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第三章

 イザメントは目覚めた。夜だった。彼が身を起こすと、隣で寝ていたまひるもパッと目を開いた。訓練されているのか、物音に敏感なのか、あるいは信仰心の生起を察知する嗅覚が発達しているのか、いずれにしても優れたタイミングだった。

「刻ですか」彼女は訊いた。

「刻である」木下の時よりも幾分低くなった声で彼は答えた。

 二人は身支度を整えると、すぐに冬の空に躍り出た。空気は冷めて星々は針に穿たれた穴のように空虚に明かりを漏らしていた。イザメントは隣を歩くまひるに気になったことを訊ねた。

「しかしよく見知らぬ者の隣で、眠ることができたな。我が暴虐の民であれば、汝はただでは済まなかっただろう」

「分かるのです、私にも」彼女は胸を張った。「銀河の音律を奏でる者は圧倒的に違うのですよ、見分けなど容易いことです」

「そうか」

「しかし」まひるは乾燥した空気に目をパチパチし、苦しげに心の内を吐露した。「仮に悪しき者に攫われようと、私にはその覚悟だってできているのです。この身が猛獣の牙に晒されようと、信じる心は奪えません」

 場所は町外れの小学校だった。

 閉ざされた門をイザメントとまひるは乗り越え、校庭を横切って歩いた。遊具の類は闇に塗れ、使用者の不在すら感じさせない。真ん中には駒子が掻き集めてきた落葉を中心に、その周りに幾何学的な図形を長い枝で引っ掻いているところだった。駒子は後ろ向きに歩いていた足を止め、ひとつのものを共に信仰する間柄特有の親しげな視線を上げた。

「やあ、やってきたわね。六芒星に安らうしもべよ……ってあれ?」駒子は途中で驚きの声を上げた。「なんでアンタがここにいるのよ」

 枝で指されたまひるはにこにこと微笑んで、「この方の申し出で、今回の秘儀に参戦することと相成りました……ってあれ? 駒子さん……?」

 二人の間に関係があるのを知って、イザメントも意外そうな顔をした。

「なんだ、汝らは顔馴染みだったか。いらぬ心配をした」

「ちょっとどういうつもりなの、あなたは」駒子は彼に詰問した。彼は彼女の頬に動揺の線が走っているのを見て、少し不思議に感じた。

「典礼に身分の差異は関係あるのか? 別に問題ないと思ったが」

「ねえ、あなたはいつから神に仕える身になったか覚えてる?」

「それは……」

「まあ、いいわ」駒子は白い息を長く吐くと、肩を落として線を引く作業に入った。

 典礼は着々と進行されていった。校庭の柔らかな砂の上に、三人を囲む大きな六芒星が描かれ、その中心のスペースには敷地沿いの桜や銀杏の並木から集積された枯葉がこんもりと盛られている。駒子はその前に立ち、通例をもってして真言を唱え始めた。イザメントとまひるはそれを静かに見守っていた。

「狂わしき星よ。太陽の祈りを、月の生命を、地水の脈動をその一身に受けたまい、閃き出でて、数多の罪過を我らにあからしめたまえ。そして密儀の刹那を、灌頂される一滴を久しく鳴らせ。さすれば問いなる門戸はひらかれん」無人の校舎の空気を吸い込んで、落葉たちは青き日の墓標のように何ひとつ語らなかった。駒子がその中に燐寸を擦って落とすと、虚ろさは内側から破裂して燃え上がり、灰の粉を夜空へと巻き上げた。すると闇に溶けていた六芒星が光輝を受けて浮き出でて、その内在的超越論性を顕わにした。六芒星の形象は天球の星座を操る装置のごとく在った。渺茫たる天の神秘は此処から成り、その本性を各所に変ずる。人々が見るものは偽りであり、我々が直面するのは真実在である。炎は区分けを完遂するためだ。目に見え、心に働きかけてこそ、本質は本質たりうるのである。

「約束の地へ、定められた刻へ、いざないのしるべを立て、暮らしの道を塗りたまえ。充溢の日のあるところ、過ぎ去りし日も同じくしてある」

 駒子が話し終えると火は途切れ、辺りは静寂に包まれた。儀式の境界を見定め、彼と彼女はキスをした。

「さて」駒子は一仕事終えた表情をすると、手についた煤を払った。「護摩焚き完了、神の国は到来したわ」

 イザメントは煙草を咥え、まひるに向き直った。彼はまひるが彼らの典礼に仲間入りすれば聖なる境位が一段上がると考えていた。「それで、どうだったかな」

「な、なにがです……?」好意的な彼の視線に反し、まひるは戸惑っているようだった。

 まひるの表情にはそれまで、ふくよかな山嶺の麓に流れる鳥たちの囀りのように飛び交っていた笑顔が隠され、干上がりそうな河で必死に居場所を探す魚たちのような困惑さが滲み出ていた。

