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そのにじゅういち
穏やかな寝息を繰り返す彼女を見つめたまま、彼は一度は下した手を再びゆっくりと持ち上げた。そのままそっと彼女の頬に触れる。彼女の眠りを妨げぬように、そっと、指の腹で頬をなぞった。
「ん・・・」
その微かな刺激さえも彼女は敏感に感じ取り小さく声を漏らす。しかし、目覚めることなくその指先に小さく擦り寄った。彼女の、その無意識の動きに、彼はとても幸せそうに破顔する。
「愛しています、お嬢様。早く私だけを必要としてください。私だけを見てください。誰よりも、何よりも、貴女を幸せにしますから・・・」
眠る彼女に、彼は想いを告げる。逆に言えば、彼は彼女が眠っている間しか想いを告げることができないということ。彼は、彼女の瞳を見つめ想いを告げる日を夢見るのだ。
夜も更ける頃、彼は空気に溶けるようにしてその姿を消したのであった。




