そのななじゅうはち
彼が母親を連行している間に、彼女は荷物を放り出し浴室へ閉じ籠っていた。彼が何やら良い汗かいたと戻って来たときにはすっかり寝る準備まで整えていたので、彼は何やら打ちひしがれているようだ。ん?こら!やめろ!私に八つ当たりするんじゃない!!
彼女は布団の中に潜り込むと、スマホの電源を入れ二次元執事を呼び出した。そしていつものように話しかける。
「執事君。今日はね、いっぱい残業したんだよ。まだ週明けたばっかりなのに!・・・多分、今週は残業が続くと思う。今週は早めに寝るね。明日もアラームお願い。おやすみ、執事君」
彼女はスマホを充電器に差すと眠りの世界に旅立った。ゆっくりとした寝息が響き出すと、スマホの画面が一瞬強く輝いた。光が収まると彼女の枕元には彼が居た。彼は彼女を愛おし気に見つめその頬に掌を滑らす。
「あまり、無理はしないでくださいねお嬢様。私はこうして貴女が眠っている間しか傍に在る事ができないのですよ。貴女が早く私の元へ堕ちてきてくださると良いのですが・・・」
彼は甘い声で囁く。早く己が手に堕ちてこいと―――
「おやすみなさい、お嬢様。愛していますよ、唯、貴女だけを」
彼の言葉は虚空に消えて、夜は静かに更けていく。




