番外 七夕に願いを
七夕の番外が登場! 第二部初の番外には、なんと『あいつ』が登場だ!
え、誰かって? 『幻界戦線フロントワールド』の一話目から皆さんの前にいるアイツですよ。黒いコートの。
DPO ネクロフィアダークネス 光り輝く星々の海
「ネクロフィアダークネスにしては明るいエリアの名前ね。相変わらず中二だけど」
今日は七夕。イベント、七夕祭の会場に足を踏み入れた藍蘭はそんな感想を漏らす。その隣には、スカーレットがいた。
暗い夜の海は星の光を反射して輝いていた。砂浜には、この場所に7月7日の時だけしか生えない『ネガイササ』が生えていた。見た目は普通の笹である。
「さて、短冊をかけよう」
スカーレットは赤い短冊をネガイササにかける。藍蘭がその短冊を見るとこんなことが書いてあった。
『一位になりますように』
「……。イベントかな?」
何の一位かわからなかった藍蘭は、恐らくDPO内のイベントランキングだろうと予想した。スカーレットは藍蘭に対して呟く。何やら声には決意らしきものが滲んでいた。
「そう。一大イベント」
「そんなイベントあったっけ?」
藍蘭は首を傾げた。時系列的な話をすると、この時藍蘭はスカーレットがサイバーガールズのメンバーであることを知らなかった。
そして、それが原因で驚くのは、数週間後の話である。
「藍蘭は?」
「こんなん」
スカーレットは藍蘭が笹にかけてる短冊を見た。
『テストがこの世から滅びますように』
「テスト本当に嫌なんだけど! テストを滅殺したい!」
実に藍蘭らしい願いだとスカーレットは思った。なんだかんだ言っても、藍蘭は普通の中学生なのだ。
ただ、やはり時系列的な話をすると、スカーレットはこの時藍蘭が中学生であることを知らなかった。藍蘭が中学生か高校生くらいだと予想はしていたが、中学生と特定はできなかったのだ。
「他の人は……と」
藍蘭は他の人の様子を見出した。他のプレイヤーも願いを短冊に書いて、笹にかけている。そして、NPCの姿もあった。
「この生活がずっと続きますように……」
「ぷーちゃんにしごとがみつかりますように」
藍蘭とスカーレットは、プロトタイプとレジーヌの姿を見つけた。彼女達NPCにも、叶えたい願いがあるのだろう。かなり本気で手を合わせてお願いしている。
それにしても、ぷーちゃんなんてあだ名のせいでプロトタイプは無職扱いである。実際に無職だから仕方ないが。
ちらほら、カップルらしき男女のプレイヤーを見かける。それを見て、藍蘭は絶爪を抜いた。
「リア充が滅びますように、って願い追加しようか……」
「願い事無しで実行出来そう」
体に電気を帯びてる藍蘭を見て、スカーレットは呟いた。藍蘭も普通に強いので、ここにいるカップルのプレイヤー全員とデュエルしても勝てそうである。
「そうだ……リア充は殲滅だ……」
そんな藍蘭は、背後から恐ろしい声を聞いた。聞き覚えの無い声だ。
後ろからフラッと現れたのは黒いコートの男性アバター。フードを目深に被っていて、素顔は見えない。
「作者様の登場だよ!」
「「作者キター!」」
そう、このアバターが作者の級長だ。何故出てきたのだろうか。藍蘭とスカーレットに疑問が残る。
「既に異能バトルはやったから、残すは作者登場のみだったんだよ!」
そんな理由で級長は現れたのだ。世界観を番外でぶち壊した前例があるため、作者登場程度今更である。
「で、何の用?」
「辛辣な質問だな。今から七夕恒例、ロシアンルーレット大会をするに決まってんだろ!」
級長は全力で叫び、周りのカップルを呼び寄せた。イベントということで、カップルはかなり集まってきた。
「いるんですよねー。DPOが有名になった瞬間、カップルでいちゃつくプレイヤーがよ! 俺は彦星と織姫を引き離す、増水天の川になるのだ!」
級長は自動拳銃を取り出して、嫌味っぽく言った。藍蘭とスカーレットの頭には大量のハテナが浮かんでいた。スカーレットが呟く。
「なんで……七夕にロシアンルーレット?」
「愛知県岡崎市では七夕にカップルが実銃でロシアンルーレットするのが恒例なんだよ」
周りのカップル達に誰ひとり岡崎市出身がいないからか、全員が納得した。藍蘭とスカーレットを覗いては。
