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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第三部
116/123

視界ジャック17 決戦の火蓋

 掲示板サイトのカキコミ

 1「俺らもついに表五家潰せる件」

 2「おまいら祭だ!」

 3「ありがとう渚!」

 4「ありがとう自衛隊!」

 5「ていうか自衛隊が協力www」

 6「自衛隊の教官である山田佐藤之介が実践に近い訓練をDPOでしようとしたら平和ボケに辞めさせられたらしい」

 7「そういえば元円卓幹部の田中丸ってそいつの息子じゃね?」

 8「田中丸の発言と苗字を合わせて考えれば確かに」

 決戦当日 首相官邸 会議室


 『繰り返します。我々の条件を呑まない場合、首相官邸等に標準を定めたミサイル迎撃システムを発射します』

 「舐めた真似を……!」

 渚からの連絡の録音を聞いた渦海親潮内閣の閣僚は戦慄した。要するに、ゲームしなきゃ殺すぞということである。ニュースでよく見かける官邸の会議室もざわつく。その中でも、官房長官の柱支は落ち着いた態度を取る。

 「いいではないか。負けても命は取られん」

 「命は取られんが、これはゲームとはいえクーデターだ! 改造ウェーブリーダーの手配はまだか! 昨日手配しろと言ったはずだ!」

 だが、親潮は焦りを見せる。そして、かつて渦海が使用した改造ウェーブリーダーを使おうとしてさえいた。この放送の直前に改造ウェーブリーダーを手配できるという連絡があり、これでは渚の思う壷だ。

 「ゲームなら勝てると考えた馬鹿はゲームで潰すに限る」

 痩せた怪しげな男、外務大臣の外環そとわ誘逸ゆういちは親潮に賛成の立場を取った。

 「いくら私達賢い文官が正しい政策を掲げても暴力で潰す! だから自衛隊は違憲なんです!」

 おかしな持論を金切り声で説くのは防衛大臣、平和。すでに別ルートから改造ウェーブリーダーであるヘッドフォンを用意しており、クインとの決着を付けるつもりだ。

 「全く金の無い連中は失う物が無いから何するかわからん」

 財務大臣の楼碑ろうひ嵐は太っていて、全ての指に宝石がジャラジャラ付いた指輪、全ての歯が純金というアホみたいな成金だった。吸ってる葉巻もスーツも高級ブランドだが、明らかに似合わない。

 支は恐らく、嵐が一番DPOプレイヤーに怨まれてると実感した。順が名鳩を救うために必要な薬を作る機材を、己の利益のために輸入できなくしたのは彼だ。その話が流れたら、名鳩を慕う全てのプレイヤーに怨まれる。

 「へいへい! ヒキニート共相手にビビってんじゃねぇよ!」

 スーツもろくに着こなせず、席にも座らない文部大臣、かしら貴羽たかはは支をして、なんで大臣になれたかわからない人間だ。そもそも、なんで当選できたのかさえ不明である。彼の出馬する選挙区はどうなっているのか。

 「では、改造ウェーブリーダーを使ってみるか?」

 「い、いやいやいや! か、改造ウェーブリーダーなんて無くてもヒキニートに負けねぇし!」

 支が改造ウェーブリーダーの使用を頭に検討したら、全力で断られた。多分、改造ウェーブリーダーを使って熱地親子みたいになるのが怖いのだ。

 「ふん。わしが金で買った数多くの体験があれば、貧乏人など恐るに足らんわ。わしは様々な剣術や格闘技の興行を見てきた」

 嵐は体験を元に自信をつけているが、見ただけでは意味がない。DPOプレイヤーは実際に剣術や格闘技で戦ったことがある人間の集団と変わりがないのだから。

 「あら、農林大臣がいませんね」

 平が農林大臣の不在に気付いた。支はもはや手遅れと、農林大臣の命を諦めた。


 高速道路


 その農林大臣は高速道路を疾走していた。官邸に止めてあったオンボロワゴンだったが、消えても不審がられないと考えて使った。

 「あーくそ! なんだこの車、なんか臭うぞ!」

 車は何故か後部席が全て倒され、そこに毛布や丸まったティッシュが散らばっていた。窓の開閉が手回し式という骨董品ながら、スピードは速い。

 農林大臣が逃げたのは死にたくないからだ。親潮は改造ウェーブリーダーの使用を強要するだろうし、参加しなかったらミサイルが飛んでくる。少しでもミサイルが届かない場所に逃げるのが得策と考えたのだ。

 「ん? メール」

 農林大臣は携帯にメールが届いてることを確認した。仕事のメールかもしれないので、車を高速道路内の安全地帯に寄せて、完全に車を止めてからメールを見る。

 『m9(^Д^)』

 「え?」

 メールの内容は顔文字だけ。しかし、農林大臣は轟音を耳にして、音のした方を振り返った後、わざわざ車を路肩に止めたことが間違いであることに気付いた。


 ミサイルが自分の鼻先まで迫っていたのだから。


 「ひぎゃあああああぁあぁぁぁ!」

 農林大臣の悲鳴と共に、ミサイルの爆音が昼間の高速道路に響いた。


 自衛隊駐屯地


 「あ、ミサイル飛んだ」

 「マジで?」

 自衛隊駐屯地ではミサイル迎撃システムが展開していた。渦海黒潮は、その内一つのミサイルが飛んだことを確認した。自分達で展開しておきながら、山田佐藤之介も驚いた。

 「まさかそんな馬鹿がいたんだな。南無南無」

 「多分、あの自信過剰な大臣勢で逃げるとしたら臆病者の農林大臣でしょうね」

 黒潮の予測は的確だった。ミサイルの犠牲になったのは確かに農林大臣だからだ。

 彼らは渦海親潮内閣を脅す為に自衛隊のミサイル迎撃システムを展開した。渚がハッキングできるのはコンピューター制御の標準だけで、システムを積んだ車両の展開は人の手で行う必要がある。

 その作業をするため、総一郎や黒潮は各地を転々としていた。

 「さて、私は佐上大臣が総理になる準備でもするか」

 弱冠14歳の渦海党後継者は今後の日本を任せられる人物への支援をすべく、駐屯地を後にした。


 首相官邸 浴室


 「はあっ、はあっ、げほっ!」

 首相官邸の浴室にリディアはいた。シャワーを浴びてる途中で発作が起き、血を吐き出していた。浴室の床に落ちた血は、流れるシャワーで排水口に運ばれる。

 リディアは床に座り込む。熱いシャワーを浴びても身体は冷えていく。

 「もうなの? 私は……死ぬ?」

 徐々に目の前が暗くなる。リディアは立ち上がり、シャワーを止めると浴室を出た。身体を拭く気力も起きず。バスタオルだけを巻いてベッドルームに戻る。

 「最後に……私が世界を混乱に……」

 リディアはうわごとの様に呟き、ベッドに身体を投げ出した。スマホとウェーブリーダーを取り出し、ログインの準備をする。繋がるウェーブリーダーは、改造ウェーブリーダー。

 「うっ……何だろう、最近吐血でもないのに気分が……」

 リディアは吐き気を感じながら、ゆっくり目を閉じた。決戦開始の4時まで、時間がある。

 掲示板のカキコミ

 106「お前ら準備OK?」

 107「いつでも!」

 108「一般人にも未来は作れるって、見せてやるぜ!」

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