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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第二部
62/123

潜伏二日目

 7月26日、サイバーガールズ総選挙まで6日。晴天、猛暑。今日の服装、ライダースーツ。

 凍空プリンスホテル リディアの部屋


 「ただいま戻りました」

 「お帰り」

 私は冷房の効いた部屋に入り、汗が乾いて身体が冷えるのを感じる。猛暑の中、ライダースーツなんて着ているからだ。大型バイクに乗るのだから仕方ないが。

 私は一日中表五家関連施設を周り、指示を記した書類を配達していた。熱地学院大学では佐原に会うというハプニングもあったが、おかげで奴の人となりを見れた。

 『他人の個性の集合体でしかないのが私だ』か。私にはとても言えない台詞だ。

 「暑かった……汗だく」

 私は額の汗を拭う。バイクに乗っていたとはいえ、ヒートアイランド現象で発生した熱風を受けていたから、身体がほてってしまう。

 「なら、一緒にお風呂でも入るかい?」

 「……」

 私はセクハラスレスレ、いや、ど直球のセクハラ発言をした奴を見る。私の部屋にはもう一人いたのだ。宵越弐刈。そういえば私は、弐刈と同じ部屋に泊まっていたんだ。まだスーツをキッチリ着てるのかコイツは。

 弐刈が今日は朝いなくて、すっかり忘れていた。どうせ他の女の家にでもにいたのだろうと私は推測する。

 私は黙ってライダースーツのジッパーを全て下ろした。ライダースーツの下には何も着ていない。弐刈が反応したのは一目でわかる。

 「え、マジ?」

 「勘違いしないで下さいよ。一旦着替えるだけです」

 勘違いした弐刈を私は止めて、脱衣所に向かう。朝にシャワー浴びたけど、この汗はキツイわね……。ライダースーツを脱ぐ時も汗でベタベタして、少し大変だった。

 私はサラッと浴室でシャワーを浴びると、そのまま適当な服を着て弐刈の前に出る。服はオレンジでパーカー付きのルームワンピースに短いスパッツ。本来部屋着なのだが、最近はネットでこのファッションが話題らしい。

 ポイントはなるべく胸元を開けることと、スパッツを少し見せること、なんだとか。胸のサイズ次第ではこのファッションは成立しないらしい。私は成立しない部類のようだ。

 これはDPO由来のファッションという情報は持っていた。始めてこのファッションをしたプレイヤーの名を取り、墨炎風とか言われてるみたい。

 まあ、実際は『DPOしてる俺カッコイイ』みたいな流行りに乗っかった、にわか連中が現実でしているだけで、普通のDPOプレイヤー達には『墨炎の服装は二次元だから通じる』と不評だ。

 私はこんな服装で外へなど行かないがな。

 「最近噂の墨炎風……だと?」

 (いたよにわかが)

 弐刈がこれを知ってるとは思わなかった。ネット上では墨炎風肯定がイコールでにわかだからな。墨炎本人のコメントはないからなんとも言えないが。

 「だけど胸が大きいと違和感あるな……。やっぱり墨炎同様小さくないと」

 「あはは、セクハラですよ?」

 セクハラだよ、と私は本音を口にしたかったが我慢した。というか、今の発言は墨炎が一番怒るんじゃないかな?

 ゲームのアバターなら胸のサイズくらい自由に出来るだろうが、墨炎は『諸事情により』出来ないんだとか。

 「もう夕方ですね。それで、今後の予定は?」

 「君と一緒にいるよ」

 私は弐刈に予定を聞いて、顔が引き攣りそうになるのを堪えた。これは気持ち悪い。チャラい奴がいきなりロマンチストになりやがって……!

 「んっ……。冗談はよして下さいね」

 私はルームワンピースの胸元を閉めて言った。なんか、これきつくない? また大きくなったのかな?

 胸元を閉めたのは、弐刈の視線があったからだ。別に見せるつもりで開けてるなら構わないのだが、リラックスしたくて開けてるのだから、あまり見られるといたたまれない。

 「冗談じゃないさ」

 「普段と雰囲気違いますね」

 「女の子と二人きりの時はこうなんだ」

 弐刈はどうやら本気らしい。本来ビジネスライクな関係であるべき秘書も、異性として見るのかこの男は? 私としては、秘書は異性として見ないようにしてるけどどうしても……、みたいな葛藤の末堕ちていく姿が堪らなく好きなのだが。

 その時、電話が鳴った。この中身の無い海外アイドルの着うたは、弐刈の携帯から流れているものだ。

 「あ、電話だ。ハイどーもでーす!」

 弐刈はあっという間にキャラを戻す。本当に女の子と二人きりの時だけあのキャラなのか。弐刈はひとしきりの電話を終え、私に呟いた。

 「すぐに行かなければならなくなった。サイバーガールズに犠牲者がもう一人だ」

 「え……?」

 弐刈の口からは信じられない言葉が出た。サイバーガールズに犠牲者がもう一人? 縁の他に誰か死んだっていうの?

 「名前は秋庭椛。総選挙でも中間34位ってくらいマイナーだからまさか狙われるとは思わなかったけど……」

 「黒幕に近づき過ぎた?」

 「それはわからないけど、すぐに会議だ。待っててくれ」

 弐刈は部屋から出ていく。私は弐刈がいなくなったことを確認すると、こっそり机の上にあった弐刈のノートパソコンにUSBメモリを挿す。このメモリにはLEDランプが付いていて、それが赤く光る。

 これでこのパソコンのデータは吸い出せる。おそらくこのパソコンにはあるはずだ。犠牲者を利用してまで隠したいことが。

 さらにいうと、私や遊人みたいなクローン、熱地の計画の犠牲者達に関わる情報もあるかもしれない。

 LEDランプが消え、データの吸い出しが終わったことを告げる。私はそれを確認すると、USBメモリを回収してカバンに入れた。

 「今日はなんか疲れたなー」

 私はベッドに飛び込み、そのまま目を閉じた。高級感のあるベッドで、凄くフカフカしてる。ベッドは疲れきった身体を優しく受け止める。

 私は眠りについた。

 サイバーガールズメンバーリスト


 河岸瑠璃 生存(第5位)

 稲積あかり 生存(第6位)

 木島ユナ 生存(第2位)

 黄原彩菜 生存(第3位)

 緑屋翠 生存(第7位)

 赤野鞠子 生存(第1位)

 紫野縁 死亡:溺死

 上杉冬香 生存(第8位)

 秋庭椛 死亡

 泉屋宮 生存(第11位)

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