コラボ企画 直江遊人VS星影雪菜
今回はエブリスタで級長が好評連載中(?)の『模型戦士ガンプラビルダーズビギニングR』とのコラボ!
直江遊人VS星影雪菜の主人公対決が見られるのか?
それとも戦隊モノの〇〇レンジャーVS××レンジャーの様に協力するのか?
あと一応本編時間軸だから、意外な伏線が……?
7月15日 私立本能寺高校 教室
今日はサマーセミナーの日。愛知県中の私学が集まり、様々な講座を開設するイベントである。市民による講座もあったりする。
今年の会場は名古屋にある本能寺高校。本能寺は名古屋に無いとか言ったら理事長に殺されるので、ここでは禁句だ。
この教室で開かれるのは人気読者モデル、佐治晴香の講演会。ファッションに興味のある女子高生が続々と教室に入っていた。
その中、明らかにファッションなど興味なさそうな二人が前の座席に陣取っていた。
一人は白髪の男子高校生。作り物ですと言われれば信じてしまえそうな感情の無い瞳で、壇上の佐治を見ていた。
もう一人はホビー雑誌をペラペラめくる女子高生。特徴はあまりなく、どちらかと言えばかわいい方に入る。
男子高校生は長篠高校の夏服を、女子高生は天上高校という私立高校のセーラー服を着ていた。
二人はふと、お互いを見た。そして、しばらく考える。
(あれ? こいつどっかで見たぞ? ナンセンスか?)
白髪の男子高校生、直江遊人は女子高生の姿を見てしばらく考えた。
(もしかして病院で会ったのか?)
遊人が幼い頃、現在はサイバーガールズのメンバーである稲積あかりに病院で出会った。多分今回も同じ様なものだと、遊人は記憶から女子高生の仕草に一致するデータを探す。
渚の輸血により、遊人は高い観察力を発揮するインフィニティとなった。もしかしたら記憶と今の女子高生を照合すれば、それらしい人物にぶち当たるはずだ。
遊人は氷霧や佐原と比べると非常に地味なインフィニティ能力を全開にして、記憶を探った。ページのめくり方だけのヒントを元に、幼い頃見た、絵本を読む女の子全員の仕草と照らし合わせる。
ページを端から丁寧にめくる仕草。それに一致する情報をひたすら遊人は探し出す。
女子高生も何か考えているようだ。ヒントが加わる。考える仕草も同時に照合する。額に中指を当てて考える独特の仕草。遊人はある記憶に辿り着いた。
それは、やはり幼い頃の記憶。病院のプレイルームでのことだ。遊人、その頃は優という名前だったが、彼は女の子と絵本を読んでいた。
ページを端から丁寧にめくる子だった。何かを考える時、額に中指を当てていた。
保育園から帰ってきたばかりらしく、緑色のスモックを着ていた。ひよこを象った名札には、ひらがなで名前が書かれていた。
「ほしかげ……ゆきな……」
「もしかして、優くん?」
二人は互いのことを思い出し、顔を見合わす。遊人はこの女子高生のことを思い出したのだ。女子高生の名前は星影雪菜。幼い頃、よく病院のプレイルームで遊んでいたのだ。
雪菜がなんで病院にいたのかは、遊人の知るよしはないのだが。
講座が終わって、廊下で二人はすっかり積もる話をしていた。遊人は渚が死んですぐ、愛花に預けられた。あかりや雪菜といった幼なじみ達からすれば、突然姿を消した様に見えただろう。
「すっかり白髪になっちゃって……」
「身長は俺の方が上だな。昔は逆だったけど」
二人は昔を思い出していた。遊人はふと思い出した様に、一枚の紙を雪菜に渡した。
「これ、俺がやってる講座だ。次の時間だから来いよ」
「行くいく!」
雪菜は遊人について行き、講座を行う場所に向かった。渡された紙には『始めてでも出来るDPO』と書かれていた。
「これは?」
「ドラゴンプラネットオンライン。略してDPO」
雪菜の疑問に遊人は答えた。この講座では、始めてDPOにログインするプレイヤーをサポートするのだ。
雪菜はオンラインゲームのことだろうと予測した。ゲームをするくらいならいいと、講座を受けることにした。
しばらくすると、講座をやる教室についた。受講者は少なく、疎らに座っている。
「座って座って」
遊人は雪菜を適当な椅子に座らせる。雪菜は怪訝そうに周りを見渡した。受講者は大人が多い。
「では始めよう」
遊人が教卓に立ち、講座を始める。受講者達にはイヤホンの様な物と端末が配られた。端末は白くて薄い、電源以外のボタンが無いものだった。
「それはインターネットに接続するためだけの端末。性格に言えば、DPOにログインするためだけのアイテムだ。まずはイヤホンをして電源を入れて」
遊人が大体の事情を説明する。雪菜がイヤホンをして電源ボタンを押すと、白いボディに『LOGIN』の文字が浮かんだ。
「ログインって文字が浮かんだら、それに触れる」
遊人の指示に従い、雪菜は文字に触れた。すると、落下する様な感覚が雪菜を襲う。
そして、固い地面に尻餅をついた。
「え? 何?」
突然のことに、雪菜が慌てて周囲を見渡す。周りの景色は教室の物ではなく、何処かもわからない町だった。
高層ビルが建ち並ぶ町の、スクランブル交差点。その中央に雪菜はいた。雪菜は体がやけに軽いのを感じながら、目の前にあった鏡を覗いてみる。
「え?」
いきなり驚いた。鏡に写ってるのは、慣れ親しんだ星影雪菜の姿ではなかったからだ。
鏡に写っていたのは青髪の少女。所々に鉄製プロテクターが付いた青いワンピースという現実離れした服装で、髪は短い。ワンピースの丈は短く、ブーツにニーソックスも目立つ。デザインがやはり、現実の物とは違う。
「これって……」
次々に、光と共に先程の受講者らしき大人が姿を現す。しかし、全員が雪菜と同年代の姿となっていた。
「それがお前のアバターか」
雪菜に少女が声をかける。先程のどさくさに紛れて現れたのだろう。
「あなたは?」
雪菜な少女を見た。鴉の濡れ羽という表現が当て嵌まる艶やかな黒髪を腰の下まで伸ばし、瞳は宝石の様に紅く輝いていた。小柄で、今の雪菜と現実の雪菜の両方と身長を比べても、彼女は小さい。
「これが俺のアバターだ、雪菜」
「あ、遊人か」
声が非常にアニメの女の子に近いため、一瞬気づかなかったが、自分の名前を知ってるとこから雪菜は遊人だと判断した。
「その声は?」
「ボイスエフェクト。お前らのはデフォルトで切ってあるけどな。男の声じゃ、この墨炎に合わない」
とりあえず遊人は声について説明した。
その後、講座に参加した人は基本的なレクチャーを受け、フィールドの探索に出かけた。
「このフィールドは講座用に用意してもらったものだ。サービスをしてるインフェルノ社の提供なんだよね、この講座」
遊人のアバター、墨炎はそんなことを雪菜に説明した。雪菜はこのままでも何だから、ある提案をする。
「このゲームって対戦できる?」
「出来るよ」
墨炎は青白く発光するメニュー画面を呼び出す。何かを操作したかと思うと、雪菜の前にウインドウが現れた。
『墨炎からデュエル申し込みがありました。受けますか?』
「なるほど」
雪菜はウインドウの『YES』に触れる。デュエルと呼ばれる対戦が開始される。墨炎は雪菜に言った。
「久しぶりに遊ぶか」
「よーし。優くんには負けないよ!」
久方ぶりに再開を果たした幼なじみ同士の対決が幕を開けた。