59/94
『星の名前』 星の名前
船窓から見た惑星M=57892は何ともさえない星だった。
僕は惑星を指さしてソラに言う。
「あれが君の星だよ」
「私の星……」
「君が名前をつけるといいよ」
「名前……」
「そう。名前だ。これからこの星があり続ける限り、呼ばれ続ける名前だ」
彼女は胸の前で小さく拳を握りしめた。
そして彼女は言葉を紡ぐ。
「星の名前は──ベルカルチャ」
とても大切そうに。
とても愛おしそうに。
彼女はその名前を口にした。
「ベルカルチャ? それはどういう意味?」
「お姉さんのように、先生のように……そういう意味」
「?」
なにか僕の知らない言語だろうか。
こうして惑星M=57892は命名された。
──惑星ベルカルチャ
後に奇蹟の星と呼ばれる名前である。
《星の名前 了》
ここまでお付き合いいただいたみなさま、ありがとうございます。書き溜めたネタがひとまず尽きました。今後も続ける予定ですが、しばし更新ストップということで、よろしくお願いします。(夏乃市)