サイゼリ“ア”
おでかけです。
最近まで【ア】だと思ってました。
よろしくお願いします。
美女が横にいる。彼女は桜井さん。俺の監視員だ。
常に俺の監視をしてる。理由は分からない。
「佐藤様は自転車に乗っても大丈夫ですよ。私は走るので」
速っ。気遣うだろ。
「歩こうかな…」
今日は桜井さんが家に来てから2日目。本格的に彼女との日常が始まるだろう。
朝食をろくに食べれなかったので今日は外で朝食しようという話になった。
「ミリタリーショップでレーションはどうでしょうか。レーションは落下などの衝」
「やだ」
レーション推しすぎだろ。
俺は歩きながら適当に案を出す。
「サイゼリアとかは?」
たまに番号全部覚えてる猛者いるよね。
「サイゼリア…?行ったことないかもしれないです」
お、楽しみ、美味さを伝えたい。
するとすぐに桜井さんが口を開いた。
「サイゼ〇ヤなら知ってるんですが…」
パロディで言ってんのに全部ガチで言うなよ。メタすぎるんだよ。
二人でサイゼリアに行くことになった。歩くのいいね。運動にもなるし。
俺は歩きながら横を見て言う。
「桜井さんって走ったらどんぐらい速いんですか?」
桜井さんは首を傾げて言う。
「走りたいんですか?」
「いいや、ただ聞きたかっただけだよ。歩いて行こう?」
うん。どれぐらい速いんだろうなあ。テロ止めた人って。
桜井さんは少し口角を上げた。別に機嫌が悪い訳じゃない。真顔から少し笑顔になった。
「歩きたい…珍しいですね」
ん?何がだ?
「?」
よく分からなくて眉間に皺を寄せてしまった。
「歩きたいのって普通じゃないの?走るの疲れるし、あんまり好きじゃないよ」
俺は櫻井さんの横に並び直し歩く。すると桜井さんは遠くを見ながら話す。
「私、佐藤様より前も監視対象者の方々を監視していたのですが、その方々は皆、私と話すのがあまり好きではないのか、2人だけの時間をなるべく短くしようとされていました。私、人の気持ちを予想しても本人の気持ちとは…多分違うんです。私が勘違いしてるかもしれませんが、佐藤様は私と居ることを嫌がらないのですね。」
桜井さんの性格上、こんなことは話さなそうだが、恐らく対象者からの質問はなるべく答えなきゃいけないのだろう。
そして桜井さんは人の気持ちを理解するのは苦手なのは分かってた。今すごく頑張って読み取ろうとしてくれてるのがよく分かる。
「俺は桜井さんと話すの楽しくて好きだけどね。変な回答しやすいし」
俺の口から自然に出た言葉だった。
「褒めていますか?」
「褒めてるって!面白いってことだよ」
こういう部分が好き。
「俺の前の対象者ってどんな人だった?あんま言えない?」
桜井さんは前にかかった髪を手で横に流した。
「言える範囲ですと…佐藤様のような学生だったり、ご高齢の方だったり…あと5歳の女の子もいました。」
結構年齢の幅広いんだな…ますますなんで俺が監視対象なのか分からねぇ…
「今までの対象者の中で…私に悪い印象を持ってる人はもちろん多いのですが、良い印象を持ってくれる方はいても、心を完全に開いてくれる方はいませんね。当たり前ですし、求めてもいませんが」
まあムズいよな。ずっと自分のこと見るんだしな。
「悪い印象を持ってる方は皆私と話さず先に歩いていってしまいます。5歳の女の子も走って行ってしまうし、悪い印象を持たれていたと思います」
それは多分走りたかっただけだろ。
「そっか。大変なんだね」
桜井さんは少し下を向いた。
「私は大変でもどうでもいいんです。対象者の方がストレスを溜めたり、嫌な気持ちになってしまうのがすごく悲しかったです。それを踏まえて頑張っているつもりですが、私よりも対象者の方の方が頑張っていると思いますね」
そんな事はないでしょ。
「もちろんストレスは溜まるかも、見られると疲れるし、でも嫌な気持ちになったことは昨日も今日もまだ一回もないよ」
美人で優しくて楽しい人なんだもん。ずっと家で一人だったんだもん。寂しかったから。すごく嬉しかった。
「桜井さんは俺を嫌な気持ちにさせないで。俺は絶対に嫌な気持ちにならないようにする。そしたら桜井さんも悲しくならないでしょ?」
文才が無い俺が無理やり創った言葉。理解されてるかも分からない。けど言いたかった。言わなきゃだと思った。
多分過去の対象者は桜井さんのことなんて嫌いじゃない。恥ずかしいだけだろうね。桜井さんは「恥ずかしがってる」って捉えずに「怖がってる」「嫌い」って捉えちゃってるんだろうな。
桜井さんが前を向いた。
「日々精進します。」
その桜井さんの言葉は俺、そして桜井さん自身に言った言葉だと思う。
とか言ってたら着いた。
サ イ ゼ リ ア
ドーン。って言うか、ショッピングセンターの中にあるんだけどね。
サイゼリアは6時から開いている。サイゼリ「ア」はね。そして今日は平日。今は8時。店内を見る感じ客は俺たち以外に2組だけのようだ。
