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そのろくじゅうに ~彼女の休日 5 ~
揺らいで消えた人影は、一瞬の幻かそれとも神の悪戯か。彼女にはわからない。しかし、今一瞬だけ視えたその人が、彼女の心に浮かんでは消える『彼』に思えて、彼女は動揺した。
彼は彼女の動揺に気付かない。自分が彼女に視える筈などないのだと理解しているからである。一瞬だけだろうと、彼女に姿を視られたとは思いもよらないのだ。
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どうして?
どうしてあなたが此処に居るの?
どうしてあの人の姿が見えたの?
私はあなたに心を奪われてしまったとでも言うの?
居ない筈のあなたの姿を幻視してしまうほど?
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彼女は一瞬にして沢山の疑問を抱えてしまったのだった。そして彼は、ようやく彼女の顔が少し強ばっているのに気が付いた。しかしその理由は思い浮かばないのであった。
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次話へ続きます。
再びごめんなさい。