「何がってこの典礼だよ。素晴らしいだろう? 君も我らに賛同して互いに魂を研鑽し合おうじゃないか」

「ちょっと何言ってんのイザメント!」駒子は彼をキッと睨んだ。「こんなひよっ子、ダメに決まってるじゃない。誰も彼も良いってわけじゃないのよ。私たちは足を引っ張り合ってる場合じゃない。分かってる? 私たちは選ばれし民なのよ」

 イザメントは彼女の感情的な物言いに珍しさを感じながら、それに応えた。

「まあ素質の有る無しは追い追いでも良いじゃないか。それよりまひる、君は何を感じた? この空気、この微粒子の旋律に」

「うーん」彼女は一考して言った。

「寒いです」

「なるほど、さっきの神聖なる典礼は鳥肌が立つほど見物であったか」

「いえ、さっきの焚き火のことではないのですが……」

「護摩焚きよ!」駒子が怒鳴った。

「お芋を焼いていたわけではないことは薄々感じてはいました」

「なるほど、さっきの神聖なる典礼は乏しき者に恵みを与える風に見えたわけだな」

「そういうわけでも――」

「ないでしょう!」まひるの言葉尻を捉えて駒子が叫んだ。

 北風が地表を撫で、砂の粒を揺らす。イザメントはひとつ軽い咳をした。

「とにかく、残念なことではあるが、まひるは遠大な感銘には到達し得なかったと見える」

「……感銘というか意味が分からないというか」まひるは消え入りそうな声を返した。

「そりゃそうよ!」駒子は高く笑った。「レセプターたる素質が問われているのよ。皺のない脳に記憶は宿らないの」

「で、でもっ」まひるは圧政に反旗を翻すように主張した。「あの焚き火に本当にそのような創造的な意味が含まれていたのでしょうか。オカルトのムック本を嗜んでいるのかもしれませんが、誰かの方途をなぞるだけで胸を張るのは、叡智から遠ざかることのように思います」

「はあ? 私が紛い物だって?」批判された駒子は眉を顰めた。「冗談じゃない。こんなのただの言いがかりの戯言だわ。私は無垢の権化、純粋さの塊よ」

「いえ、それにしては何の力も発現していませんでした。これからの伸び代は否定できませんが、今の段階は発展途上に変わりないでしょう」

「じゃあ、君らの方法ではこれ以上の効果が期待できるって言うんだね?」横で口論を見ていたイザメントが口元をにやつかせながら訊ねた。

「もちろん!」まひるは飛び上がらんばかりに破顔させてそれに応じた。

「神の国があるのですから! それはもう感動と興奮のスペクタクル全浄化ワールドがたちまちにひらけ、強くてニューゲームな世界へアセンションできるようになります。それに私たちは人や物に差別を挟みません。一切衆生悉有仏性なのです!」

 駒子はふふんと鼻を鳴らした。

「それにしても今日のところは解散ね。あなたも好きにやったらいいわ。運命は一度きり、これは不変なことだから」

 そう言い残し、駒子が踵を返そうとするとまひるがその背に声をかけた。

「ところで! 今度もご一緒できるんですよね?」

「どういうこと?」駒子は足を止めて、怪訝そうな声を出した。

「イザメント・ヴァークリさんが言っていました。典礼に参加したら、そのお礼に私たちの宗教の案内も受けてくれると。以前は断られてしまいましたが、今度こそ駒子さんもよろしくお願いしますね」

「何よそれ……」駒子のキツい視線を受け、イザメントは口を開いた。

「いや、儀式を見たら一瞬でまひるもうちのメンバーになると思ってたんだが、読みが浅かったな。うまくいくと思って、適当な約束を結んでしまった」

「それならアンタ一人で行けばいいでしょ、なんで私を巻き込むのよ」

 口を尖らせる駒子の手を取ってまひるはその大きな黒目を間近に差し向けた。

「最初一目見たときから、あなたには悪霊が憑いていると思っていました。でも大丈夫、私たちは全てを迎え受け入れます。だから心配しないで、絶対いらっしゃってね」

「いや、だから私は……」

「大丈夫です、心を曇らせないで! 視界の向こうに、努力の向こうに、真似事の向こうにちゃんと神はいらっしゃいます。私たちは決して同行二人の精神を忘れません。そして共に与えられた仕事を成し遂げましょう!」

 まひるの熱気に根負けしたのか、やがて駒子は白旗を挙げるという風に手を振って、喜ぶまひるの影からイザメントに必殺の視線を投げた。彼は寸でのところで目を逸らしてそれをかわした。

