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そのはちじゅうきゅう ~寄道。一方的なデート 6 ~
色鮮やかなサラダに小振りのサンドイッチ、カットされたフルーツ。それらをゆっくりと味わいながら食事をする彼女。
彼は食事をする彼女を見て嬉しそうにしている。時折、食べカスを口元に付ける彼女の口元に指を伸ばしそうになり、彼ははっとして伸ばしかけた手を下ろす。
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まだ・・・触れられない―――
今はまだ―――
貴女が私のトコロに堕ちてくるまでは
早く
私の隣に堕ちてきてくださいね、お嬢様
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彼の心情など、彼女には解らない。彼女は食事を続け、食べ終わると一息吐いた。運ばれてきた食後のハーブティーを口に含み香りと味を楽しんでいる。彼女の周りだけゆっくりと時間が流れているようだ。
「美味しかった。ご馳走様でした」
そう言って彼女は伝票を手に席を離れた。会計を済ませ、今度こそ帰路へ着く。彼は彼女に『虫』が付かないように辺りに気を配りつつ、彼女が迷子にならないようにさり気無く正しい道に進めるように誘導していく。
彼女は無事にホームに辿り着くとタイミング良く滑り込んできた電車に乗り込み、仕事場への最寄り駅を後にした。




