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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第一部
23/123

番外 誕生日がバレンタインなわけ

 東京都 某所


 「ハッピーバースデートゥーユー」

 「何事?」

 東京都の某所にあるマンション。その一室で、順はバースデーケーキに蝋燭を燈していた。蝋燭は16本。

 エディは呆気にとられていた。チョコを渡そうとしたら、ケーキを机に出してるのだから当然だ。順の誕生日は3月3日なのだから、まだ先のはずだ。

 「なにそれ?」

 「兄さんの誕生日だからな。ケーキを」

 エディは聞いてみた。幼なじみの奇行には慣れたものだ。順が言うには、兄の誕生日だそうだ。順の兄、直江遊人はわけあって、離れて暮らしている。

 「へぇ、遊人の誕生日って今日なんだ。バレンタインと被ってて、なんか恋愛イベント的には損ね。あれ? 双子なのに誕生日が違う?」

 「戸籍的にな。兄さんはあの、渚の事件が起きる前まで、戸籍に登録されてなかったんだ」

 エディが双子なのに誕生日が違うという疑問に気づき、順が理由を答える。

 「引き取った愛花って刑事が、戸籍に登録する時に誕生日をでっちあげたんだ。理由はわからないが、バレンタインと同じ日に」

 エディは順の言葉を聞いて、窓の外を見る。愛花という刑事は何を思って、今日を遊人の誕生日にしたのだろうか。それだけが気になっていた。


 長篠高校


 「リア充爆発しろ!」

 長篠高校の教室で、門田が叫んだ。教室には、バレンタインでもチョコを貰えない男子が集まっていた。

 「質問、なんで厚真はいない? そして、雅と遊人も」

 クラス一頭のいい青木が質問した。頭が良くても、クラスメイトの行動は理解できないらしい。同じ男子であるはずの三人がいないのだ。

 「厚真は渡す側だとよ。雅も。遊人はモテるから呼んでない!」

 門田は質問に答えてやる。厚真は一体誰に渡すのか気になるところだが、雅は恐らく女子に渡す側へまわることを強いられたのだろう。

 「よいか諸君! 最近、悪質なマスコミによって友チョコなるものが流行している。そのしわ寄せで俺達は義理すら貰えない寂しいバレンタインを、強いられているんだ!」

 門田は集中線を出さんばかりの勢いで叫ぶ。しかし、全員の目線は教室の後ろにあった。

 「敵襲か?」

 門田もそちらを見るが、そこには長篠高校の制服を着た女子がいた。スカートだし、どう考えても女子。しかもすごく美少女。

 「あれ雅じゃね?」

 「え?」

 青木は気づいていた。その美少女が彼らが学級長、三好雅であることに。女装してたのだ。素材が良すぎて、誰も気づかなかった。

 「雅も進化する日々……か」

 門田は戦々恐々となった。雅は顔を真っ赤にしながら男子に言い放つ。

 「お、お前ら……、余ったからくれてやる! 別にお前らのために持ってきたんじゃないからなっ!」

 雅が差し出したのは段ボール。中には嫌というほど板チョコが入っている。箱買いでもしたのだろうか。男子は群がった。

 その様子を、涼子と煉那は教室の外から見ていた。

 「いやー。雅を近くのデパートで開催された『ベストなチョコの渡し方コンテスト』に出場させたら優勝して、チョコを大量に貰うとは……」

 「逆チョコもあり、というルールが功をそうしたな。私達も材料代節約できたし」

 どうやらこの二人は、女装させた雅を遊び半分でコンテストに出場させて、うっかり優勝したらしい。

 「遊人はどうしたの?」

 涼子は遊人の行方を聞いた。女子の中に混ざってチョコを作ってた厚真と、完全におもちゃにされた雅の所在は把握してたが、遊人だけ姿を見せてない。学校には来てたが。

 「遊人なら先に帰った。なんか、大量のチョコを抱えて」

 煉那は遊人の末路を見ていた。遊人は大量のチョコを貰い、これ以上はヤバいと逃走したらしい。逃げ足はかなり速いのだ。

 「奴はアイドルか……!」

 涼子は今だ遊人を探す女子の声を聞いて、驚きながら呟いた。


 マンション


 遊人は命からがらマンションに帰れた。帰りも中学時代の後輩、元同級生、さらに他校の女子からもチョコを貰いまくってた。

 「くそ……、なんで俺は中途半端に顔立ちがいいんだ!」

 「自覚してんだ……。まあ、あんたは昔から憂いを帯びた空気とセクシーボイスもセットでモテたからね。さらに、最近は親しみやすさもアップしたから、もう大人気」

 姉、愛花が机に大量に置かれたチョコを見て言う。愛花は弟が年々モテるようになっていくのを、姉として面白おかしく見守ってきた。

 遊人は憎しみ以外の感情がない。それが遊人にワイルドで危険な香りを与えてるのだと愛花は推測する。さらに最近は、その憎しみをDPOに取られたせいか、新しい方向で魅力を発掘しつつある。

 「そういえば姉ちゃん。俺の誕生日を今日にした意味ってなんだ?」

 「誕生日は祖母ちゃんが決めたよ。なんでも、あんたが初恋の人に似てたんだって。新田遊馬とかいう軍人だってな。そいつの誕生日が、今日だ」

 「随分安直だなー。遊って字もそっからきたのか……」

 遊人はチョコを数え始めた。新田遊馬とはどんな人物だったのか。遊人が知る由はない。

 次回予告

 俺だ。直江遊人だ。なんか円卓の騎士団って、人生最後のラスボスに相応しい奴らが現れたんだ。

 その翌日、なんでもうちのクラスに転校生が来るらしい。雅も緊張するわ、女子だから門田が色めき立つわで大変だ。って……、転校生はお前なのか?

 次回、ドラゴンプラネット。『太陽の少女』。次回も読まない奴は、ナンセンスだな!

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