すると桜井さんは口をポカンと開けながら俺の方に向き質問をした。
「この紙はなんですか」
「ここに名前を書くんだよ」
すると何故かモジモジしながら申し訳なさそうな顔をした。
「申し訳ありません…桜井という名前は偽名で…入れないです」
いいだろ。てかどっちか書けばいいだけだし。フリ〇ザとか書く奴いるんだから。
「じゃあ俺の苗字の佐藤って書くからいいんだよ!」
「ですが対象者の方の個人情報を…」
めんどくせぇな。
「あの…今空いてるのでもうご案内しますよ?」
あ。
二人で席に着きメニューを見る。前に俺と桜井さんで向き合う感じだ。
「ちなみにお支払いにつきましてはA.H.Aが負担しますので、佐藤様はどうぞお気になさらず」
A.H.A、ちゅき。
「じゃあ佐藤さんも自由に食べてねー」
「ありがとうございます」
俺は何にしようかな…と考えていると桜井さんが呟く。
「2103…」
名前で言えよ。
「ミラノ風ドリア?定番のやつだよ」
ちなみに俺は食ったことない。安いから良いんだろうけど。
てかちゃんと桜井さん悩んでる感じだな。
「熱量はどれぐらいなのでしょうか…」
「カロリーのこと?書いてあるかな、ないや。調べるね」
ミラノ風ドリアってカロリー高いのか低いのか分からねぇな。
俺はスマホをポチポチしながら調べる。
「うーんとね、520kcalだってさ」
あ。不満そうな顔してる。口角が下がっちゃったよ。
「少ないですね…」
少ないのか?500ってさ。
「レーションの半分にも満たないじゃないですか。」
レーション基準にするなよ。
「でもレーションって訓練とかでエネルギーめっちゃ消費する兵士のためのやつでしょ?監視は疲れるだろうけど、そこまで運動はしてないんじゃない?」
桜井さんが急に立ち上がって話す。
「私は監視中は1mmだけ小刻みに跳躍をしているか、膝を1mmだけ動かしてスクワットを常にしていますよ。」
キモいキモいキモいキモい。え?近くで見てみる。うわめっちゃ細かく跳ねてる。桜井の1mmじゃねぇか。
桜井さんが席に座り直す。顎に手を当てて悩んでる。うん、ごめん思ったこと言うよ?
「2個食べればいいんじゃない?」
…
「そうします。」
さっきのレーションのくだりはなんだったんだ…
俺はカルボナーラを頼んだ。
桜井さんがメニューをメニュー立てに戻す時気になるものを見つけたらしい。
子供のメニュー表を左手に持ち、右手で指を指した。なんか笑ってるし。
「佐藤様。このメニュー表のまちがいさがし、10個中まちがいが7つしかないです。」
この一瞬で7つも見つけられたのかよ。そして桜井さんにバレずに耐えたまちがいも強すぎるんだよ。
「それね、めちゃくちゃムズいまちがいさがしなんだよ」
やれやれ、という顔で桜井さんが言う。
「佐藤様。難しいのではなく、まちがいが少ないという意味です」
俺もやれやれという顔をして言う。
「桜井さん、本当に10個あるのよ」
すると桜井さんは「え?」と発し、汗がダラダラ流れてくる。
「私が…見つけられてないまちがい…?いや、間違い…」
ショック受けすぎだろ。
「絶対に見つけます」
目付きが変わった。彼女の目は獅子のよう、いや、獅子と同じだった。
顔をブンブン振りながら右と左の絵を見比べてる。
発電できる速さだよ。
「キャベツ!!!」
ん?今キャベツのところに間違いがあったってこと?なんのキャベツなんだ。怖い。ドリンクバー行ってこよ…
「佐藤様。どちらへ向かいますか」
びっくりしたわ。なんで気付くんだよ。
びっくりしたせいで俺はドリンクバーに行かずに、持っていたコップをテーブルに置いて座った。
まだ桜井さんは顔をブンブン振っている。
「さ、桜井さん…?あと何個なの?」
と聞くと顔をブンブン振ったまま答えた。
「3つです」
1個も見つけてねぇじゃねぇか。さっきのキャベツってなんだよ。
「桜井さん、タイムアップかもしれないよ」
と惜しみながら(?)伝えた。店員さんが来たからね。
「…」
桜井さんの目のハイライトが消えた。え?自分の軍が敗戦した軍人みたいになった。レーションのくだりのせいでこういう表現が一番最初に出てしまった。
完璧主義の桜井さんにとっては絶望なのかもしれない。この人多分収集癖あるだろ?
絶対にソシャゲとかはやらせられないな。課金額がすごいことになるぞ。
ミラノ風ドリアが2つとカルボナーラがテーブルに置かれた。
「んじゃあ、いただきます!」
「いただきます」
合掌して食べ始める。
丁寧に食べ始める桜井さん。特にツッコむ部分も無かった。1口目で桜井さんが「これ、美味しいですね」って言ったくらいで、その後は静かに食べていた。
友達と行くと楽しいですよね。
本当に節約したい時は4人でピザを4等分して割り勘してます。
次もよろしくお願いします。




