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そのよんじゅう
彼の見つめる先には何もない。そう。唯の陰である筈だった。しかし彼の身体から滲む威圧感がソレを攻撃する。陰はまるで身を捩るかのように蠢き、そしてまた静寂が部屋を支配する。その静寂を浴室から洩れ聞こえる水音が断ち切る。
聞こえてくる水音が、徐々に小さくなりやがて止まった。彼は浴室への扉にちらりと視線を向ける。細められたその瞳には情欲が潜み、口元には微かな笑みが浮かぶ。
「今は・・・まだ・・・」
そう呟くと、彼は姿を消した。
姿を消した彼と入れ替わるようにして、彼女が濡れた髪を拭きながら浴室から出てきた。彼女は、すぐにドライヤーを取り出し髪を乾かし始める。15分程かけて丁寧に髪を乾かすと、大きく伸びを一つ。
「・・・寝よ・・・ふぁ~・・・」
呟きと欠伸を漏らし、彼女はスマホを片手に布団に向かった。