「実銃だよ? 日本にある時点で問題だよね?」
「お前はサブマシンガンもアサルトライフルも全部引っくるめて機関銃呼ばわりする某政党か。銃帯免許があれば日本でも実銃持てるんだよ」
藍蘭は正論を言ったが、級長に流された。カップルは馬鹿しかいないのか、全員が納得した。
「では始めよう。今回の銃はH&K、マーク23。通称、ソーコム! 頭に当てて引き金を引け。死ななきゃ成功だ」
級長は持っていた拳銃をカップルに渡す。藍蘭とスカーレットは首を傾げた。が、最初の挑戦者が銃を手にした。
「成功したら賞金1000万スケイルだ」
「よーし、やるぞ!」
「頑張ってー!」
ある一組のカップルの内、男が銃を手にしていた。彼女らしき女性プレイヤーが黄色い声援を送る。
そして、男が引き金を引いた。
「あっ、それ自動拳じゅ……」
スカーレットが気づいた頃には遅かった。男は引き金を引き、乾いた音と共に鉛弾を頭に減り込ませて倒れた。
「やーいばーかバーカ! ソーコムは自動拳銃だよーっだ!」
級長は嬉々として嘲笑する。ロシアンルーレットはリボルバー拳銃でなければ成立しないゲームだ。リボルバーに込めた一発だけの弾を、リボルバーを手で回転させることでランダムに配置する。
そうして成り立つため、自動拳銃では成立しない。
「鬼、悪魔ー!」
無様に死んだ男の、彼女らしき女性プレイヤーに散々罵られた級長だが、無視してゲームを続ける。
「リア充が騙されてメシウマ!」
「ですよねー」
藍蘭は喜んでいたので、スカーレットも流した。
「ついでに目隠しも忘れていたよ。はい、リボルバーと目隠し」
級長は彼女の方に目隠しを渡す。彼氏の後追い自殺させる気満々であることをスカーレットは見抜いた。ゲームでなければ級長は相当のゲス野郎だろう。
「今回の銃は強力なマグナムリボルバー! タウルスレイジングブル!」
級長は銀色の、巨大なリボルバー拳銃を手にしていた。拳銃のリボルバーにカートリッジで一気に6発装填した。そしてリボルバーを手で回して、回転が止まるのを待ってセット。それを目隠しした彼女に渡す。
目隠しは黒い帯で、非常にシンプルな物だった。彼女はリボルバー拳銃を頭に当て、引き金を引いた。
ガチリ。
「やった成功……」
「ハンマー上げてから撃てよー」
級長は喜ぶ彼女の手にあるリボルバー拳銃の撃鉄を上げた。これが上がってないと、引き金を引いても撃てない。
周りは糠喜びに冷める。彼女もガッカリしながら、もう一度引き金を引いた。
凄まじい音がして、彼女の頭が下顎を残して吹き飛んだ。級長は彼女が倒れて血をぶちまける前に、リボルバー拳銃を取り上げる。
「6発全部に入れたよバーカ!」
「「「ド外道め!」」」
藍蘭、スカーレットや周りのプレイヤーが叫ぶ。藍蘭とスカーレットはスラリと刀を抜き、級長の後ろにまわった。藍蘭にいたっては絶爪だ。そして、全力で刀を振り抜く。
「お星様になれ!」
「介錯つかまつる!」
「あぅぅぅぅぅぅぅぅぅんう!」
級長はどこぞの泣けるぜな米国エージェントみたいな断末魔をあげてお星様になった。
〇アイツの正体
級長「ルーウェンかと思った? 残念! 級長さんでした! フロントワールド一話目からいるだろ?」
藍蘭「騙されたー! 級長が始めて『小説家になろう』に投稿した二次小説『幻界戦線フロントワールド』のルーウェン・ヴァイサスかと思ったー! 今までの『残念私ですシリーズ』史上最も残念だー!」
クイン「級長も銃使いなんだ」
級長「ふはは、怖かろう」
氷霧「しかも脳波コントロールできる」
クイン「それどこのクロスボーン・バンガード?」
藍蘭「ていうか、今週これだけ?」
級長「まさか。総集編2もお送りするよ。第一部後半の総集編だ」
氷霧「墨炎死んだの?」
クイン「たしかに気になるな。死んだ描写はあるけど、なんかイロイロおかしいし」
級長「実は第一部の途中にその謎を紐解く鍵がある。ヒントは『余命僅かキャラなら必ずあるアレが遊人は……?』と『ナンセンスだな!』だ」
藍蘭「たしかに余命僅かだー、とか騒いでるのに、『アレ』が無いのは不思議ね」
クイン「楠木渚って人の時は思いっ切りあるのにな、『アレ』」
氷霧「余命僅かなキャラなら必ずある、『アレ』」