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星の女王 ~ソラの物語~  作者: 夏乃市
星の涙
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『星の涙』 声明

〈星系代表者会議〉の最後は、参加星系による共同声明で幕を閉じることになる。声明文を読み上げるのはホスト国代表の役目だ。疲れた顔をしたESAのマテイトス大統領は、大勢の記者の前で口を開いた。

「今回の〈星系代表者会議〉は、会期中に大会議場で事故が起こるという惨事に見舞われました。これにより、一時期行方不明者なども出ましたが、最終的には人的被害もなく事なきを得ました。この件につきましては、ホスト国として深くお詫び申し上げます」

 二日目の会見と比べて、マテイトスのトーンは随分と変わっていた。

「会期の終了にあわせて、私達は以下の声明を発表します。我々は常にお互いを尊重し、人類全体の利益が最大となるような行動を心がけねばなりません。その精神を遵守することを、ここに会したすべての星系が誓います。以上です」

 それだけですか、という声が記者席のあちらこちらから上がった。しかし、マテイトスは質問に答えることはなく、そそくさと会場をあとにした。結局、〈星系連合軍〉結成の話は出てこなかった。

 惑星ベルカルチャ代表のソラは、共同声明発表後、別の場所で会見を開いた。

「ソラ女王、今回はESAに勝った形になりましたが、ご意見をお聞かせください」

「〈星系連合軍〉の件は、お互いが意見を述べ合い、どの星系もそれぞれで判断をしました。ほとんどの星系が参加を見合わせたのは単なる結果です。事故の件については、施設の老朽化が原因だったと大統領がおっしゃっているのだから、そうなのでしょう。テロリスト疑惑が誤解だとわかれば、私たちはそれで充分です。勝ち負けではありません」

「今後も同じような提案が出てくることが考えられますが」

「その都度、何が最善かを判断します」

「惑星ポルキアの件について何かコメントはありますか?」

「まず、ベルカルチャ惑星開発会社による発送座標の不手際については謝罪いたします。最終的に問題なく回収されました。ご協力いただいた皆様に深く御礼申し上げます」

「シエラ・ストームが言っていた謎の宇宙船というのはなんだったんですか?」

「さあ、それはよく判りません。現場の情報が錯綜していましたから」

「マテイトス大統領の、ベルカルチャはテロリストだ発言についてひと言」

「それ、会議の議事録に載ってました?」

「いえ」

「じゃあ、そういうことで」

 会場が笑いに包まれる。

 それから、幾ばくかのやりとりがあって、会見は終了となった。

 ようやく全ての公務から開放されたソラだったが、その顔は厳しいままだった。

「ホテルに戻られますか?」共に会見場を後にしたゲランが訊く。

「いいえ、大使館に向かうわ」

「では、車を用意させましょう」

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