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そのじゅう
彼女の目の前に現れたその人は、ぶつかった事には触れず唯彼女の後ろに視線を向けた。そして何も言わずに怯えた顔の彼女を自身の後ろへと隠した。
バタバタと響く耳障りな足音。次いで現れた男。男は彼を見ると忌々しいとでも言うかのように舌打ちを一つ。そしてそのまま彼を睨み付け去って行った。
「もう大丈夫ですよ」
彼は背に隠した彼女に向けて言葉を紡ぐ。
「このような遅い時間に人気のない道を女性一人で出歩くのは危険ですよ」
そう、彼は続ける。
「せめて、人の多い明るい道まで送ります」
彼女は断ろうと口を開くも、言葉を発する前に彼に畳みかけられる。
「まだ近くにあの男が居るかもしれませんよ?それに、次は周りに誰も居ないかもしれない」
彼女は迷った末にゆっくりと頷いた。
「よろしく、お願いします」
そのじゅういち、に続く!




