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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第一部
54/123

第二部プロモーション

 第二部はサイバーガールズ総選挙編と散々煽ったので、今回はサイバーガールズ以外にスポット当てたよ。

 東京都 宵越テレビ スタジオ


 「これより、新社長就任式を行う」

 わざわざ、生中継で行われる新社長の就任式。これは宵越新聞及び宵越テレビが国民にとって重要な機関であるから、その両方を経営する社長の存在は国民が知るべきであるという、意味不明な理論で行われるものである。

 地下都市デステアの事件を隠蔽したことが海外のメディアにばれ、先代社長が引責辞任したのが、新社長を決めた理由だ。海外メディアの怒りを形だけでも沈める作戦だ。

 新社長の名前が読み上げられ、新たな社長たる人物がスタジオに姿を現す。

 「新社長は、宵越弐刈!」

 スモークや花火など、スターの様な演出がされ、新社長の宵越弐刈が姿を現す。弐刈にがりは、先代社長の宵越道夫の息子である。父である道夫とうふの後を息子が継ぐのは、日本的な観念から見れば順当だ。

 「どーもー! 弐刈です!」

 (不安だ……!)

 だが、弐刈はただのチャラい若者だった。高級なスーツを着ているのに、渋谷のチャラい若者みたいな雰囲気は消えない。

 株主達は不安に駆られた。自分が持つ株券が、紙屑と化す確率が急上昇しているのだ。当然だ。

 そんな中、その様子にほくそ笑む人物が観客席にいた。金髪をポニーテールにした、高校生くらいの年代の少女である。青い瞳が眼鏡越しに弐刈を見つめる。

 「滅ぶよね、宵越は。あれだけチョロイ男もいないね」

 少女は前髪をかきあげた。通路側の席に少女が座っていたわけだが、その逆には中年の株主がいた。株主の鼻腔を、ある香りがくすぐる。

 株主は香りに釣られて隣を見た。少女は長袖のカーディガンの前を閉じて、ショートパンツにニーソックスの足を組んでいる。僅かに見える素肌に目が行ってしまう。

 だが、セクハラギリギリに身体を見回して気づいた。かなりスタイルがいい。一見すると露出が少なく、露骨に『そそられる』という服装ではない。

 だが、敢えて隠すことで誘っているように見えた。仕草の一つひとつがそれを証明している。

 「楽しそう。今回は簡単に嵌まりそうだし、何よりあの人の仇、表五家」

 やたら色っぽく、なまめかしく聞こえる声を残して、少女は立ち去った。

 株主は、そのくらいになってやっと、鼻腔をくすぐる香りの正体に気づいた。

 それは、太陽の香りだった。


 国会議事堂 廊下


 「佐奈が切り裂き魔に襲われたが、大丈夫なのか?」

 『あの子なら大丈夫よ。むしろ、問題は切り裂き魔の被害者に見られる共通点』

 ナイスミドルという言葉がよく似合う人物が廊下を歩き、携帯で話をしていた。彼は藤井佐上。少子化担当大臣だ。

 渦海党が政権を取る現在、唯一渦海党以外から出た大臣である。渦海党は連立を組まないから、佐上は野党の議員だ。

 「共通点?」

 『愛花ちゃんから情報よ。九州の件も岡崎の件も、被害者に共通点があるの』

 電話の相手は妻、藤井奈々。本来の年より若々しく、美しい声が佐上の耳に届いていた。

 「美人は三日で飽きるというが、お前は飽きないな……」

 『何か?』

 「いや、なんでも」

 佐上は素直な感想を呟いたが、奈々には届いてない。佐上は電話を切った。奈々は仕草から喋り方まで、定期的に微妙な変化させている。だから、佐上は奈々の全てに飽きないのだ。

 「お前はいい女だよ、奈々。だが、娘の佐奈も負けず劣らずだ」

 家族への惚気を呟き、佐上は公務に戻った。だが、家族に惚気ているのは彼のみではない。

 国会議事堂の入口前で、二人の男が話していた。

 「うちの理架も、大人びた」

 「いえ、真夏お嬢様もでございます」

 真田総一郎は、仮面を付けた執事に対して娘の成長を自慢した。だが、執事も負けじと仕える者の成長を自慢する。

 執事は若いが、髪は白髪。仮面は黒い日本風のものだ。

 「しかし、お父上である寒気様を失った傷は深いです」

 「そうか。バトラーくんでも、そこまでは癒せぬか」

 バトラーと呼ばれた執事は現状を報告する。表五家の凍空財閥は、現在当主がいないのだ。

 「私の目的は表五家の崩壊。それだけです」

 バトラーは冷淡に言い放つが、パラパラと旅行雑誌をめくって真夏へのお土産を選んでるあたり、表五家だけでなく真夏も気にかけてる様子。

 「正直ではないな」

 「昔から、です」

 バトラーは総一郎の言葉に返し、雑誌で目星を付けた場所へ向かった。


 この欲望の町、東京で繰り広げられるのはなにも、アイドルの戦いだけではない。

 全ての人が、それぞれの思惑で戦う。数人の反則技インフィニティを孕みながら、人間の社会は毎日、目に見えない戦いが繰り広げられている。

 その社会を、作られたばかりのスカイツリーの展望台から見下ろす反則技インフィニティ達がいた。

 「人間の社会は私達には温い。だが、ぬるま湯も気持ちいいよ」

 切り揃えられた前髪の下に、必死に生きる人間達への侮蔑を含んで佐原凪は言った。佐原はいつでも制服姿だ。

 その右隣に、金髪をポニーテールにした少女が立った。生中継の就任式に飽きて、東京観光に来たのだ。

 「君もそう思うだろう? リディア」

 「貴女ほど私の人生、難易度低くないから」

 佐原の問いに少女、リディアが答える。ならば、と佐原は後ろに立つ仮面の執事に話を振る。

 「バトラーくんはどうだい?」

 「私の人生は、力のおかげでヌルゲーです。ですが、自分のシナリオが温いおかげで誰かを救う余裕がある、それはナンセンスなまでによいことです」

 バトラーは雑誌を見て、スカイツリーのお土産屋まで向かった。この場には、リディアと佐原しかいない。

 だが、佐原の左隣にスーツの巨漢が現れた。佐原は彼に見覚えがある。直接会ったわけでないが、有名人だ。

 「君はどうだい? 渦海黒潮くん」

 「人生をゲームなど、私は例えん」

 黒潮の言葉を聞いた佐原はその場を立ち去る。

 先程まで世界一高い塔に、反則技を持つ者達が集まっていた。そして、アイドルの戦いと同時に、インフィニティ達の戦いも始まるのだ。

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