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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第二部
76/123

一般プレイヤーの日常 クイン編

 プレイヤーデータ

 アバターネーム:クイン

 アバターサイズ:ミドル

 使用武器:銃器、ハンドガン『ベレッタM90TWO』、マグナム『S&W M29』など

 スキル:『狙撃』『工作』『索敵』『高速移動』

 所属騎士団:無し

 ギアテイクメカニクル サバンナシティ『ユートピア』


 機械惑星、ギアテイクメカニクル。荒野、砂漠、雪山、火山と険しい環境の多い惑星だが、人が住む限り町がある。

 荒野のど真ん中にあり、中途半端に道路などを整備されたユートピアもそんな町の一つ。四方はゲームの仕様としての問題か、崖に囲まれている。トンネルを潜れば町から出られる。

 「まるで『ポスタル2』のパラダイスみてーな町だな」

 そこをバイクで訪れたクインはそんな感想を持った。ポスタル2とは、あの直江遊人も大好きなバカゲーテイストのFPSである。MODを当てることで100種類以上の武器が出現し、嫁に頼まれたお使いを済ませる過程でいろいろな銃撃戦などの事件に巻き込まれるゲームである。

 ただ、イスラム過激派や狂牛病がネタにされ、真面目な人や某条例賛成派みたいなゲームと現実の区別がつかない人にはオススメできない。

 クインがバイクを降りたのは図書館の前。図書館としては巨大な建物であり、その前にはある銅像が立っていた。

 「『学問のススメ』ね。たしかに解釈は合ってるけど」

 その銅像は福沢諭吉の有名な本、その一説を解釈したデザインになっていた。本を読む人に踏み潰される人。学問をするかしないかが、人の上下を決めるのだそうだ。

 「さて、クエストしないとね」

 クインは銅像から目を離し、図書館に入る。クインが受けてるクエストは、『図書館の自由』というもの。この図書館の職員が反図書館団体の活動に困り果て、プレイヤーに依頼してくるのだ。

