TEST1:終わっていた日常-1
この小説は吉基地にとって人生初の小説になります。
よって身の毛もよだつ痛い内容であったり、吐き気を催すほどの言葉足らずになっております。
そうした物を読みたくない方はどうか直ぐに引き返して下さい。
いつも見かける猫が居なかった。
だからと言って自分の人生になんら影響を及ぼすはずは無い…そう、ただタイミングの問題である。
日常に起こっていた事が突然無くなれば誰だって変に思ったり不安になったりもするはずだ。
その違和感によって本来の力が出せなかったり、失敗を引き起こしたりする事は多々あることだろう。
それと同じ感覚を幾分か増した状態というのが今の自分には良く当てはまる。
「っつ!また…」
視界がブレる、ここ数ヶ月不定期に起こる身体の異常で最近はかなりハッキリと知覚出来るようになった。
初めは病気か?なんて思いつめていた時期もあったがそれとは違う。
「戻るしかないな」
思わず溜息をつきそうになる。
間違っても自分が不幸なんだと思わない様にしなければならない。
“不幸になるのは自分ではない他の誰か”なのだから。
仕方がないのだと自分に言い聞かせ学校までの近道になる筈の裏路地を後にし素直に大通りから行くことにした。
「ぃよ〜!湊じゃねえか」
今の状態でコイツと出会ってしまうとは思わなかった。
半ば諦めに近い感情を抱え後ろを振り返る。
「どうして海堂君はそんな所から出てきたの?」
誰だこの子⁉
「…えっと、誰でしたっけ」
傍らに立っていた女の子にはどうも覚えがなく、つい本音が出てしまっていた。
本来ならこんなにストレートな事は言わない。
寧ろ自分としては場の空気を読みそれに順応する能力ぐらいあると自負している。
これこそ先に述べた通り、失敗しか生まない良い例だ。
「覚えて無いの⁉同じクラスの一之瀬 朱莉だよ」
いちのせ あかり…聞き覚えはあるがどうも顔と名前が一致しないな。
だが此処でそれを言ってしまえば彼女を傷つけかねない。
嘘というのは時に人を守るもので決して自己保身の為ではないのだ。
「一之瀬さんか!ゴメン。夏休みの間にど忘れしちゃって」
「も〜。ちゃんと覚えておいてよね」
「ちょっと待て‼ならお前の親友であり、悪友でもある野木 直哉の事も忘れたなんて言うんじゃないだろうな!」
こいつは言ってて恥ずかしくないのか。
て言うか悪友なんて自分から名乗るなよ。
「勿論忘れてねーよ。てか三日前にも会っただろうが」
「そうだっけか?」
「お前こそ大丈夫かよ」
ーぷっ!
あはははははは‼ー
二人の間に笑いが起こる。
たった三日でも変わらずいる相手にホッとしているという安心感が湧き思わず吹き出してしまっていた。
「二人とも早く学校行かなきゃ遅刻するよ」
「やべ⁉確か今日の朝番って育江先生じゃ…行くぞ、湊」
俺達は一斉に走りだし、学校へ急いだ。
時ヶ丘第二高等学校は、不便な場所に建てられている。
先ず、学校の外周部には売地が多いという事。
一見すればたまたまだとか、考え過ぎだとか言われるがそれで済むのだろうか。
時高は、都市部よりもやや南部に位置し比較的田舎よりになっている。
更に、学校前にバス停があるのだが一日に三回しかバスが来ないという低条件下なのだから学生寮を造っても良いのではないだろうか。
いや、寧ろ造るべきだと俺は思う。
先に述べたとおり周りにはこれ程売地があるにも関わらず造らないのには、訳があるはずだ。
…ただ資金が無いという可能性も捨てきれないのも事実なのだが。
「…遠いんだよ学校」
「何を言ってやがる湊。そんなのは一年の時と変わらんだろうが」
呼吸を全く乱す事なく直哉は、尚も続ける。
「それに時祭の為だと思えばまだ気も楽になんだろ」
時高ならではの祭り事で時灯祭があと一ヶ月とちょっとという所まで迫っている。
去年体験していても未だ形容し難いのだが会えて例えるならその空間だけ時間が止まっているという感覚に見舞われる。
正直、気味の悪さを覚えてしまう。
「遅いぞ!貴様ら‼」
頭上から怒号が降りかかる。
直ぐさま立ち止まり顔を上げると、そこにはちょうど木の葉が拡散された所で声を発した人物の姿は確認出来なかった。
頭がそれを認識した瞬間視界が回る。
次に知覚した時には痛覚が身体を巡っていた。
「がっ‼痛い痛い痛い!」
「痛くしているのだから当たり前だ。海堂 湊!貴様は懲りない奴だな」
白衣姿の女性が今まさに脇固めを実践している。
「貴様もだ。野木 直哉」
「ゆ、許して下さいよ〜育江先生。それに湊はともかく俺は優等生ですよ」
「貴様が優等生なら平先生と呼べと何度も言う必要は無いわけだが」
どっちでも良い。
いや、寧ろ早く決めてくれ。
でないと、俺の腕が‼
「良い加減離して下さい!平先生‼」