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そのひゃく
彼女の兄は、今までに感じた事の無い不安に駆られていた。胸騒ぎがするのだ。何か自分にとって大切なものが喪われていくような、そんな喪失感が襲ってくるのだ。
そして。
思い至ってしまった。自身の妹が危険な状況に陥っているのではないか、と。
家族の中で彼女の兄だけが『虫の知らせ』に敏感であった。故に、独り離れて暮らす直ぐ下の妹が命の危険に曝されて居るのではないかと気付いた。
彼女の兄が家に戻ると、既に家族が揃っていた。不安に駆られているような、戸惑っているような、そんな困惑した表情で。
「お姉ちゃんが、駅で刺されて病院に搬送されたって。まだ意識が戻ってないって•••」
一番下の妹が、そう告げた。




