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act 10

(あたし……こんな優柔不断な女だったっけ?)

一週間前から、何度となく思ってきた。


あれから、本当に新と会う事がなくなってしまった。

もしかしたら、会う事を向こうが避けているのかもしれない、そうも思った。


付き合っても居ない。

まして、自分から近づかないでと言ったにも関わらず、頭の中には、いつも新が居た。

考えなければいい。

そう思っている時点で考えている自分に、矛盾してると自嘲した。


「元気ないね」


そういえば、今は沙柚とランチを楽しんでいるはずの時間だったと、今更季菜は思いだした様に、止まっていたフォークとスプーンを動かした。


「あっ……ごめん」

「謝らなくてもいいけど、最近元気ないなぁって思ってただけ……」

季菜の顔を、伺うようにしている沙柚は、その原因が既に分かっている様に見えた。

「別に……」

言いかけたが、沙柚にはどんな嘘でもバレてしまうだろうと思い直し、一度言葉をやめ、再度開けた。


「ただ……ここの所考える事が色々とありすぎで、頭がパンクしそうになっちゃってて」

「店の事……、新さんの事……?」


認めてしまえと、季菜は頷いた。

「ホストなんて……初めてだったから……なんとなく、負けるのが嫌って言うか……」

「負け……あの人、そんな駆け引きしてる風はなかったけど」

「でも、ホストだし……」

「それって偏見」


沙柚からの言葉を否定が出来ず、季菜は拗ねたように口を尖らせた。


「――焦っちゃってるのかも……」

「結婚に? まだ季菜も私も若いし、そんなに深刻に相手なんて探さなくても自然にときめく相手がその内見つかると思うけど……」


というより、季菜にはその相手が素手に見つかってるじゃないかと沙柚は思ったが、また言えばムキになって否定するのは分かっていたため、あえて言う事はなかった。


「でも、あんまり季菜が悩むなら、合コンでも開いてあげようか?」

「う~ん。合コンかぁ……」


あまり気乗りはしない。

というか、元々あまり季菜は合コンが好きじゃなかった。


「じゃナンパにたまには付き合ってみるとか?」

「え~」


何を言ってもNOと言う季菜に、沙柚はため息をつく。

「ま、とりあえず、街をプラプラして見ようよ。男なんて居なくても、私が居るでしょ?」

どや顔でそういう沙柚の言葉に、季菜はくすりと笑った。


「じゃぁ、今日は仕事もないし、夜まで付き合ってくれる?」

「元々そのつもりで、今日は朝早くから来ましたよ? 季菜さん?」

得意げな沙柚の言葉に、季菜は参ったとばかりに笑い出した。

お手並み拝見しようじゃないかとでも言うように、季菜は伝票を持った。







久しぶりにこんなに歩いたと、二人が公園の噴水の前、ベンチへと腰を下ろしたときには夜7時半を回っていた。

読みたい本、雑貨、インテリア、回りたいところは、今日で全部まわったといっても良かった。

噴水からは水が出ているが、其処に光が当てられ、キラキラと水は光を帯びていた。


脱力した体を、背もたれに預ける二人。そんな二人に視線は集まっている。


「沙柚ぅ~見られてますよ?」

「何いってんの。それは季菜でしょう?」

くすくすと笑う二人に、誰が一番先に声をかけるか。そんな面持ちで男は見ていた。

気付く人は、姫嬢の現No1、そしてNo2だと気付いているかもしれない。



「どうする? 荷物もちに、いっそ誘いに食いついちゃうのもアリだと思うけど?」

「荷物もち? あんたそんな事言ってたら、あいつに怒られちゃうよ?」

「大丈夫! たまにはいいの」


彼氏にベタ惚れである沙柚が、本来なら、そんな事を言うはずがないのは、季菜が一番分かっている。

だからこそ、この台詞は自分の為なんだろうと季菜には分かった。



「しょうがないなぁ。さ・ゆが、男と羽目を外したいって言ったんだからね?」

意地悪そうに季菜は言う。


どうとでも、そんな風に沙柚は両手を挙げた。


そして間もなく、男が寄ってきた。

さて、どんな男だ? 思って二人は靴を見た。

合格点。


ふっと視線をあげた。


「えっ……!?」

ほぼ重なった声。


何で、どうして、だって……。

言いたい事は沢山あった。

そんな思い全て飲み込んで、隣の沙柚を見た。


「何で……新さん?」

その言葉に同意した後、沙柚と二人季菜は、不敵に笑う新を見つめ、唖然とさせた……。





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