 しかし内面では、彼は笑みを浮かべていた。駒子はもはや彼と馴染みのある駒子ではなくなっていた。幻覚の美酒に酔う彼女ではなく、戸惑いたじろぐ彼女であった。彼は彼女が倦み始めていることに気づいていたのだ。だからそこに揺さぶりをかける必要があった。調味料を一隅に固まらせず、全体に行き渡らせるには、フライパンを回さなければならない。まひるは格好のキープレイヤーとなった。靴紐を締め直すことでまたしっかりと地歩を進ませることができる。いずれは彼自身で駒子の心を動かすことができるようになればいい、それが二人にとっても望ましいことだ、それが彼の辿り着いた結論だった。


 日曜日の午後二時に木下は駅前のベンチで駒子のことを待っていた。

 冬の空はくぐもって厚く、よく見かける弾き語りの女性二人もそれに合わせて感情を失くした少年のことを唄っていた。足を止める人はいない。

 白木蒼からの憂鬱から彼を引き離してくれるのは、楠駒子との経験に他ならなかった。彼女がつくりだす幻想的な空気の甘美さ、唇の温もりが彼の心で大事な部分を占めるものだった。しかしそこには感情が欠けていた。不安定な偶発性のもたらす瞬発力がなかったのだ。ほとんど知ることはなかったが、おそらく日中の生活でも駒子は内向的な性格で通しているのだろう、肌の近くに透明な壁を築いて自分の声を反響させているに違いない、と木下は思っていた。そして彼はその壁に少しでもいいから穴を穿ちたかった。風穴を開け、駒子の息吹を感じたいと欲していたのだ。壁を前に同じ側に彼と彼女は属していたが、壁の存在が全てを台無しにしていた。壁がある限り、彼と彼女の関係は偽りに過ぎず、鏡に封じ込められた居場所でしかない。そこには偶然性を介在させる必要があった。そのための投石としてのまひるとの接触であった。その新たな関係は水脈のように駒子との経験を潤してくれると彼には思われたのだ。

 弾き語りの二人が、彼が来てから三曲目になるART-SCHOOLの「POOL」を演奏し終わった頃に駒子がやってきた。夜に見慣れた制服姿ではなく、灰色のパーカーに青色のロングスカートという大人しげな私服に身を包んでいた。

「ねえ、どういうつもり?」開口一番彼女は言った。

「どうって?」立ち上がって彼は訊いた。

「何であんな取引をしたの? 大体あんな子、典礼に呼ばなくたっていいじゃない。私たちのセイクリッドサークルはクローズドゆえにセイクリッドなのよ。キリストをダメにしたのはパウロだってニーチェも言ってたじゃない」

 まひるの指示した場所へ歩き出しながら、駒子の反応ももっともだと彼は思う。誰しも偶然性というのは恐ろしく感じられるものだからだ。

「何をムキになってるんだ、ただの足がかりだよ。僕たちはまた新たな触発を受けて更なる高みを目指していく。他に意味なんてないさ」

「本当でしょうね」彼女は訝しげに言った。「私を騙したらダメよ。絶対の信頼が光の充溢の条件なんだから」

「大丈夫、分かってるさ」

 彼は心の中でも自らに言い聞かせるように頷いた。大丈夫、分かってる、なんだって分かってるんだ、間違うことなんてないさ。じっと前を向いた彼に駒子は訊ねた。

「あなたが一番大切にしていたものはなに? 私たちの内側の神への誓いの刻字は埃で霞んでやしないでしょうね」

「当然だよ、僕たちの向かう場所はそこにある。いつだってある。いつから始まったかは忘れても、目指すところは常に見ているつもりさ」

 彼がそう言うと駒子は少し寂しそうな表情をして、それ以上は語らなかった。

 約束のコンビニに着くと、まひるはその前でパンフレットを配っていた。紙面に印刷された十字架に架けられた受難のキリストが安っぽい晴天に釘付けられている。まひるは二人に気づくとパンフレットを手にかけたトートバッグにしまった。

「じゃあ行きましょうか。さあ、ご案内いたします」

 まひるは二人の間に立ち入り、子供のように両者の手を取ったまま、駅から二十分くらいの目的地に二人を導いた。道中、木下は不安にもなっていたがまひるの物言いに一々駒子が噛みつき、そのおかげでムードは幾分和らいだものとなった。木下は初め、まひるの足取りから察するに、以前見学に訪れた教会を想像した。あの教会の雰囲気の静謐で充ち心地よかったことを思い起こし、春の芽のごとく期待に胸膨らます彼であったが、まひるの足はその区画を無視して通り過ぎ、彼は人知れず肩を落とした。

