プロローグ
透き通るような青空に柔らかな日差しがふりそそぐ平穏な村。
そんな村の出入口で子供が一人、遊んでいた。
「…あ!」
子供の遊びの手が止まる。一人遊びをしていた子供は、村に向かって歩く人影に気がつく。
「琵琶法師様だ!」
人影が誰なのかがわかった子供は、人影に向かって大きく手を振った。喜ぶ子供の声が聞こえた琵琶法師は手を振り返す。
「また、きてくれた!」
琵琶法師の元に駆け寄った子供は、琵琶法師の手を取る。
そして、子供村の中心にある巨樹の根元に琵琶法師を連れていく。
「あ、琵琶法師様!」
「法師様!またお話を聞かせて!」
連れて来られる琵琶法師の姿に、巨樹の根元で遊んでいた子供達が遊びをやめた。
巨樹の根元に連れてこられた琵琶法師は、背負っていた琵琶を背から下ろした。琵琶法師を囲むように子供達が集まる。
「それじゃ、取って置きのお話をしようか」
子供達がわぁっと喜ぶ。琵琶法師は巨樹の根元に寄りかかるように座った。
「わあ!どんなお話?」
「聞かせて!聞かせて!」
子供たちが琵琶法師を急かす。琵琶法師は騒ぐ子供たちをなだめ、琵琶を手に取る。
琵琶法師を中心に村の子供たちが集まる。村の大人たちが手を止める。
琵琶法師が弾き語る。
誰かが語る。人が語る。
何かが語る。獣が語る。
人は耳を傾ける。
獣は心を傾ける。
そして、語られていく。
人は夢方だと言った。
獣は現だと言った。
それぞれに生きる、人と獣。
めぐりめぐる縁で結ばれた互いに異なる存在であるモノたち。
夢方のような、真のお話。
悲しく、愛しい、人と獣、彼らの恋のお話。




