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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第三部
96/123

視界ジャック12 防衛大臣とクイン

 某インターネット掲示板のカキコミ

 1「渦海内閣の大臣がクズ過ぎる件」

 2「これは酷い」

 3「防衛大臣戦う気ゼロwww」

 4「外務大臣が保身の為に外患誘致とかひど過ぎる」

 5「文部大臣はただの馬鹿」

 6「こいつらDPO来るのか?」

 7「>>6 DPOの銃器システムに文句言ってる文部大臣が来るかな?」

 8「口だけ。あれこそ自衛隊の訓練に使えればいいのに」

 9「自己満足で大臣やってる奴ですから」

 防衛省 会議室


 防衛省の会議室も、やはり本質的には会社の会議室と変わらないのだろう。長机をたくさん並べた光景は会議室としてお馴染みだ。

 「ドラゴンプラネットオンラインにおける銃器システムは異常です。あれは人殺しを育てるシステムです」

 ホワイトボードの前に立つ、一番偉いらしい女性が朗々と語る。ドラゴンプラネットオンラインの銃器はリアルを極め、それを自衛隊の訓練に使いたいという希望が官僚や士官から希望があったのだ。

 「ふむ、だが、そのリアルなシステムを利用した訓練ができれば有事の際は役に立つのでは?」

 それを提案したのが、最前列に座っている山田佐藤之介という男。苗字や苗字っぽい名前からして解る人もいると思うが、元円卓の騎士団幹部、山田田中丸の父親である。

 「有事なんてありません! そもそも存在自体が違憲の貴方達自衛隊が、こうして解体されないだけマシと思いなさい! 以上、解散!」

 偉い女性はヒステリーを起こして一方的に会議を解散した。佐藤之介はやれやれと呆れていた。どうやらこうした事態は日常茶飯事らしく呆れるより他方法も無いようだ。

 会議室を出て行った偉い女性、防衛大臣のたいらかずは、防衛大臣として重要な有事への備えを全く行わない珍しい大臣であった。それどころか、災害事の救助活動で活躍する自衛隊の解体すら目論んでいた。

 廊下に出た和はスマートフォンでニュースを見た。そもそも今回の佐藤之介からの提案など受ける気もなかったが、佐藤之介にアイデアをもたらした人間の名前を聞いた瞬間、さらに断る理由が出来てしまった。

 『ギアテイクメカニクルのクイン、DPOにおける銃器システムについて語る』

 ニュースにはそう書かれていた。クインは氷霧の友人にして墨炎の仲間、熱地学院大学と戦った長篠高校のレクリエーション大会が動画サイトで配信されたため、その煽りで知名度が上がった。元々銃器使いの間では珍しい女性プレイヤーとして有名だが。

 「あの悪魔の娘だなんて!」

 和にはかつて、好いた男性がいた。しかし、その男性はとある女性と結婚してしまった。まあつまり、失恋を引きずった挙げ句にそれを国政に影響させているのだ。迷惑極まりない。

 何故クインが好きな人と結婚した女性の娘とわかったのか、それにはわけがある。

 クインは前述の通り、性別反転が不能なDPOにおいて珍しい女性の銃使いである。そのため、クインはプレイヤーが発行するゲーム内雑誌に取材されることがよくある。そのインタビューにてクインは家庭のことをよく語っていた。

 その記事をDPOの粗探しがてら見ていた和がクインが語る家庭環境や両親の職業などから判断したのだ。さらに決定的なのが彼女の愛銃、『ベレッタ M90TWO』である。この銃はクインの母親となる女性がよく、大学のサバゲーサークルにて使用していたものである。

 さらにクインをその女性の娘だと判断した材料は多岐に渡り、例えば長篠高校でのレクリエーション大会を撮影した動画からクインの射撃時の癖など。そんな細かい材料でクインと恋敵だった女性を結び付けられるほど怨んでいたのだ。

 「見てなさい! 今に思い知らせてやる!」

 和はスマートフォンとイヤホン、すわなちウェーブリーダーを取り出して廊下を駆けた。今更大人にまでなって、廊下を走るななんて注意をする人間はいない。


 ギアテイクメカニクル スティールサバンナ


 「と、いうわけで恨みを晴らす!」

 「いや意味わかんない」

 以上の経緯を聞いたクインはスッカリ呆れていた。西部劇にでも出そうな、荒野の町を虚しく草の塊がコロコロ転がる。

 「あたしのお袋があんたの恋敵だったってのは充分わかった。親父も『俺は昔、今の防衛大臣に言い寄られてた』って自慢してた」

 クインは何とか話を理解する。かつての想い人に自慢の種とされ、和も鼻が高い。

 和のアバターは鋼鉄の鎧を纏う、茶髪に青い目をした乙女。重機が打ち捨てられた荒野にクインの作業員みたいな格好は似合いこそすれ、本人曰く『ジャンヌ・ダルク』のアバターは全くの不釣り合いだった。

 「ま、その後に『それすら軽く越えて俺を虜にした女房は最高だぜ』って続くけどな」

 クインから続きを聞いた和は自慢が無くなってガッシャンガラガラと倒れる。鎧をガッチリ着てるため、倒れるだけでもうるさい。

 「クソッ、ならこの場で決着を付けようじゃないか!」

 「あたしは直接関係が……」

 「あんたはその結果でしょうがー!」

 クインは和に因縁を付けられたと感じたが、和からして見ればクインは想い人と恋敵が愛し合った結果そのもの。

 「仕方ない。死んでも文句は言うなよ?」

 クインは仕方なく戦いを受け入れる。こうして、機械惑星は新たな戦いに早速呑まれた。

 〇すべての始まりとなった会話

 田中丸「親父が最近ガラにもなく悩んでんだ」

 クイン「そりゃあ心穏やかじゃない」

 田中丸「自衛隊の訓練が進まないんだとさ。今は町で訓練すれば9条の人がうるさいし」

 クイン「誰に命守ってもらってると思ってんだ、そいつら。しかし自衛隊の装備は安全装置が外し難くて……」

 田中丸「それはいいとして何かいい方法は無いか?」

 クイン「いっそDPOで訓練すれば……」

 田中丸 (ガタッ)

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