 三人が着いたのは、駐車場が目につく住宅地の一角で、使い捨てられたような古びた町内会館だった。周りを囲むフェンスは赤錆にやられ、ポーチの柱はあちこちで鉄骨が剥き出しになっている。木下と駒子はその二階建ての建物から漂う荒廃した空気に飲まれ、しばし何も考えることができなかった。通り沿いに置かれた看板の、カラフルなゴシック体の文字列が、そこでじゃれあう昭和チックな男の子と女の子が、不気味さを一層際立たせていた。その朽ちそうな看板には、色とりどりの不揃いな文字で「天界シェアハウス」と、おそらくまひるの帰る場所であろう住処の名前が示されていた。

 罅の入った蛍光灯の元、まひるが玄関のドアノブを取った。

「さあ、どうぞ」

「お、お邪魔しまーす……」

 木下と駒子がおそるおそる入ると、シャンシャンと鎖の音を響かせながら毛のふさふさしたゴールデンレトリ―バーが駆け寄ってきた。まひるはそれを抱きかかえると頭を撫でた。

「よしよし朔也、ただいま」

 まひるは棚から噛み痕のついたゴムボールを掴むと、部屋の向こうに低く放った。朔也と呼ばれた犬は身を翻すと、切れた鎖を引き摺りながら息を上げてそれを追って走り去った。

 三人は三和土に靴を脱ぐと、床に落ちた紙切れや雑誌や絵本の類を避けながら、居間に進んだ。外観は町内会館だったが、中を見ると昔に住宅風に改装されたようだった。廊下の壁にはところどころ変な凹みや物が擦れた痕跡があって年代を感じさせる。居間は広い間取りになっていて、中心には炬燵が設置され、その周りに二人の男女が腰かけていた。男はボサボサの黒い髪を長く背に垂らしており、女は明るい栗色の髪を短めにボブカットに整えている。居間に入ると、奥にキッチンが窺えた。

「普段の礼拝はここで行なわれるのですが、懺悔室は二階にあります」

 ドアを開けたまま、まひるが説明すると炬燵机に頬をぺたりとつけた男が顔を上げた。

「なんだまひる、客人か。ねえ花実、お茶を汲んで来てよ」

「はいはい」使いを頼まれた女は木下と駒子に会釈を向けるとキッチンに立った。毛玉のついたセーターにジーンズという気を使ってない格好の男に比べ、花実という女性の方は刺繍を施されたタイツと淡いワインレッドのスカート、それに緑色のVネックワンピースと控えめな金色のピアスを合わせていて、いやに対象的だと木下は感じた。

「あの、気を遣わなくても」駒子が言い淀むと、男は手でそれを制した。

「いいんだ。僕も喉が渇いたところだったからね。それでまひる、この人たちは?」

「あ、はい。木下さんと駒子さんです」

「そうか。僕は和希っていうんだ、よろしく。ここでは誰も堅い人はいないからくつろぐといいよ」

 予期しないアットホームな空気に飲まれそうになった木下は訊ねた。

「ここはいったい何なんです? 僕らはまひるさんに神儀を執り行なってると伺ったのですが」

「そうよ」駒子もそれに同調した。「こんなの神への冒涜だわ。私たちの儀式を足蹴にしたのに、これはどういうことなのかしら。コズミックパワーの予兆すらないじゃない」

「まあそう急くなって」和希は宥める口調で言った。「まひるだって何も理由なく他人を蔑ろにはしないさ」

「はい、あとで駒子さんには懺悔室を見てもらうつもりです」

 和希はそれを聞くと納得したような面持になり、花実の運んできたお茶を啜り、木下と駒子にもそれを勧めた。二人はしずしずと炬燵に並んで座り、湯呑を手にした。外でかじかんだ手がじんわり感覚を取り戻していく。

「ごめんね、まひるも強引だから」腰かけた花実が駒子に労いの言葉をかけた。

「はあ」

「でも多分あなたたちをからかったわけじゃないから、その辺は分かってあげてね」

「ちなみにここはどういう場所なんです?」木下が訊ねた。

「神の国へ到るよう人々を導く空間です!」まひるが胸を張ると、和希が補足するようにその後を続けた。

「ここにいる人たちはバラバラな出自を持っているんだ。でも和気藹藹と和やかな生活を送っている。貧しい者こそ天は優しく迎え入れてくれる。僕たちはこの生活を通じて、天におわします神々へ架橋しようとしているんだ。生活が信仰の意義ある第一歩だからね」

「それでシェアハウスですか」木下が言うと、花実が頷いた。

「そう、天は誰にも平等だから。ここには各々のやり残しを消化する信徒が集っているの」

「やり残し……?」と駒子が呟くのと同時に、「だから駒子さんもここで一緒に暮らしましょう!」とまひるが勢いよく駒子の手を取った。駒子はそれを慎重に振りほどくと、疑問を口にした。