 DPOのクエストには、ただ目標を倒すだけの通常クエストと、ストーリーがあるエクストラクエストがある。このクエストはエクストラクエストである。

 「まずは図書館の人に会わないとな」

 クインは自動ドアをくぐり、冷房の効いた室内に入る。彼女の露出した肌に冷たい風が当たる。

 クインの服装はつなぎの上を脱ぎ、袖などを縛って腰で固定しているというもの。黒いタンクトップから健康的な肌が覗く。

 DPOのアバターはランダム生成。クインはアバターを髪型以外いじってない。赤みがかった茶色の髪を、ただポニーテールにしただけだ。

 大多数の女性プレイヤーがいじるスタイルも、彼女は調整しない。

 「まあ、墨炎なら別の理由でいじれないだろうけど」

 クインは言いながら、図書館の受付まで歩いた。受付には既に、依頼人らしきスーツの男がいた。NPCだ。

 「お待ちしておりました。なんとかして下さい!」

 その男は窶れて、ハゲている。ストレスが相当かかってるとクインは判断した。

 「で、奴らは何処だい?」

 クインは早くこの、人が良さそうな依頼人を休ませてあげようと仕事に取り掛かる。若干、この位置からでも騒がしい声が聞こえていた。

 「よりによって、あそこです」

 依頼人に連れられた先は、本棚がたくさん並ぶ場所。多数の人が本を読む閲覧スペースであり、そこで騒がれるのはかなり辛い。

 そんな場所で、緑のTシャツを着た5人の人達が看板を持って騒いでいた。看板には『電子書籍に乗り換えて森を守れ』『本は森林伐採』などと書かれていた。

 「ふむ。まずは話し合いか」

 クインはまず、諭して追い出すことにした。今すぐ銃撃してもよかったが、あまり事を荒立てるのはよろしくない。

 「おいアンタら。図書館では静かにしろ」

 「五月蝿いこの共産主義者!」

 「図書館利用する知識人共はみんなアカなんだよ!」

 「言論を武装で弾圧するのか!」

 少し注意したら逆ギレしてさらに騒がしくなった。仕方ないのでクインは腕づくで追い出すことにした。

 「工作スキル!」

 クインはメニュー画面を開き、素材を選んである機械を作った。選んだ素材は『壊れたアーム』『タイヤ』『コンテナ』。

 クインの目の前に機械が現れる。箱にタイヤとアームが付いた機械である。大きめの買い物カート程のサイズである。

 その機械は反図書館団体をアームでコンテナに入れ、そのまま外に走り出した。

 「『強制退出マシーン』。NPCを負傷させずにエリアから追い出す機械だ」

 「うわー!」

 「言論弾圧だ!」

 「自由の侵害だ!」

 コンテナに詰められた反図書館団体達は外に追い出された。これで一件落着かに思われた。

 だが、またしても外が騒がしい。外にも反図書館団体がいて、追い出された仲間を見て怒り浸透なのだろう。そして、ガラスが割れる音がする。

 「あー、ヤバっ!」

 反図書館団体が大挙して図書館に突撃。全員がスコップやらハンマーやら鉈やらで武装している。中には銃を持っている者もいた。

 クインは右太股にマウントしたホルスターからハンドガンを抜く。ベレッタ90TWO。有名なベレッタ社が製造するイタリア製ハンドガンだ。

 「おらよ!」

 クインが発砲する。腹部に弾を受けた反図書館団体の人間は倒れる。ハンドガンは一見、殺傷能力が低く見られがちだ。だが、人を殺すには十分な威力がある。腹部は内臓も詰まってる。

 「暴力による弾圧だ!」

 「許すまじ!」

 反図書館団体は自分達のことを棚に上げて怒り狂う。一体、こういう人達の思考回路はどうなっているのだろうか。クインにはわからない。

 「当たるかよ!」

 ハンドガンを撃つ反図書館団体メンバーにクインは向かう。反動を抑えるのが下手だから、正面にいるクインにすら当たらない。

 オマケにクインは高速移動スキルで移動速度を上げている。さらに、当たらないように左右へジグザグに動いてるため、銃を扱うのが下手な人間には当てられない。

 「さよなら!」

 クインが反図書館団体メンバーに接近し、ハンドガンを発砲。頭に銃弾を受けたメンバーは倒れ、手にしていたハンドガンはクインに奪われる。

 「グロック17。やっぱりそういうイメージなのね」

 左手に奪ったハンドガン、グロック17を持つクイン。グロックは全般に、何故かテロリストが使う銃というイメージが強い。

 ダイハードという映画で敵のテロリストが『グロックはプラスチックだから金属探知機に引っ掛からない』と言って飛行機に持ち込んだせいだ、とクインには見当がついていた。

 次から次へと反図書館団体のメンバーがやって来る。クインはグロッグとベレッタの二丁拳銃で、相手に銃を撃たせる暇無く倒していく。

 クインは死んだ反図書館団体の一人が持っていたアサルトライフル、M4カービンを拾って図書館を出る。

 外にも数人の反図書館団体がいたが、持ってるのがチェーンソーやスコップなのでアサルトライフルを掃射したら全滅出来た。

 「これで終わりじゃないんだろうけどさ!」

 弾を撃ち尽くしたアサルトライフルを投げ捨てるクインの言う通り、一カ所の敵を倒して終わるのがエクストラクエストではない。次の敵は必ず来る。

 「これか?」

 クインは反図書館団体のメンバーが手にしていた紙を拾う。何故かこの紙が気になったのだ。これはDPOのシステムがこの紙に対する興味を増幅させているからだ、とクインはネットで見たことがある。キーアイテムを自然に拾わせるシステムだ。

 「何々……子供達を森林の伐採者に育てる移動図書館を潰す……?」

 クインは紙に書いてあることを読んだ。移動図書館は本を積んだ車のことで、クインも小学生の頃に見たことがある。ただ、銃の本が置いてないことへの不満くらいしか思い出は無いが。

 「あれを狙うのか。おいアンタ、移動図書館の停車場所は?」

 クインはゆっくり様子を見に来た依頼人に聞いた。依頼人は移動図書館の停車場所が書かれたメモをクインに渡す。

 「これです」

 「なるほど、まずは『ユートピアモール』の前だな。今日は誰かさんのサイン会してるみたいだけど……」

 クインはメモを受け取り、バイクに乗ってユートピアモールに移動する。


 ユートピアモールはユートピア唯一のショッピングモール。プレイヤーマンションに無い服も揃い、アウトサイダーチックな品物の数々もクインのお気に入りだ。

 エクストラクエストは規模が大き過ぎて他のプレイヤーを巻き込みそうである。だが、その心配はいらない。

 通常のクエストはターゲットとなるエネミーだけが保護され、クエストを受けているプレイヤーしか倒せなくなる。例えば以前、墨炎と氷霧が受けたブロッサムドラゴン20匹討伐のクエストなら、クエストの舞台『桜並木之森』にいるブロッサムドラゴンの一部が墨炎もしくは氷霧にしか倒せなくなる、というもの。

 しかし、エクストラクエストはエリアそのものが保護される。このクエストでいえば、クエストに参加していないプレイヤーはユートピアの入口であるトンネルを潜ったりトランスポーターで移動する際、ウインドウが現れ、選択肢が出る。『静かな場所に向かう』を選んでクインと反図書館団体の戦いが起きていないユートピアに行くか、『喧騒が起きてる場所へ向かう』を選択して戦場と化したユートピアに行くかを選べる。つまり、ユートピアは二つ存在することになる。

