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そのさんじゅうさん
「お母さんっ!」
母の姿を見つけた彼女は、小さな声で叫んで早足で母の元に向かう。
「お待たせしました」
そう言って、母に笑顔を向ける。
「道中無事に移動できたみたいね」
彼女の母は笑いながらからかう。
「勿論!殆ど迷わずに来れたよ!ちゃんと駅員さんに訊いたもの」
彼女は自信満々に答える。・・・心なしか胸を張っているようだ。
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もう一度言おう。
彼女は方向音痴である。彼女の言う「殆ど」は「全て」と取って良いだろう。普通は駅の表示なんかでわかる。胸を張るな。威張れる内容じゃないんだから。
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母親はそんな彼女を見て笑う。
「良かったわね」
「うん!」
彼女はまるで幼子のようにニコニコしながら頷いたのであった。