「慎ましい信徒であることは分かりましたが、あまり神聖って感じはしないんですね」

「そんなことないさ」和希は寄ってきたゴールデンレトリーバーの頭をくしゃくしゃにしながら言った。犬と戯れているのは様になっていて、まるで兄弟のような愛嬌がそこにはあった。「ここの人たちは不十分ながら心の壁をなくした人たちさ。それは誰もができることだけど、誰もがやることじゃあない。ここでは誰もが宣教者になり、闇をほどく光りを持っている。本当の光というのは闇を追い払うものではなく、受け入れる強さなのだからね」

「それにあとで懺悔室に行くのなら、望むものは見られると思うわ。あそこは私たちですらやすやすと受け入れられるものではないから」花実が思い出したように言うと、和希も首肯した。

「そうだね。……よしよし、なんだ朔也、外で駆け回りたいのか?」和希は近づいてきた犬の頭を撫でると立ち上がった。「よーし、あの希望の丘までレッツらGO! オーケー、気づいたときから競争は始まっている、行くぞ!」

 わんわん! と犬が楽しそうに吠えて、和希はジャンパーを着ると犬を連れて隣の部屋の縁側から外に出ていった。

 お茶のなくなった湯呑を手の中で弄びながら、駒子は誰かれ問わず訊ねた。

「和希さんは普段は何をしている方なんですか?」

「何でもやる人よ」花実が和希の出ていった方を眺めながらそれに答えた。「レジも打てるし、木工もできるし、釣りもするし、塾で子供たちにそろばんを教えてたこともある。朔也の小屋だって彼がつくったのよ」

「それって定職に就いてないってことかしらね」駒子は木下に耳打ちした。

「それで花実さんは?」木下が訊ねた。

「私は今、この店で働いているわ」彼女はテーブル越しにひとつの名刺を寄越し、駒子がそれを受け取り、木下は覗きこんだ。

「え、これって……?」駒子は幾分驚嘆を交えた声を上げた。その名刺には店舗の名前と共にイタリック体でファッションヘルスと綴られていた。

「今は亡くなった父母の遺産でここも成り立っているけれど、なんやかやでお金は必要だからね」

「心が痛むことはありませんか?」駒子はなるべく平静を装って訊ねた。

「ん、何が?」

 花実は何を求められているのか分からないといったキョトンとした表情をした。それはまひるが木下たちの典礼に参加した時に見せた顔を思い起こさせるもので、この家に集う者の見た目は違えどどこか根底で共通した部分というものを感じさせる仕草であった。

「さて、そろそろ駒子さんと木下さんに二階も案内したいと思います」とまひるが立ち上がったので二人も腰を上げた。

 狭くて急な階段を上がると、二階に部屋がいくつか並んでいた。扉はほとんどが開け放たれ、それらの部屋にはベッドが一つか二つ設えてある。そうではなく塞がれた部屋のひとつにまひるは手をかけた。

「あの、もうひとつの部屋は?」木下は扉の閉まったもうひとつの部屋を指差した。

「真吾さんの部屋です」まひるは答えた。「食事以外は部屋でお祈りを捧げる敬虔な人で、この家でも年長に当たる方です」

 懺悔室と呼ばれる部屋は、窓が暗幕で覆われており黴臭い空気がムッと凝っていた。内装はしかし簡素で大きな暗幕の前に祭壇が置かれ、そこには神道を思わせる二つの丸い鏡とそれに供えられた榊、そしてその中心に古びたラジカセが鎮座していた。暗い部屋に鏡とラジカセと榊というのは妙な取り合わせで、扉が閉じると、沈殿した空気と合わさってより不気味な雰囲気が増した気がした。まるでこの世の悪を全て雑多に放り込んで封じ込めたコックリさんの紙面のような箱だと木下は思った。その空気に耐えかねたのか、部屋に入るなり沈黙したまひるに駒子は若干戸惑いの見える声をかけた。

「ねえ、懺悔室って神父に告解をするところでしょ? 私たちは誰に身の内を預ければいいのよ」

「私がその役を受けます」まひるはそっと祭壇の前に正座して、後ろに座ることを促した。

 木下と駒子が正座したことを確認するとまひるは粛々とした口調で言った。それは今まで感じさせたことのない重みを感じさせ、その背に何かが取り憑いたイメージを思わせるものだった。

