プロローグ2 異変の惑星
DPO ギアテイクメカニクル ルビーボルケーノ
ここはギアテイクメカニクルにある火山。ギアテイクメカニクルのステージ名は基本、鉱物+環境で命名される。スティールサバンナ、アイアンツンドラなどがその代表例だ。
「なんだよこいつら!」
冒険漫画の主人公みたいなツンツンヘアーをしたプレイヤー、ギンがエネミーを見て叫んだ。エネミーは赤い狼、エンライガ。弱いエネミーのはずだが、様子がおかしかった。
溶岩の流れる火山内部で、ギンとメイのペアは普通にクエストをしていた。だが、いきなり身体に花を生やしたエネミーに襲撃されたのだ。メイは一撃で倒され、戦闘不能になった。
「やたら強いな!」
本来なら軽く倒せるはずのエネミーに苦戦するギン。なんのイベントだ、と思考を巡らせる。惑星警衛士のデータベースにもなかった現象だ。
「【リベレイション=ハーツ】!」
ギンはリベレイション=ハーツを発動。剣から放たれた黒い斬撃がエンライガに迫る。直撃を喰らったエンライガだが、倒れない。HPもたいして減っていない。
「マジ?」
リベレイション=ハーツは墨炎やラディリスなど、極端な例が取りたざされて、最強の技と呼ばれることがある。だが、それは誤りだ。
リベレイション=ハーツの強さは、プレイヤーの心に左右される。純粋かつ強い感情でなければ、圧倒的な力とはならない。一般人では、ギンの様な技が手一杯だ。
「マズっ!」
エンライガがギンに飛び掛かろうとする。だが、炎の玉が飛んできて、エンライガを焼いた。生えていた花が焼け落ちた。
「あ、その手があったか」
エンライガは炎に強いエネミー。炎で攻撃しようなんて発想がギンにはなかったのだ。
次いで、何かが飛んできてエンライガを攻撃する。エンライガは普通に倒された。花が生えていた時の様な、やたら硬い耐久力も無くなっていた。
「なんだ?」
ギンは目を見張った。エンライガを倒したのは、空から飛んできたプレイヤーなのだ。
黒い鎧を身につけた黒髪の少女が、槍でエンライガを倒した。赤い翼を畳んでいるところを見るに、飛行スキルで飛んできたのだろう。
だが、ギンはそこで首を傾げる。飛行スキルはラディリスというプレイヤーの持つもの一つだったはずだ。そのラディリスは、先日の『円卓の騎士団事件』以来、誰も姿を見ていないという。
衛星兵器での戦いで突如姿を消したらしい。一説には、死亡したとも言われている。
「誰だお前は!」
ギンは少女に言う。少女はギンの方を振り返った。仮面をしていて素顔はわからないが、紅い瞳が印象的だった。
少女は何も言わず、翼を展開して飛び去った。
この日以来、花が生えたエネミーと黒い鎧の少女についての噂が流れ始めた。