表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンプラネット  作者: 級長
第三部
89/123

プロローグ3 DPOを覆う影

 渦海親潮内閣 大臣リスト

 総理大臣 渦海親潮

 官房長官 はしらささえ

 財務大臣 楼碑ろうひ

 外務大臣 外環そとわ誘逸ゆういち

 防衛大臣 たいらかず

 文部大臣 かしら貴羽たかは

 東京都 国会議事堂


 「困りましたな、渦海首相」

 国会議事堂には内閣の大臣達が閣議をする部屋がある。そこの円卓に、渦海親潮内閣の大臣が集まっていた。声を上げたのは官房長官。

 「この4月からDPOを解禁したところ、熱地と松永、凍空に宵越がバタバタと倒れ、表五家は我々だけに」

 「わかっておる。だからまずはこの『全感覚投入規制法』を閣議決定するのだ」

 官房長官の隣に座る渦海親潮は口を開いた。そして側に立つ金髪をなびかせた若い秘書に、親潮は指示を出す。

 「リディア。奴に伝えろ、騒ぎをでかくしろと」

 「わかりました」

 リディアは部屋を出た。狙いは騒ぎを起こし、まだ表五家の影響が抜け切らないマスコミに全感覚投入規制法を報道しなくても不自然にならないように話題を提供する狙いがある。

 「で、この全感覚投入規制法は閣議決定だな」

 親潮は一周してきた紙を見て満足する。

 一方、外に出たリディアはある人物と鉢合わせていた。スーツを着ているが、ガッシリとした大柄の人物で政治家とは違うベクトルの威圧感がある。

 「行くのか?」

 「もちろんよ。黒潮くん」

 その人物は渦海黒潮。なんと、この威圧感で14歳の中学生らしい。

 「お前は弐刈の元へ戻れ。奴はお前を待っている」

 「断るわ。私は生きた足跡を残すために、ここにいるもの」

 リディアは黒潮を横切り、そのまま廊下を歩く。黒潮はそんなリディアを呼び止める。

 「弐刈の記憶に残れば、それで十分だろう! 例えお前が何も成せなくても、お前が弐刈と家庭を持てば、それが生きた足跡になるはずだ!」

 その言葉に反応し、リディアは振り返った。

 「あなたに何がわかるの? 私は不完全なクローンだから子供を作れない! 平凡な幸せは許されて無いのよ!」

 「子がいなくても、弐刈はお前を手放さない! 奴は確かに不誠実な人間だが、これだけは保証できる!」

 「あの人のことは、もう忘れるわ」

 リディアは廊下を走り抜けた。黒潮の声は彼女に届かない。


 岡崎市 某所


 「待てこら!」

 「今日は逃がさん!」

 岡崎市のとある住宅街、そこで太った男が追いかけ回されていた。追いかけているのは自転車に乗る男子高校生と走る女子高生だ。学校帰りなのか、二人とも制服を着ている。

 驚くべきは、女子高生が自転車の男子高校生と並走出来てるところだろう。男子高校生も全力で自転車をこいでいるが、女子高生は軽く走ってる程度だ。

 しかし、そんな化け物じみた高校生から逃げれる太った男も凄い。

 「煉那、本気出せよ!」

 「いや、疲れたところを確保するよ門田」

 自転車をこぐ門田という高校生に、涼しげに返す煉那。追われてる男はスーツを着ているが、スッカリボロボロでみすぼらしい。

 「お、おい。私を誰と心得る! 熱地南太郎だぞ……」

 「わかってるから追いかけてんだよ!」

 太った男、熱地南太郎は二人を止めようとするが、煉那はスパートをかけて距離を縮める。

 「この辺は夏恋の自宅がある場所だな」

 煉那は辺りの風景を確認する。この一帯は彼女の友人、上杉夏恋の自宅がある付近だ。

 「お」

 門田はそこで、自分達に向かって歩く人影を見付けた。夏なのに、黒いニット帽にマスク、ロングコートなどかなりの厚着だ。

 「そいつを捕まえてくれ!」

 門田は叫んでいた。前々からしょっちゅう近辺住民に手を借りて南太郎を捕まえていたので、今回も手を借りようという寸法だ。

 しかし、人影は南太郎にぶつかってそのまま通り過ぎた。南太郎の動きも止まる。疲れ果てたのなら門田と煉那は飛び掛かっていたのだが、何か様子がおかしい。

 「よーし、捕らえ……」

 門田はユックリと南太郎の正面に回り込む。しかし、そこである光景を目にした。


 南太郎の心臓に、包丁が突き刺さっていたのだ。


 「なっ!」

 「なん……だ?」

 門田の様子を見て、煉那も正面に回る。南太郎は激しい運動の直後だからか、既に死後硬直を起こしていた。立ち往生だ。

 ボロボロのスーツが大量の血で汚れる。白昼堂々と、殺人が起きた。

 「チッ!」

 煉那はそのまま去った人影を追う。人影もそれに気づいて走り出した。距離がかなり空いてるものの、煉那は一気に詰める。人影は住宅街を巧みに抜けていく。土地勘がある人間なのだろうか。

 度重なるカーブで煉那のスピードはかなり落ちていた。ついに人影は煉那すら振り切ってしまう。

 「愛花さんに頼むか」

 煉那はクラスメイトの姉に頼ることを決めた。


 後にこのニュースは新聞やワイドショーを賑わせ、全感覚投入規制が一般市民に知れ渡ることは無かったという。

 某インターネット掲示板のカキコミ


 1「熱地南太郎の殺害事件で全感覚投入規制のニュースが全然報道されない件」

 2「宵越は解散したはずだろ?」

 3「まだマスコミには表五家の力が残ってる」

 4「オマケに宵越道夫が宵越テレビの復活させようとしてるし」

 5「まあ弐刈が資産を全部持ち逃げしたんで無理ですがwww」

 6「マスコミはスキャンダルを報道したら気をつけろ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