「静かに目を瞑って、心を落ち着かせてください。今から私たちが執り行なっている儀式のひとつを体感していただきます。その準備としてまずは目に見える煩悩を取り除くことが求められます。今は夜だと思ってください。そして自分の経験した嫌な記憶、忘れ去りたいが忘れ去ることのない傷痕をなぞり、昔に遡ってください。想像して。中学校の時代を、小学校の時代を、幼少時代を、今は薄れた古き良き家族の面影、どうでしたか、どうしたかったですか、今と照らし合わせるのではなく、昔の感覚を思い出してください、その時言いだせなかったこと、言い足りなく思い迷ったこと、ひとりで悲しみに暮れたこと、予想もできなかった太陽のように嬉しいこと、そして寄りかかっていた何でも赦してくれる大洋のような存在を、クラスメイトたちの視線、チョークのにおい、近所の仲の良かった子供、連れていってもらった思い出の場所、ひとつの軌跡の源泉を蘇らせてください、いくつもの思いを、いくつものなくなったかけらを、なくなったわけではない埋もれてしまった涙を、嫌でもどうしようもなくなって自分から遠ざけたこと、受け入れたこと、憧れ、怖れ、希望、孤独、誤魔化す術を覚える前の純粋な自分を、その汚れていない気持ちを……」

 まひるのゆっくりした声の響きは実際に木下と駒子の心を連れ添って、それらに昔の彼らを呼び起こさせた。受け入れられず撥ね退けたかなしさや、今では隠したい同情を以って見たいじめの光景を、親の安らぎがあったことを、悲しみの前の苛立ちを、苛立ちに込められた怒りを、怒りを赦してくれる誰かの慈しみを、大いなる存在を彼らは瞑った眼の中で各々思い起こしていた。

 多くの時間が流れていた気がした。この部屋に時計はなかったし、目は瞑っているからそもそも見ることができない。それにどれだけの時間が過ぎようとも関係ないことも木下も駒子も分かっていた。その時、まひるが動くのが分かった。カチャカチャとラジカセを操作する音がし、そっと彼女は「それでは次にこのテープを聞いていただきます。ここには大いなる神の教えが込められています。それを聞きながら、さっき思い起こした記憶と映し合わせて、各々懺悔をしてください。心の中で構いません、私には伝わってきますから、それで十分なことです」

 彼女が再生ボタンを押すと、カセットテープが回りだし、使いこまれているのだろう、擦れる音と無音の状態が数秒続き、そののちに柔らかな男の声が流れてきた。

「これらのことの後で、神はアブラハムを試された。神が、『アブラハムよ』と呼びかけ、彼が、『はい』と答えると、神は命じられた――」

 それは旧約聖書の「主の山に備えあり」と呼ばれるアブラハムがイサクを捧げる話であった。それは有名な説話だったので、木下も聞いたことはあったのだが、それは上滑りして彼には小学校の頃の光景が呼び起こされていた。それは遠い記憶のように思われたが、気がつくと彼はそこにいる。放課後の校庭の鉄棒の前にいる。ポケットのうちの手には、一枚のアニメ絵のステッカーが触れられていた。それは当時の彼の筆箱に貼られていたのと同じものだった。そして彼のクラスメイトが褒めてくれたものであった。彼は彼女と約束をしたのだ。放課後の鉄棒で。彼はそこでひとり待ちぼうけていた。次々と児童ははしゃぎながら帰宅していく。他のクラスメイトに見つかると恥ずかしいから心持ち木陰に身を預けながら彼は時を過ごした、彼女が姿を見せるまで。時が経つにつれて不安と後悔が身を病ましていく。彼女は何か急な用事に呼ばれたのかもしれない。彼女は親友からの誘いを断れなかったのかもしれない。彼女は僕の言葉を聞き流してただ曖昧に笑っただけかもしれない。それなら仕方ないな、と彼は夕陽の射す足元をじっと見て思う。帰ろう。でも、まだ来てくれるかもしれない、遅れてるだけかもしれない、しかし――彼女は忘れているのかもしれない、そのことを思うと嫌われていることよりも怖くて、黄昏の中、彼はたちまちに醜く溢れ、地面に毀れてしまいそうな孤独を抱えて立つしかなかった。ステッカーは汗で湿り、折り目もついた。

「……神が命じられた場所に着くと、アブラハムはそこに祭壇を築き、薪を並べ、息子イサクを縛って祭壇の薪の上に載せた」

 自分はあの時から変わったのだろうか、もしなにひとつ変わらないままだとしたら、ぬくぬくと時間の迷路に迷ったままだとしたら、それに入り込んだことに気づいていないままだとしたら、僕はどうなるのだろう、僕は道に迷ったまま道を踏み外したことを知らずにいるのではないのだろうか。

「“その子に手を下すな。何もしてはならない。あなたが神を畏れる者であることが、今、分かったからだ。あなたは、自分の独り子である息子すら、わたしにささげることを惜しまなかった”」

