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第十四章:姫が出した答え

椿目線→真理目線の話になっています。


椿は今まで薊さんの笑顔に違和感を感じていた。


「交通事故を起こして椿さんの両親を殺すように仕向けたのは私よ」


その告白を聞いて理由が分かった。


笑っているようで目が笑っていない。

事故の時に感じた睨むような視線にすごくよく似ていた。


両親を殺したのは薊さん。


それが分かっても椿どうすればいいか分からなかった。

もちろん強い怒りは感じていた。自分達の都合で人の命を奪って、私達の人生をめちゃくちゃにして

大切な友達を襲おうとして…

許せない。

絶対に許さない。


でも、きっとこの怒りを振りかざしてもどうにもならないのだろう。

そう思って必死に感情を抑えて考えを巡らした。


両親のために復讐する。

そう決意したけれど、具体的に何がしたかったのだろう。


俯いてしばらく黙っていると手に冷たい感触が。


振り返ると、真理が私の手を握っていた。

目をつむってまるで祈るように。


大丈夫、頑張ってという思いが真理の手から伝わって来る。


真理…

さっき痛かったよね、急に襲われて怖かったよね。

巻き込んでごめんなさい。

こんなにひどい目に遭っても一緒にいてくれて本当にありがとう。


真理の後ろでは椎奈と海那が私を心配そうに見ていた。


皆、ありがとう。


もう私は一人じゃない。

いろんな人が一緒にいてくれて、力になってくれた。その人たちのためにも、答えを出さないと。


目を閉じて気持ちを落ち着かせる。


「薊さん」


さっきまでうなだれていた薊がびくっとして顔を上げる。


私は続けて言う。

「薊さん、自首してください」


これが私の出した答えだ。


「自分のやったことを菖さんにも警察の人にも全部正直に話してください」


罪を犯した人が自分の罪を告白して刑務所に入る。ごく当たり前の罪滅ぼし。


そうしたら、今までの薊さんの日常はなくなるだろう。

今の環境は壊れ、人からの信頼は失われる。

独りに、なるかもしれない。


こうすることで大切な人たちを奪われた私の気持ちがわかるだろう。

独りの気持ちがわかるだろう。


何かを決意したように薊さんが深く頷く。

目から一筋の涙が流れた。

  













あれから一週間たった。


その後、薊さんは自首をして逮捕された。

大会社を持っていることで有名になっていた音原家の社長令嬢が逮捕されたと聞いて、近所では騒ぎになり噂話が飛び交った。

真理の耳にもいくつか入ってきた。

菖さんが心を病んで入院することになった。

音原家の社長は椿のお婆さんに一度戻される、など。


雪はあれから学校に来なかった。退学する、という噂を聞いた。

椿もあれからずっと学校に来ていなかった。

心配で椿の家に行ってみたが、誰もいないようだった。

担任の先生に聞くと、椿は今お婆さんの家にいるらしい。

しつこく聞いたがそれ以上は教えてくれなかった。

クラスでは椿が転校するかもしれない。という噂が流れていた。



最後に椿に会ってから一週間と三日たった頃、椿は先生に連れられて学校に来た。

教卓にたった椿は前より少し痩せて見えた。


「音原さんからお話があります」

先生が言う。


「転校することになりました。ここからはずっと遠くの北の方へ行きます。皆さん、今までありがとうございました」

椿が俯いて言った。

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