 エクストラクエストの舞台は殆ど、通常の戦闘フィールドより狭い特殊エリアだ。こうしてエリアを分けたりすることで、多数のプレイヤーを捌ける。

 「お、目の前にあるじゃん」

 クインはユートピアモールの入口に停車する移動図書館車を見つける。クインはサブマシンガンのイングラムM11を手に、移動図書館車の襲撃を試みる反図書館団体のメンバーに接近する。そして、サブマシンガンを反図書館団体のメンバーにぶっ放す。

 「オラオラーっ!」

 「ぐぎゃあー!」

 「あいつだー!」

 「言論弾圧女だー!」

 銃を持っているメンバーを先に射殺し、包丁やトンカチを持つメンバーを怒らせる。そこへ、手榴弾を投げて一掃する。

 「「うぎゃああー!」」

 「よし」

 反図書館団体が吹き飛んだのを確認すると、クインはユートピアモールに入る。誰かのサイン会が行われているとの話なので、見に行くことにしたのだ。次の場所に移動図書館車が止まるまで時間がある。

 「ここか」

 ユートピアモールのイベント広場、吹き抜けのある空間に机と大量の本が置かれていた。並んでいるのはいずれもNPC。広場に掲げられた横断幕には『本を焼いて森を守ろう』と書かれている。サイン会をしているのは、反図書館団体のリーダーらしき太った男。

 「思いっ切り矛盾してる!」

 クインは思わず叫んだ。森を守るために本を燃やそうとする団体が本を書くなど、自己矛盾も甚だしい。

 クインはエスカレーターに乗って3階にすぐ移動する。吹き抜けからサイン会をする反図書館団体のリーダーを見る。そして、スナイパーライフルのドラグノフを取り出す。クインはスコープを覗いて、リーダーを捉える。

 「あばよ、自己矛盾野郎!」

 そして、引き金を引く。反図書館団体のリーダーは頭が吹き飛び、確実に絶命した。

 「よし、次!」

 騒ぎが起きた広場を尻目に、クインはユートピアモールを出る。次に移動図書館車が停車するのは、学校だ。

 クインは外に止めたバイクに飛び乗り、学校まで走る。学校は現実世界の様な、グラウンドに古い建物というものではない。近代的な建物で、一階建てだ。グラウンドは無い。

 「いた!」

 移動図書館車を取り囲む反図書館団体を発見したクインは、近くに子供達がいないことをこれ幸いと、銃を乱射する。ショットガン、ベネリM4。初代バイオハザードのリメイクで、リチャードが愛用している銃だ。某学園ゾンビ漫画でも主人公がイサカからこれに武器を変えた。同じショットガンでも、性能が違う。

 「ポンプアクションじゃないのが不満だけどね!」

 クインはそのショットガンで次々と反図書館団体をミンチにしていく。すると、校舎の方から悲鳴が上がる。

 「子供達を毒する本を無くせー!」

 「これは言論の自由だー!」

 「何故本に認められて我々に認められない!」

 反図書館団体がシュプレヒコールを上げながら、学校に火を放ったのだ。始めからヤバい団体だったが、ここまで来るとヤバいってレベルじゃない。火を放った団体は玄関から次々と学校を脱出する。

 クインは出会い頭にそいつらをマグナムリボルバーで撃ち抜く。頭が軽く吹き飛んだ。

 「子供達は?」

 反図書館団体から遅れて子供達が避難する。だが、教師が何か慌てているみたいだ。クインは教師に話を聞いてみることにした。

 「どうした?」

 「人数が足りないんです!」

 どうやら人数が足りないらしい。避難の途中に逸れたのだろうか。子供達から不意に悲鳴が上がった。

 「あそこ!」

 「あんなところに!」

 子供達が指を指すのは学校の屋上。一階建ての学校を避難しようとしてどうしてそうなるのかクインには解らなかったが、屋上に子供が一人残されている。

 「行くか」

 クインはメニュー画面を操作し、工作スキルを発動する。完成したのは小さなトランポリン。クインはそれに乗ると、勢いよく跳ねて屋上へ到達。子供を抱き抱えて、屋上から地面へ飛び降りた。

 クインは見事に着地。子供も無事だ。

 「ミッションコンプリート!」

 クインは目の前に現れたウインドウがクエスト終了を告げるのを確認した。こうして反図書館団体は一応、クインに殲滅された。

 〇後書き

 今回のエクストラクエストのモデルはお使いFPS『ポスタル2』、火曜日のお使い。主人公ポスタル・デュードは嫁に頼まれて図書館へ本を返しに行くが、そこへ反図書館団体が現れて図書館に火をつけるという話。

 アメリカじゃどういう事情なのかはよく知らないけど、こういう団体がいるのだろうか。

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