 自分は何かを捧げただろうか、その覚悟を持っていただろうか、責任から逃げていただけではないだろうか、そしていまだに何も手にしていないのではないだろうか、それはこれからも変わらないのではないだろうか――。底に沈んでいく、名も知らぬ底へ。誰も見ぬ底へ。そこには珊瑚が怪しく揺らめいていて、砂が軽く浮き立つ水面は見えない海の底だ。海藻もなく、魚もいない。ただどこまでも続く砂と、何かが隠れていそうな珊瑚だけ。僕の息はあぶくとなって上昇し立ち去っていく、ここには何も残らない。手にはステッカーがふやけてぽろぽろと四散していく。音のない地平で僕は息絶えることもできないまま、ただ無限の時間を過ごす。切れ目もなく盲目の経験が僕の前を横切っていく、僕は目を瞑ったままだ。そして次第に記憶を失くしていく、涙を失くしていく、怒りを失くしていく。初めからなかったかのように、原始からこうあったように。僕は石像のようにそこにあるだけの存在に変質していく。飛沫も悲鳴も届かない底で、全てが失われた持続の中で、僕はいる。そこから逃れようとすることも忘れていく。渾然となった風景と光景の間隙に挿し込まれるものが僕を刺し貫く。それは尖った、針のような細魚だ。細魚がいろんな方向から来ては僕を貫いて一直線に突き進んでいく。僕は為されるがままから動くことができない。僕は刺されるしかない、細魚に。それをじっと見ている珊瑚。細魚が喉を裂き、腹を割り、足を粉々にしていく。僕は僕ではなくなっていく、僕は僕以前のものに分解されていく。そしてまた無限の時間が過ぎる。土になった僕に一本の斜光が射し込んでくる。僕はもはや何も思うことはない、感情もない。ただ海水の中に一本の光が見えるだけだ。しかしそれは思いがけない響きとなって僕の元に届く。懐かしく愛おしき言語化されない震えとなって、僕はそれを感受する。それは揺らぎを孕んだひとつの卵のようなものだ。それは僕に囁きかける。僕には随分遅くにそれが聞こえる。それは言う。

「――僕はね、君の、ほんとうのしあわせを願っているんだ」

 僕はね、君の、ほんとうのしあわせを願っているんだ。その少女は言う。少女の影は涙で霞んで判然としない。僕はそれを見、聞くしかない。そして咀嚼する。僕? 君? ほんとうのしあわせ? 何度も咀嚼し、その一瞬の煌めきに触れようとする。しかしそれは僕の意識が到達する頃にはまた遠くに去っている。その影は言表をリフレインする。まるでそれを僕に言い聞かせているように、子供を母親があやすように。僕はね、君の、ほんとうのしあわせをねがっているんだ。僕はね、君の、ほんとうのしあわせを……。

 木下が目を開くと、少し耳鳴りと眩暈がして片手を床につき体重を支えた。背中は冷たい汗で不快に濡れている。まひるは彼と駒子の前でしくしくと泣いていた。創世記のアブラハムとイサクの物語を朗読するテープレコーダーはいつしか途切れ、ノイズが部屋中を侵食し、充たしていた。ノイズには重なって先程の夢心地に聞いた「僕はね、君の、ほんとうのしあわせを願っているんだ」という文言が今や幾重にも折り畳まって被さっている。初めに流れていたのとは別の男の、低い声だ。それは誰かを追いたてるように、まひるの咽ぶ声と混ざり合ってこの空間を包み込んでいる。

 また眩暈がして片手をつこうとするが滑って倒れそうになる木下を、駒子が支えた。彼女は口元を押さえて「なにやってるの!」と彼の耳元で叫んだ。駒子は勢いよく彼を無理やり立たせると、扉のドアを蹴り飛ばす風にして開いた。耐えきれず、木下は廊下に膝を突き、壁に身体を凭れさせた。

「酸素がなくなっているんだわ」駒子が目を擦りながら言った。「……一体なんなのこれは」

 木下は何も口にできず、ただ駒子を見つめながら呆然と海中の重力のなさを手で握っていた。

 二人がふらふらと一階まで辿り着くと、居間にはまだ花実が座っていて、彼らを酷く安心させた。花実は蜜柑の皮を向きながら、訊ねた。

「あ、終わった? さあこっちに来て。休みなさい」

 促されるまま、木下と駒子が炬燵に腰を落ち着けると、花実がお茶を注いだ。木下はまだ自分の感覚を取り戻しかねていた。湯呑を手に取るとその熱さでようやく自らの肌の温度が分かった。彼の身体は自分でも驚くほどに冷え切っていた。

