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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第二部
67/123

番外 海の日大作戦

 今回はなんと水着回! DPOビーチコレクションを実施するぞ!

 まあ文章オンリーではあまり伝わらないだろうけど。

 DPO ギアテイクメカニクル レジャープール


 「海の日だ! 稼ぎ時だ!」

 機械惑星ギアテイクメカニクルのレジャープールで、そう声を上げたのは未だ職の無いプロトタイプ。彼女は相方のレジーヌ共々、ここの売店でお世話になっている。

 「やっと仕事見つかったよ!」

 「なつだけのたんきあるばいと。ていしょくにはほどとおい」

 「ぐっ」

 喜ぶプロトタイプに、レジーヌが辛辣な言葉を浴びせる。二人とも、売店の制服ともいえるエプロンを付けていた。目にも涼しげな水色のエプロンだ。

 プロトタイプはいつもの暑そうなニットのワンピースではなくTシャツにホットパンツと夏らしい服装だ。レジーヌは装甲を取り外してサンダルを履いている。

 「で、なんで海の近くにプール?」

 プロトタイプはプールの位置にツッコミを入れる。海のすぐ近くにこのプールがあるのだ。

 「成分分析開始。有害物質を確認、人間の致死量を上回ります。およいだらしんじゃう」

 レジーヌが海の水を遠くから分析した。工場の排水が海に流れ、泳げたものではないのだ。

 「なるほどね……」

 プロトタイプはその分析に納得する。異臭こそしないが、海は黒くて泳ぎたくない。

 「売店の仕事って、何するのかな?」

 二人は売店に向かう。まだ客が少なく、仕事はない。とりあえずプロトタイプは売店のレジに立ち、客を待った。

 「あ、新しい人だ」

 「新人さん?」

 第一のお客が来た。ツンツンヘアーで冒険漫画の主人公みたいなギンと、サラサラヘアーで冒険漫画のヒロインみたいなメイがやってきた。両方ともプールなので当然水着だ。

 ここでDPOビーチコレクション第一弾。メイはシンプルな青基調にハイビスカスの模様がついたビキニで、女性らしさが強調される。同色のパレオも目を引く。

 「ご注文は?」

 「あ、じゃあドリンク。コーラとアイスコーヒーで」

 「りょうかいしました」

 プロトタイプが注文を聞き、レジーヌが対応する完璧な布陣。レジーヌは作業内容を事前に『ウェイトレスアプリ』でインプットしたため、初めてとは思えない手際を見せた。

 「おまたせしました」

 「二つ合わせて200スケイルとなります」

 二人のコンビで注文はあっという間に完成。ギンとメイは指で端末に触れて、商品を持って行った。

 「なんでこの端末、指触れただけで支払いできるんだろ……」

 「さあ?」

 二人はこの世界の支払いシステムに疑問を持った。だが、疑問を解決する間もなく次の客が来る。

 「あ、白髪の憎しみそのものだ」

 夏恋だった。あまり現実の姿と代わり映えがしないアバターは、こちらの世界でも美少女の域に入る。

 さてここでDPOビーチコレクション第二弾と参りましょうか。水着の形状はビキニにパレオとメイと同じだが、赤基調で黒い蝶の模様という変更だけで印象が変わる。メイは可愛らしいというイメージが強かったが、夏恋は色っぽい印象を受ける。

 髪も

 「ご注文は?」

 「様子見に来ただけよ。あんた仕事がないから相方のロボにぷーちゃん言われてたんでしょ?」

 「プー太郎とは違う……!」

 プロトタイプが注文を聞いたら、ボロカスに言われてしまった。

 夏恋は冷やかすだけ冷やかして、いなくなった。プロトタイプは結局注文を取れなかったのだ。

 それ以降、中々お客は増えない。そこでプロトタイプは、ある作戦に打って出る。プロトタイプの赤い瞳が妖しく光る。

 「あれをしよう。水着で接客だ!」

 「やめておいたほうが……」

 レジーヌは止めた。実はプロトタイプの体には、結構古傷が残っている。遊人の憎しみが具現化したのがプロトタイプだけに、こればかりはどうしようもないのだから。

 プロトタイプが暑さでおかしくなっていたのは確かだが、レジーヌはプロトタイプが傷付くのを恐れた。実はレジーヌ、こうしてプロトタイプが手足を大胆に晒すことすらヒヤヒヤなのだ。

 自身もプロトタイプ同様に傷がある遊人の目線では当たり前過ぎて異質に感じなかったが、手足にも見えづらいが傷がある。プロトタイプの体など、手足の比でない傷があるのだ。

 「ふふっ、レジーヌ。この世には欠損フェチなる性癖があるのだよ。なら、傷フェチもあって然るべきだ!」

 プロトタイプは思いきってエプロンとTシャツを脱ぐ。ホットパンツはそのままだ。Tシャツの下は、白基調で赤い狼の模様が入ったビキニだった。

 だが、水着よりも彼女の体に残る傷が目立った。火傷の跡や、切り傷などがある。朱色が傷跡の修正を申し出たが、プロトタイプは断った。

 彼女は傷跡を自分が生きた痕跡だと言い、消すことを躊躇ったのだ。

 「ぷーちゃん……」

 レジーヌはプロトタイプを心配そうに見つめた。だが、その心配は杞憂に終わる。ある男がプロトタイプに近寄る。赤毛の男だ。

 「墨炎が言ってたプロトタイプって、あんたか?」

 「オリジナルを知っているのか?」

 男は墨炎、オリジナルを知っていた。墨炎と知り合いなのだろうか。

 「俺は山田田中丸。話に聞くより可愛いな」

 「えっ……?」

 田中丸がサラっとプロトタイプを褒める。プロトタイプは顔を赤らめて目線を反らす。レジーヌは緊張した面持ちでその様子を見つめた。

 「でも……私こんな傷あるし……」

 「その傷すら含めての評価だ。そのすべてが君なのだからな」

 奇しくも、プロトタイプの傷を田中丸は彼女と同じ意味で認識していた。

 「さあ、この出会いに感謝しつつ共に行こう!」

 「わあっ、私は、まだ仕事が……」

 田中丸に手を引かれるプロトタイプはレジーヌを見た。レジーヌはプロトタイプを、彼女も見たことのない明るい笑顔で見つめていた。

 「いってらっしゃい」

 レジーヌはプロトタイプを見送った。何度も自分に挑むクインの脳波に影響されて感情らしき物を得たレジーヌ。だが単なる破壊兵器に過ぎないレジーヌはその感情を、その愛情を注ぐ対象に飢えるだけとなった。

 そこに現れたのが、氷霧にズタズタに負けたプロトタイプだった。誰でもいいから、このわけのわからない愛を受け止めて欲しい。レジーヌは彼女を見つけたその日から、プロトタイプに尽くすことを決めたのだ。

 真夏の太陽に照らされたレジーヌの笑顔は、プロトタイプの目に焼き付いて離れなかった。

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