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そのにじゅうなな
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なぜ彼女はまだ暗い時間に外出したのか。もう少し時間を遡らなければいけないようだ。もう数日時間を遡ってみよう。
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それは2週間前の土曜日にまで遡る。
チクタクと時を刻む時計の針の音が響く部屋で、突如明るい音楽が鳴り響く。音の発生源、それは彼女のスマホだった。そう。着信音である。ディスプレイに表示された名前は母親。
「?」
普段から友人や家族と連絡を取り合わない彼女は、頭に『?マーク』を浮かべる。普段なら電話ではなくメールで連絡を取り合うのに、そう思いながら彼女は電話に出た。
「もしもし?電話なんて珍しいね。どうしたの、お母さん」
彼女の表情筋は死滅しているのではないか、そう思ってしまう程感情表現の乏しい顔。しかし、それに反してその声音には喜びが溢れている。