 駒子も状態は同じようで息を整えながら、睨むような眼をして花実に訊ねた。

「あれは、なに?」

「あれが私たちの神儀のひとつ」花実さんは淡々と説明した。木下は鈍っていた脳が次第に通常の働きまで速度を上げていくのが分かった。

「あれが神儀ですって?」駒子は苛立つように唸った。

「そうよ。ああして自分の罪と向き合うの。あなたは目を瞑ってそれからどうした?」

「私は」駒子は思い出しながらそれに答える。「まひるさんの言った通りに昔を回想していたわ。随分昔の、嘘かと思うような記憶とか」

「そうして自分の存在を遡及して自分が受けた傷や逆に自分がつけてきた傷を思い返していくの、そしてそれに生命を与えるのよ。現在の身体にそれを蘇生させるの。それは信仰によって力を増す。信仰とはその遡及の流れに身を浸すことに他ならないわ」

「アブラハムがイサクを捧げるように」

「その通り」花実は頬を緩めた。

 駒子は首を振ると、立ち上がった。木下もつられて立ち上がり、出口へ向かった二人の背に花実が言った。

「ねえ、また来たらいいわ。私たちは来客をいつでも迎え入れるの。それが孤児だったまひるや真吾のみならず、私たちの望みでもあるのだからね」

 駒子は分かったという風な仕草をすると玄関へ歩んだ。

「あの」向かう足を止めて木下は振り返り、炬燵で佇む花実に声をかけた。

「なに?」

「あなたの言う罪ってなんのことですか」

「罪とは自分があるということ」花実は手元の蜜柑を口に放った。


「こんな酷い気分は久し振りだわ!」駒子は唾を吐いて、悪態を吐いた。

 木下は複雑な心境を抱えて言った。外はもう夕暮れている、いつかの景色と同じように。

「どうなんだろう、どちらが正しくてどちらが間違っているのかな」

「そんなの向こうが邪教に決まってる」駒子はすっかり体力を削ぎ落されたようだった。もちろん彼も同様だった。しかし彼は裁断することのできない思いを胸の内に留めていた。

「駒子はなんで神様を信じるんだ?」

「それは」足元の石を蹴って彼女は沈黙した。茜色の雲が段々と空を滑っていき、星がちらほらと姿を見せ始める。遠くで犬の鳴き声が虚しく響いている。彼らは雑踏に近づいている。

「理由なんてない」彼女は決心したように言った。そしてそれを握り直すように言葉を紡いだ。「そう、理由なんてない。けれどあれが違うことは分かる。私が願っているのは、もっとこう……大きくて、掛け替えのない、慈しみに溢れた、光の充溢で……」

 何か形容しがたいものを必死に説明しようとする駒子に木下は訊ねた。

「じゃあ僕の信仰に理由はあると思う?」

 駒子は一瞬彼の頬を見つめ、前方に視線を映してから答えた。

「それはもちろんある」

「それはなに?」

「汝は無明から掬われることを願った、そして全ての輪郭がぼやかされたこの世界から脱却することを。そして――」

 駒子は木下の横顔に指を立てた。彼はいきなりのことに驚いて彼女を見る。駒子は当然のように言った。

「あなたは私が呼んだ時からイザメントなのよ。その他に必要なことなんてない」

 駒子は彼の顔を両手で優しく挟み込むと、自らの唇をそっと彼の唇に合わせた。星と星が巡り合うように、彼はようやく求めていたものが目の前に現れた心地がした。

「なに信じられないって顔してるの。せめていい夢を見たいじゃない?」

「まだ君はいてくれるの?」

「あなたが私を忘れない限りね」

 スキップを踏みながら彼女は言った。


 天界シェアハウスからの帰り道、アパートの前で木下を待ちかまえる一人の影があった。彼を見つけるとその影は身を翻し、電灯の前に姿を現した。

「おかえり、修」

 木下は立ち止まり、その全身をしげしげと眺めた。そして彼は自然とひとつの光景を惹起する。一本の窓辺に咲く薔薇、そこには月光が射し、水は澄み、ひとつの澱みも思いもない。彼は距離をゼロにして抱きしめた。

「おかえり、蒼」

「どこ行ってたんだ?」

「あなたが女子高生といつもいちゃいちゃしてるからじゃない!」白木は頬を膨らませて言った。「でも、会いたくなったから来た」

「そっか」彼は駒子のことを思い浮かべて釈明した。「でも、疚しいことはないよ。本当に」

「分かってる。でも寂しかった?」

「それはもう」彼は気恥ずかしさを感じながら呟いた。それを見ると白木は嬉しそうな顔になる。彼はその清純さが大好きだった。

「でもね」白木は言った。「でも、私はずっとここにいた」

「僕はずっとそれを知っていた」

 感傷に浸り始めた木下の手を白木は取って言った。彼の手に彼女の手は冷たかったが、彼にはいたく親しいものだった。

「ねえ、帰ろう? あなたの家に、私の家に」

 彼らは三階分の螺旋階段を上がり、玄関を開けるとそこには久し振りの匂いが立ち込めている。

「ただいま」

 呟いたその声はどちらが発したか分からないものとなって部屋の中に谺した。


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