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星の女王 ~ソラの物語~  作者: 夏乃市
星の涙
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『星の涙』 見積り

「これが基本的なタイムスケジュール。こっちが必要な機材、資材の一覧です。一通り地球型惑星改造テラフォーミングが終了して入植が可能になるまでには、最低でも十五年程度みていただく必要があります」

 スティーの説明に、レゼットがぼんやりと頷く。

「意外に時間がかかるものですね」

「あのですねぇ……惑星ペルキスの場合は大陸改造をほとんど行う必要がないのでこの程度で済むんです。地殻を刺激しての大陸改造が必要な場合、下手をすると百年単位になる可能性もありますよっ」

 ディーアがまくし立てる。

「そうですか。わかりました。では、これで行きましょう」

「は?」

「ですから、作っていただいたタイムスケジュールで実施しようと思います」

「ちょ、ちょっと待ってください。弊社はまだお受けするとは言っていません。社内決済が……」

 スティーの言葉をレゼットが遮る。

「御社にお願いするわけではありません」

「はい?」

「実際の施工は我が社でやります。デトナグループは大グループですから。惑星土木技術も持っています」

 スティーがあっけにとられて口をぱくぱくしている。ディーアが顔をまっかにしてつぶやいた。

「じゃあ、なんで私たちに頼んだのよっ……」

「いや、御社は無理が利くと聞いていましたからね。まさかこんな短時間でスケジュールを組んでいただけるとは」

「だったら、最初からそう言いなさいよ!」

 ついに爆発したディーアを、我に返ったスティーが必死に押しとどめる。

「やめろディーア。暴力はだめだ! 暴力は!」

「とめないでスティー先輩。社長なら絶対に殴ってるわ。まちがいなくそうしている」

「しないだろ。社長はそんなに短気じゃないよ」

「知った風な口きかないで!」

「あのー……」

 おそるおそる声をかけるレゼットに、ディーアが噛みつくように答える。

「何?」

「申し訳ないので、一部資材は御社経由で買いたいと思うのですが、それも社長さんの決済が必要なんでしょうか?」

「……どうかな。どう思いますか? 先輩」

「確認はしたほうが良いだろうけど、ダメって言われることはないだろうね」

 結局のところ、ベルカルチャ惑星開発会社は大口の惑星開発受注には失敗、資材の買い付け先として商社機能を負担するにすぎない。ビジネスの規模としては格段に小さくなる上に、追うべきリスクも小さくなるのだ。

「こちらとこちらを御社にお願いしたいのですが」

「大気組成改良剤と土壌改良剤の一部ね。土壌改良の地域を限定すれば入植を急ぐことができるけどぉ」

ディーアが落ち着きを取り戻して資料を眺める。しかし、口調がだいぶぞんざいになってしまっている。

「社長さんの決済はいつ頃いただけそうですか?」

 スティーが端末で時刻を確認する。

「……〈星系代表者会議〉がどうなっているかがわからないですが、十二時間以内には確認できると思います」

「そうですか、助かります。ええと……せっかくここまできたので惑星ペルキスにもっと接近いたしましょうか?」

「いいえ、結構ですっ。こちらも色々と立て込んでますので、早々に引き返していただけますぅ?」

 そそくさと椅子から立ち上がったディーアとスティーをみて、レゼットは小さくうなずいた。

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