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ドラゴンプラネット  作者: 級長
第三部
112/123

視界ジャック16 直江姉と真田父

 掲示板サイトのカキコミ

 1「渦海親潮がそろそろマジキチな件。やべえだろ」

 2「kwskくわしく

 3「海外に金をばらまいてるらしい。特に意味もなく」

 4「日本と一緒に沈む気か?」

 5「中枢に金で引き込んだ外国人呼んで、政権交代しても機密が海外にだだ漏れして国が機能しない様にするってさ」

 6「マジかよ」

 7「表五家が支配した分野全ては無理だから、とりあえず政権交代したとこ叩いてもらえる様にまずはテレビ局だって」

 8「それじゃあ宵越潰して殺された弐刈さん犬死にじゃないすかヤダー!」

 9「戦後の混乱期並にドサクサ紛れで誰が何処に入るか……」

 理架が切り裂き魔に襲われたとの一報を受けた真田総一郎は黒羽組の車で岡崎に戻ることにした。岡崎を離れたのは渚から頼まれた『ある仕事』の為であった。途中で車は、岡崎の警察署では集め切れない情報を名古屋まで出向いて集めていた直江愛花を拾う。

 こうして四人乗りの車は前に運転手、後部席に総一郎と愛花が乗ることとなる。

 車は混雑に巻き込まれずに道を進めると思われたが、高速で渋滞に巻き込まれてしまった。一般道では『ヤクザの車』であると知った他の車が道を譲ってくれたが、さすがに渋滞では譲りようもない。

 「くっ、渋滞か……」

 「理架の命なら順くんが取り留めてくれるから大丈夫です」

 焦りを見せる愛花に対して、総一郎は落ち着いた態度。しかし内心では不安を感じていた。いくら天才松永順といえ、搬送された時に死んでる人間は治療出来ない。その可能性が無いことを願うばかりだ。

 「それより刑事は二日ほど寝ていないのでしょう? お休みになって下さい」

 「いえいえ、このくらいは……」

 愛花の顔色は少し悪くなっていた。総一郎は愛花に気を使う。正直娘のことが心配で他人に気を使う余裕などなかったが、生来より染み付いた性格はそう変わるものではない。何より、今も理架を自分の娘の様に心配する愛花を他人とは思えなくなっていた。

 「このくらい……学生の頃にドラクエ不眠不休クリアに挑んだ時ほ……どでは」

 明らかにうつらうつらとしてきた愛花だが、それでも眠らない。愛花は最早、心配で眠れなくても体が強制的に眠らせようとする段階に来てた。刑事とはいえ、知り合いが事件に巻き込まれれば平常心でいられない。

 「あなたはだんだん眠くなーる」

 「大丈夫です」

 総一郎は限界を迎えた愛花に居眠りの言い訳を与えるべく、即座にソーイングセットの中から縫い糸を取り出して適量を切り出し、五円玉に通して催眠術をかけ始めた。しかし愛花は眠らない。

 「クラシックでも聞きます?」

 「すいません。この車、レコーダー壊れてるみたいです」

 総一郎は愛花をクラシックで寝かそうとしたが、黒羽組の運転手に妨害される。黒羽組に限って不完全な車で客人を送迎するとは思えないが、ヤクザ的にはやせ我慢が美徳なので愛花を応援したいからわざと言ってるのであろう。今、車内はラジオが流れているので確認のしようが無いが。

 「総一郎さん、順さんから連絡です。娘さんは無事に命を取り留めました。あ、お嬢の切腹止めないと……」

 運転手は仲間からの連絡を総一郎に伝える。運転手から渡された携帯には、順からのメールが映る。運転手は組長である椿の切腹を止める方法に頭を切り替えていた。

 「よかった……」

 愛花は安心して、深くシートに腰掛ける。よほど安心したのか、ポニーテールにしてある髪を解いた。フワリと甘い匂いが総一郎の鼻腔をくすぐる。香水の人工的な匂いではなく、愛花自身の香りだった。

 「むにゃ……」

 そのまま愛花はシートに倒れ込み、眠ってしまった。体重が傾いて、体を総一郎に預ける。その寝顔は普段の凜とした表情からは考えられないくらい無防備だった。

 「やっと寝たか」

 愛花が無理をやめたので、総一郎は息をついた。こういう人間は言ったところで無理をやめない。それは理名で痛いほど経験していた。総一郎はしばし、愛花の寝顔を見て思った。初対面は衝撃的だった。まさか気配だけで殴りかかってくるとは思いもよらなかったのだ。

 始めは舞踏派で男勝りな人だと思っていたが、その印象は早い内に崩れることになる。愛花の初撃を、テレビカメラを盾にやり過ごした総一郎。だが、そのせいで愛花は少し怪我をしてしまった。

 その時、総一郎は愛花の指に絆創膏を巻いたのだが、その際の愛花の反応は数秒前の印象を裏切るものだった。まるで男性に触れたことが無いかの様なドギマギした反応。優秀な刑事ではあるが、男女の関係には不慣れだったのだ。

 愛花が全ての男性相手にこうなるわけでは無いことは、サイバーガールズ総選挙の時に知った。何故自分相手にこうなるのか、今まで恋愛を妻である理名としかしたことのない総一郎にその真意を察することは出来なかった。

 その後は切り裂き魔を追いつつ、水面下で表五家を潰す活動を共にしてきた。愛花がいなければ、渚に頼まれた仕掛けを警察署に施すことは出来なかった。国の重要機関に『仕掛け』をすることで、遊人や理架が表五家と戦う土壌が出来るという話だった。

 「戦いが終わったら、考えるか」

 総一郎はその戦いの中で、愛花に惚れかかっていた。総一郎の年が年だけに一目惚れとはいかないが、じっくりと愛花という人物を知ることで好きになっていた。理架にも母親が必要だという打算もあった。色気づかない娘を見ると、男手一つにも限界を感じていた。

 この人なら理架を任せられる。そして何より、自分の妻としても理想的だった。感情と打算が一致した為、尚更好きになった。感情だけで盲目に恋しない辺りが総一郎の年齢を感じさせる。

 「理名にも『私を忘れて理架の為に再婚しなさい』とか言われてたな……忘れてた」

 総一郎はこっそり、再婚を考え始めていた。

 掲示板のカキコミ

 261「救いは無いんですか!」

 262「マスコミに紛れて代わった政権を叩くってわかりゃ、マスコミ信じなきゃいい。いつもと同じだ」

 263「政権取った党にこれを教えないと……」

 264「藤井佐上大臣のいる『愛羅武党』なら政権交代前提にコツコツ政策練ってるし大丈夫だろ」

 265「何だその暴走族みたいな党www」

 266「宵越も名前ばっか叩いてるけど、中身は真面目な党だよ」

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