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星の女王 ~ソラの物語~  作者: 夏乃市
星の涙
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『星の涙』 安否

「まだ安否はわからないの?」

 ディーアが通信端末に噛みつくように怒鳴っていた。

「こちらに連絡は入っていません」と通信機ごしに答えたのは、惑星ベルカルチャに残っている惑星開発会社のスタッフだ。「あのロスト警報はデニス副社長のものです。陛下のGPS端末は捕捉して……ザッ……から、おそらくご無事だろう……ザッ……ます」

 約一時間ほど前、スティーとディーアの携帯端末が鋭いアラーム音を発した。それは、惑星ベルカルチャの王室・政府関係者全員の端末で鳴り響いた。

 ロスト警報──惑星ベルカルチャの女王ソラと、地権者であるデニス、ふたりの腕に埋め込まれたGPS端末の位置を補足できなくなったという警報である。ロスト警報にはいくつかの段階がある。バッテリー切れによるロスト(レベル1)、GPS衛星などの補足圏外へ出たことによるロスト(レベル2)、端末の破損によるロスト(レベル3)、そして生体反応消失によるロスト(レベル4)。前者ふたつのロストについては、事前に端末側からの情報補足も行われるので、警報としてはそれほど重大なものとはされていない。特にソラはGPS圏外へひとりで出てしまうことも多いので、レベル2警報の発生は日常茶飯事だ。

 しかし、今回の警報はレベル3。デニスの皮下にあるGPS端末が物理的に破損したことを意味していた。それも、〈星系代表者会議〉のさなかにだ。即座に死亡を意味するレベル4でないことだけが救いだ。

「副社長……」ディーアが涙声でつぶやく。皮下の端末の破損は尋常ではない。一緒に居るソラの身も案じられる。

「おちつけ、ディーア。宰相たちも同行しているんだ。社長も副社長も大丈夫だよ」

 スティーがディーアをなだめにかかる。

「いまここであわててもどうしようもないだろう」

「こちら……ザッ……情報収集に全力をあげて……」と、通信機ごしにスタッフが言う。「何か判りましたらすぐに連絡を入れま……」

 突如、雑音がひどくなったかと思うと通信が途切れた。

「……」

 スティーとディーアはしばし呆然とと通信機を見つめていた。再度通信を試みる気が起きてこない。

「らしくないな、ディーア」

「はぁ?」

「社長と副社長には絶対の信頼をおいているんだろ? いままでにも連絡がとれなくなったことなんていくらでもあったじゃないか。今回に限ってのその取り乱しようはなんだよ」

「……なんていうかぁ、女の勘?」

「なんだって?」

「今回は違うって……なんか、そんな感じがして……」

「気のせいだよ。仕事で振り回されて、ちょっとナーバスになってんだろ」

「スティー先輩のくせに、生意気なこと言わないでください」

「あのなぁ……俺はだね、」

 ディーアは手のひら掲げてスティーを遮った。

「わかりました。とりあえず、可能な限りここから情報収集をします。ちょっとひとりにしてください」

 そう言うと、ディーアは惑星調査船の貧弱な情報通信端末に向かった。さっきの通信の途切れ具合を考えると、どれだけのことができるのかはあやしいものだったが。

 スティーは小さくため息をつくと、通信室をあとにした。

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