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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第一部
16/123

番外 何は内?

 「節分と言えば豆まきだけど、恵方巻も忘れちゃだめよね。特別大きなそれを、佐奈か理架あたりにでもかじりつかせようかな。え? どういう意味って、いやらしい意味に決まってるじゃない。言わせんな恥ずかしい」

 −上杉夏恋、長篠高校にて節分について語る−

 宵越テレビ スタジオ


 「節分企画!」

 「偏向報道を追い出せ、サイバーガールズ豆まき大会!」

 宵越テレビの無駄に大きなスタジオ。そこでカメラに向かい、タイトルコールをする二人のアイドルがいた。サイバーガールズのメンバーだ。スタジオにはサイバーガールズの全員がいた。

 綺麗な髪をなびかせ、アイドルという存在を体で表してるような稲積あかりと、他のメンバーよりお姉さんな最年長、黄原彩菜がタイトルコールを担当した。

 「偏向報道って何かな?」

 (それはね、宵越テレビそのもののこと)

 「偏向報道ってのは、何かと偏った報道をすることだよ!」

 あかりが聞くと、彩菜がボソッと何かを呟き、台本通りの台詞を言う。呟いた方が本心に決まってる。

 「例えば……」

 (宵越とか宵越とか)

 「月刊白昼とかの雑誌に多いよね」

 本心を呟きながら、彩菜はあかりの質問に答える。スタジオには月刊白昼の表紙を板にはっつけただけの安っぽい的が置かれた。見る人が見れば、宵越らしい下品で品のない企画だと感じるだろう。それでも大半の視聴者から文句が出ないのは、彼らが宵越の報道を鵜呑みにしているからだ。宵越は正しく、白昼は間違っていると。

 「じゃあ、そんな偏向報道を追い出すために、豆まきしましょうか!」

 「間違ってもスタッフさんに投げたらだめよ」

 あかりは先程からの彩菜の呟きのせいで、その言葉を冗談として受け取るのに時間を要した。

 「懐かしいな……。病院で優くんと、豆まきやったっけ。鬼は緋色で」

 あかりは昔を懐かしんで豆を手に取る。緋色の扱いが酷いのは昔かららしい。今、松永優はどこで何をしているのか。渚の死後、優の安否はわからない。

 「では、豆を撒きましょう」

 「スタッフは外っー!」

 いきなり彩菜から豆を奪取した一人のサイバーガールズメンバーが、スタッフに豆を投げつけた。爆音と共に豆がスタッフに当たって爆ぜる。

 「ちょっ、冬香……」

 「何で切り裂き魔事件のニュース、長篠高校の生徒にインタビューしたのにお姉ちゃんの出番がないんだ! この給料泥棒共!」

 怒りと共に、豆を投げながらあらぶる冬香。短い黒髪に、気の強そうな目。冬香は謎の強肩でスタッフを撃退した。

 「一般人に尺割くわけにはぶっ!」

 「ディレクター!」

 ディレクターの顔面に豆がヒット。トレードマークのグラサンが砕ける。

 冬香のお姉ちゃんを愛する故の凶行を、サイバーガールズは誰も止める気にはなれなかった。冬香のお姉ちゃんとは一体だれなのか。長篠高校にいるのは確かだ。冬の字が入るし、名前に関連があるかもしれない。

 「お姉ちゃんはさておき、投げるならこっちの方が……」

 「緑屋さん……、それは的!」

 右目を前髪で隠した、大人しそうな緑屋翠が冬香に板で出来た的を渡す。合板より安くて割れやすい単板とはいえ、当たれば痛い。

 大人しそうなのに、時々やることが凶悪だ。黄原は驚くだけで止めはしなかった。

 鋭く光る板の角に、スタッフが恐怖を感じたのは言うまでもない。

 「やれやれ……。うちの騎士団並に馬鹿ばかり」

 舌足らずな声で最年少の赤野が呟き、スタジオを去った。スタッフの悲鳴が聞こえたのは、赤野がスタジオの扉を閉めた直後だった。


   @


 自身が楽屋に戻った頃にスタッフが冬香に殲滅された、という事実を赤野は後に知った。

 サイバーガールズメンバーリスト


 稲積あかり 生存

 黄原彩菜 生存

 緑屋翠 生存

 ××冬香 生存(都合により苗字は伏せる)

 赤野鞠子 生存


 これが何を意味するか、貴方が答えを知るのは随分後の話になるだろう。

 知ったら知ったで後悔するがね。

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