
親の電話番号を聞くと、すぐに親を呼んだ。
やがて、やってきた彼女の父親が、少女をしかりとばした。




