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そのろくじゅうさん ~彼女の休日 6 ~
ふと、彼は彼女の視線が己に向いているとに気が付いた。いつもなら決して交わることの無い視線が交差する。彼女の瞳が彼の顔を射貫く。
彼は驚き、目を見開いた。何故、と。
2人が過ごす時間軸は重なっても、存在する世界は相容れない。無理矢理捩じ込む事は出来ても、長くは留まれない。そして人間である彼女にはそもそも感知する事すら出来ない。それはどうしようもないのだ。しかし、それがどうだろう。一瞬だけ世界が重なった。彼女は彼の姿を視た。それは紛れもない事実。ただ2人が気が付かなかった、それだけである。
彼女の休日は不思議な体験と共に幕を開けた。




